2019年の裏・流行語大賞は「老後資金2000万円問題」で決まりといっていいでしょう。
いつにもまして、「年金だけで暮らせるのか」がクローズアップされた年でもありました。長寿大国の日本では「長生きリスク」という言葉もあるほどで、老後の暮らしを支える公的年金制度は欠かせません。「年金なんてあてにならない」と口にする人でも、やはり年金に頼らざるを得ないのが事実。受け取れる年金をいかに確保するかが、私たちの大きな関心事なのです。
そのために議論されているのが、パート労働者の厚生年金加入です。今でも、週に20時間働き、月収8万8000円(年収106万円)以上で、従業員数501人以上の企業に勤めるパート労働者は、厚生年金に加入することになっています(500人以下でも労使合意があれば適用)。年金改革の議論の場では、この条件を緩和し(=適用拡大)加入できる対象者を増やそうという声が上がっているのです。
適用拡大の対象は、年収か企業の規模か
この加入条件の見直しについては、二つの方向が議論されています。
一つは働く企業の規模。現行の従業員数501人以上から、2022年に101人以上、2024年からは51人以上に緩和することが検討されています。
また、現在106万円とされている年収についても引き下げられる可能性が拭えません。この見直しによって、一番影響を受けるのは、社会保険料を負担しない範囲で働きたいと調整してきたパート主婦でしょう。厚生年金に加入し、年金保険料を負担するとなれば、同じ時間働いたとしても手取り額が減ってしまうからです。また、年金保険料を折半することになる企業側の負担も大きく、適用拡大に対する反対の声も上がっています。
しかし、現在ではなく、老後に目を向けてみると、別の景色が見えてくるはずです。女性の平均寿命は87.32歳(平成30年生命簡易表より)。2065年には91歳に達すると言われています。平均的に男性よりも長生きすると言われる女性は、夫が亡くなった後、一人で生活を支えなくてはなりません。また、想定外の離別というケースもあるでしょう。もし、一人暮らしになったとしても厚生年金に加入することで、一生受け取れる年金額を増やすことができます。老後のためにiDeCoやNISAで備えるのも一つですが、より多く働いて将来の年金を増やすという選択肢もぜひ考えてほしいと思います。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。