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LIFE

働き方白書2019

私たちの働き方、考えてみませんか?浜田敬子さん×鈴木尚子さん【女性の働き方】スペシャル対談

2019.07.20

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時短勤務などの制度の充実により、女性が仕事を続けやすくなった昨今。その一方、結婚、妊娠、出産などで、働き方を見直す女性が多いのも現実です。

働き続ければ育児との両立に振り回され、働くことをやめれば焦りを感じる……

LEE8月号では、そんな悩み多きLEE世代の「女性の働き方」について、アンケートを実施。

このまま働き続けられる? 専業主婦もキャリアになる?

働く先輩へのインタビュー、LEEメンバーへのアンケートから、みんなの本音を探ります。

 

働き方白書2019 スペシャル対談
Business Insider Japan 編集長 浜田敬子さん「働く女性の罪悪感とは?」
ライフオーガナイザー 鈴木尚子さん「専業主婦をキャリアにするには?」

今回、LEEメンバーによるアンケートでは、現在働いている人が76.1%(育休中や休職中などを含む)。今はさまざまな事情で働いていない人の中でも、将来的に働きたいと考えている人は、なんと84・3%の結果に!
(※2019年5月9日から17日までLEEwebの会員「LEEメンバー」にアンケートを実施。LEEwebメンバー1128人が回答)

そこで今回お話をお伺いしたのが、働く女性の大先輩である、「Business Insider Japan」統括編集長 浜田敬子さん(写真左)と、ライフオーガナイザー 鈴木尚子さん(写真右)のおふたり。

浜田さんはバブル時代に新卒で朝日新聞社で働き始め、育休の10カ月間以外は、30年間フルタイムで仕事を続けてきた、働く女性の先駆者。アエラ初の女性編集長としても注目を集めました。

一方鈴木さんは、出産で一度退職、専業主婦を経て「やっぱり働きたい」という思いを強くし、ライフオーガナイザーの資格を取得して、起業に至ったと言います。

さまざまな障害を乗り越えて働き続けること、また、専業主婦がまた働くための準備や心得など、たっぷり語っていただきました!

周りのサポートを受けないとフルで働けない時代

浜田 39歳で出産して、娘が今年13歳になるのですが、当時、管理職として社内で初めて私が育休を取得したんです。でも、仕事が好きなのですぐにでもまた働きたいと、10カ月でフルタイム復帰。私の復帰後の3カ月間は、夫が育休を取りました。

鈴木 すごい! 男性の育休は当時はまだ珍しかったですよね。

浜田 そうなんです。夫の育休が終わってからはシッターさんを頼んだり、山口から呼び寄せた私の両親に預かってもらったり。夫も記者職で忙しく、周りのサポートがないと、育児をしながらフルで仕事を続けるのは難しい時代でしたね。鈴木さんは、どのようにお仕事されてきたんですか?

鈴木 私はアパレル業界で働いていたのですが、29歳のときに妊娠して産休に入りました。仕事に戻るつもりでいたら、私の母が専業主婦で、小さいうちは子どもは手元で育てたほうがいいと。夫も私には家にいてほしいと言うし、さらには預け先の保育園も見つからず……。退職して専業主婦に。でも、子どもがすごく敏感な子で、寝ない、食べない、外出すれば騒ぐと、イメージしていた育児とはまったく違い、今思うと育児ノイローゼになっていたと思います。

浜田 それはつらかったですね。

鈴木 育児はちゃんとできない、夫にストレスをぶつけるから夫婦関係も悪化、部屋もどんどん散らかり、どうしようと苦しんでいたときに、荒れた部屋は自分の心を表しているようだと感じて、まずは片付けようと思い立ったんです。引き出しの中のものをすべて出して、きれいにしまい直す。たったそれだけのことで、ものすごくすっきりして達成感を感じられた。こんな私でもやればできるんだ!と霧が晴れたようでした。それで、よくよく周りに話を聞くと、家が片付かずに悩んでいる人が多いと知って。

浜田 そうですよ! わが家も荒れ放題です(笑)。

鈴木 私が片付けで自分を取り戻したように、誰かの助けになればいいなと思い、子どもが5歳と1歳のときに整理収納の資格を取得しました。

浜田 そこからお仕事にはどうやってつながったんですか?

鈴木 片付け方や思考の整理の方法などをブログで発信し始めたんです。資格を取るときに、三日坊主だから途中でやめられないようにと思って、ブログで宣言したところ、資格を取得してすぐに「うちに片付けに来てください」と連絡が。ブログを読んでくれていた方を中心に、片付けのサービスを始めることになりました。

30代は仕事よりライフ重視。母親世代との価値観の違いも

浜田 私は今50代で、仕事を始めたのがバブルの頃。当時はまだ育休などの制度も整っていなくて、女性の多くは結婚、出産で仕事を辞めざるを得なかった。ごく一部の仕事を続けたい女性が、かなり無理をして働いていた時代です。

鈴木 今40代の私たちは氷河期世代ということもあり、仕事と家庭を両立しようとする人が多い気がします。

浜田 自分のやりやすい方法を探したり、夫と協力してできる範囲で家庭と育児を両立しようとした世代ですよね。もっと下の30代、20代になると、さらにライフ重視で、以前取材をした20代の子たちは、一般職を希望する子が多かった。長時間労働や転勤があると子育てと両立できないからと、先を見て仕事選びをするんですね。働く女性の数が増えているからこそ、キャリアを積むだけではなくて、無理のない働き方を選択する人も増えて、働き続けるにはいい時代になったのかなと思いますね。

鈴木 世代間ギャップという意味では、私は仕事を始めるとき、専業主婦だった実母との価値観の違いにとても悩みました。

浜田 わかりますよ! 私も同じです。うちの母親も専業主婦で、さらに、教育ママの世代でもある。あんなに熱心に教育していたのは娘に働いてほしいからかと思いきや、いざ働いてみると、なんでそんなに帰りが遅いの、子どものことをちゃんとしなさいと言うんですよね。働く娘を誇りに思う半面、働くイメージが持てないから理解することが難しいという二面性がある。頼っているので感謝はしているけれど、母とぶつかることも多かったです。

鈴木 私は専業主婦の経験をしてまた働きたいという思いを強くしたので、母にも根気よく伝えて、今では少しずつ手伝ってくれるように。それでも、どうしてそんなに働くの?と言われることはありますね。

子どもを忘れて仕事に没頭する自分に罪悪感を抱いたことも

自分の母親や周りからの声がプレッシャーにもなり、家庭と仕事のどちらも中途半端に感じて、モヤモヤしてしまうのが今のLEE世代。LEEメンバーへのアンケートでは、働く女性の約4割が「罪悪感を感じることがある」と回答!

 働いていて、罪悪感を感じることはありますか?
「ある」という人が約4割。「家で子どもの帰りを迎えられない」「体調が悪くてもすぐに病院に行ってあげられない」など大半が子どもへのもの。職場や祖父母に対しても。

浜田 私は仕事を始めると没頭して子どものことは頭から抜け落ちちゃう。でも、ふとしたときに「子どもの学校の提出物を出していなかった!」と気づいて、私の母性って大丈夫……?と思ったことも。

また、東日本大震災のときにはアエラの編集部にいて、発生後すぐに記事を作ることになったんです。ちょうどその日は夫が仕事を休んで子どもの保育園の遠足についていたこともあり、私は家族に会いに行くこともせずに、仕事を続けた。こういうときは、自分は何か欠落しているんじゃと、罪悪感を感じたこともありました。

鈴木 でも罪悪感を感じるのが働くLEE読者の4割なら、そこまで多くはないかなと思いますね。私の周りの働く女性は、仕事をしていても、家事は女性がやるべきという意識が高かったから、もっと自分を責めていたような……。仕事をしていると、子どもとの時間が取れなくて申し訳ないという人もいますが、私は、向き合えるときにとことん向き合うようにしていますね。いい母であろうとか、いい妻であろうと思うと本当にしんどいから、あまりそういう気持ちを持たないように。

浜田 いろいろ悩むし、罪悪感も感じるとは思いますが、無理やりにでも、デメリットではなくて、働くことのいい面に目を向けたほうがいいですよね。

鈴木 うちは子どもがしっかりしたと思います。特に娘は、忙しいママに代わって家事をやってくれるし、この前なんて「ママいつも働いてくれてありがとう」という手紙をくれて!

浜田 子どもって、意外に自分の母親が働いていることを嫌だとは思っていなかったりするんですよね。小1の壁など、一時的に「ママに家にいてほしい」と思っても、少したてばケロッと大丈夫だったりする。今仕事をしている人は、ぜひそこで踏ん張って、働き続けてほしいなと思いますね。

主婦の能力は、人とかかわる仕事でこそ生かされる

一方で、現在働いていない人は23・9%。もちろん積極的に専業主婦を選択している人もいるものの、働いていないことへの焦りを感じるケースが多いよう。

浜田 私も講演などで専業主婦の方にお会いするんですが、何から始めたらいいのかわからない、一歩を踏み出せないと悩んでいる人が多いようですね。そこでよく皆さんにお話しするのは、主婦で培った能力こそ、仕事に生かされるのではないか、ということ。事務職はいずれAIに取って代わる部分も多い。でも、例えば、接客、営業などは、人間が当面やらなければいけないものだと思います。

鈴木 そうですよね。人と人がかかわる部分ですよね。

浜田 主婦の方って、PTAなどを見ていても、本当にシャキシャキと動いているんです。場を仕切ったり、調整する能力が高い人は多い。これはAIは持っていない能力だと思うので、極めたほうがいいと思います。

鈴木 うちの会社は、まさにそういう女性の集まり。主婦ってマルチタスクで、育児と家事を同時にこなしていますから、一生懸命やれば仕事の基礎となる力が身につくんじゃないかな。私の現在のビジネスパートナーは、幼稚園の謝恩会の係ですごい活躍をした人なんですよ。私が謝恩会でやりたいことを伝えたら、次に会ったときには、私が10話したことを、120にして持ってきてくれて! 私も当時専業主婦だったので、いずれ仕事をすることがあれば、絶対にこの人に頼もうと。

主婦がまた働きたいなら家族や職場との信頼が不可欠

浜田 鈴木さんが、専業主婦からまた働く際に、心がけていたことはありますか?

鈴木 自分でお客様のニーズを考えて、仕事を作り出すことでしょうか。指示待ちをして、言われたことをやるだけではやはり足りないかなと。セルフスターターであることはとても大切だと思います。あと、これは皆さんにはおすすめしませんが、私、毎日3時間睡眠で無我夢中で働いていた時期があるんです。結局、体調を崩してしまうのですが……。ただ、もし仕事をずっと続けていきたいのであれば、できる範囲でいいので、がむしゃらに仕事を頑張る時期というのは、あったほうがいいのかなと。一度必死にやると、仕事ってすごくおもしろくなるし、やりがいも出てくるんです。

浜田 確かに、一度限界までバットを振ってみることは大切な気がします。私もよく、どうしたら仕事ができますか、続けられますかと聞かれるんですね。仕事で一番大切なのは、信頼関係。簡単なのは、まずは任された仕事をきっちりやることです。さらにいいのは、期待された以上のものを返す。速さ、クオリティ、量などどんなことでもいいので、期待値よりも1%でも5%でも高いものを返していくと、自然と次の仕事ってつながっていきます。主婦時代とあまり生活を変えずに仕事をしたい、というのももちろんいいんですよ。ただ、正社員でもパートでもフリーランスでも、仕事をする以上は信頼関係が不可欠だと思います。

鈴木 任された仕事をこなすためには、仕事を始める前に、きちんとバックアップ体制をつくっておくことも大切です。夫や子どもの協力や両親のサポートをどのぐらい受けられそうか、ベビーシッターや近隣の病児保育の情報はよく確認しておきたいですね。

浜田 仕事に穴をあけられないときに、子どもが熱を出したら誰に助けてもらうのかなど、具体的にシミュレーションしておくといいかもしれませんね。

鈴木 主婦がまた働くうえで、家族との信頼関係ってすごく大事な視点。やっぱり、家族が理解して応援してくれないと、家庭と仕事の両立は厳しい道になりますよね。

浜田 アンケートを見ると、LEE読者は夫の家事、育児への参加の割合は意外と高めなんですね。すごい(笑)。それでも、4割の人は何かしらの「不満」も。

 共働きで夫の家事・育児への協力はありますか?
「できることはやってくれている」「子どもとよく遊んでくれる」という声は多いものの、共働きでも、夫の帰りが遅くワンオペ育児になりがち、また家事はほぼ妻がやっているという声も。

鈴木 夫の理解や協力を得るためには、話し合いをしなければいけないと思うのですが、話し合いって、普段の仲がよくないとうまくいかないと思うんです。私自身が、要求ばかりを押しつけて失敗したことがあって。だから、家族と過ごす楽しい時間がとても大切です。私が気乗りしなくても、家族が行きたければキャンプにも行く(笑)。みんなが機嫌よく楽しい気持ちになれば、話もしやすいし、私のやりたいことを応援してくれるんですね。

浜田 お互いを知って築かれる信頼関係は、職場でも大事だと思います。アエラ時代に、全編集部員に家族の状況や何か問題を抱えていないかを聞いたことがあったんです。すると、妻が病気で家事をしている男性社員や、週末ごとに遠方のお母さんの介護に行っていた女性がいた。ふたりとも仕事でいまひとつ成果を上げられなかった背景には、こんな事情があったんだと。知っていれば、誰かをヘルプにつけるとか、合理的に対処ができる。今の会社はベンチャー企業で自由な社風ということもあり、ワーキングマザーの社員に夜の忘年会などに子連れで来てもらうことも。ほかの編集部員も実際に会うと、この子がいるから◯◯さんはいつも帰りが早いんだなとわかる。わかれば、事情を知らずにモヤモヤするよりも、快くフォローできるじゃないですか。いい意味で周りを巻き込んで、仕事しやすい環境をつくってほしいし、会社や組織もそうなっていかないといけないですよね。

鈴木 仕事をやっていきたい気持ちがあるのなら、家族に対しても会社に対しても、信頼を勝ち取ることを諦めないでほしいなと思いますね。

浜田 今の30代って現実的で地に足がついていますよね。家族を優先して、周りのために生きることもとても幸せなことだけれど、もし何かやりたいことがあるのならば、自分の気持ちを閉じ込めていないか、一度じっくり向き合ってみてほしいなと感じます。

鈴木 私自身、一度専業主婦を経験して、自分を見つめ直すことができて、仕事の大切さに気づきました。LEE世代の女性がこれから自分の人生をどうデザインしていくのか、とても楽しみだなと思いますね。


撮影/名和真紀子 イラストレーション/itabamoe 取材・原文/野々山 幸
2019年7月7日発売LEE8月号『私たちの働き方、考えてみませんか』より。アンケートは2019年5月9日から17日までLEEwebの会員「LEEメンバー」に実施しました。

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