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30、40代女性は必読! 『マジカルグランマ』に込められた「こうあるべき姿」に縛られない生き方って?

2019.06.27

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「素敵なおばあちゃん」像は誰のもの? パワーがわく老女小説!

『マジカルグランマ』柚木麻子 ¥1500/朝日新聞出版

現代を生きている女性の姿をエンターテインメント性たっぷりに描きつつ、その中に鋭い問いかけをはさんでくる柚木麻子さんの小説。最新小説『マジカルグランマ』は、70代半ばの正子という女がヒロインだ。

東京郊外の古い屋敷に住む正子は、若い頃、映画女優をしていた。しかし大作のヒロインとして花咲く機会はなく、映画監督の男性と結婚を決めて寿退職する。そして長い月日が流れ――。夫と同じ敷地内で別居状態の正子は、自活の費用を稼ぐためにシニアタレントを始める。売れっ子になりたい彼女に、姉貴分の大女優・紀子ねえちゃんが提案したのは「年齢以上に老けたルックスを作り込む」ことだった。

中途半端な色の髪を真っ白にブリーチし、妖精みたいな姿に変身した正子は「優しいちえこばあちゃん」として大人気に! そんな折、夫が突然に亡くなり、葬儀の場で夫への本音を漏らしてしまう正子。その言動が「怖い」と世間の嫌われ者になってしまうのだ――。

金ナシ、職ナシ、人気ナシとなった彼女だけど、世間に返り咲きたい気持ちもあり、次々と行動をし続ける! 実は欲深く、誰よりも自己顕示欲の強い性格だった彼女。そんな正子と行動をともにするのは、爽やかではない若者、引きこもりの夫を抱える子育て中の主婦、いつまでも妻の死から立ち上がれない男性など。誰もが問題を抱えており、むしろ「こういう人たちのほうが身近にいるかも!」と思えてしまう。

人は社会生活を送るうえで、どうしても「こうあるべき姿」を設定されがちだし、そうなれない自分とのギャップにも、多かれ少なかれ悩むもの。正子が“マジカルグランマ(世の中にとって都合のいいおばあちゃん)”を乗り越えようとする先には、私たち30代~40代も見習えるヒントが隠されていそう。

世間が求めるいい妻像やママ像に疲れたり、いら立ちを感じたらぜひページを開いてみて。単なる善人ではない正子の個性いっぱいな生き様に、刺激を受けること間違いなし!

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    『和菓子のアン』シリーズで知られる人気ミステリー作家による、お菓子にまつわるエッセイ集。和・洋の名品はもちろん、甘いものからしょっぱいものまで種類豊富。坂木さんのお菓子への情熱に魅せられつつ、スイーツのガイド本としても使えるのがうれしい。
    エッセイの最後に2編収められた小説は、ぜひお気に入りのおやつ&お茶とともに味わいたい。

  • 『漫画家しながらツアーナースしています。(1)』
    明 ¥1200/集英社

    漫画家でもある作者は小中学校の宿泊行事に同行し子どもたちの健康管理をする看護師、通称ツアーナース。旅行中に起こる発熱やケガなどの緊急トラブルに対応しつつ、子どもたちにとって素敵な思い出となるようサポートすることが役目。
    当事者であるからこそ描ける舞台裏。笑いあり学びあり、時には子どもたちの成長に涙する心温まるコミックエッセイ。


取材・原文/石井絵里

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