被災地に何か役に立つことがしたいと思いながらも、まだ小さな子どもがいることや現地までの距離などを理由に一歩踏み出せずにいた私。今回は、そんな私と被災地の繋がりを作ってくれた、あるボランティア活動についてご紹介したいと思います。
私が参加した「被災地にお菓子を届ける会」というボランティア活動を主催するのは、認定NPO法人あっちこっち(以下、あっちこっち)という可愛い名前の団体です。芸術を通した社会貢献活動を行っており、本格的なクラシック音楽やアート、ダンスなどを身近に親しんでもらえるイベントを企画。被災地を始め学校・介護施設・文化施設など様々な場所で開催されています。
あっちこっち代表の厚地美香子さんがこの活動を始めたのは、2011年に東日本大震災被災地でのボランティア活動に携わったことがきっかけだったといいます。
音大卒業後、クラッシック音楽コンサートの運営会社で20年間ほどコンサートや音楽祭などを幅広くマネジメントしていた厚地さん。次第に芸術による社会貢献活動を目指したいと考えるようになり、被災地復興支援のために始めたのが、演奏会と手作りのお菓子を届ける「カフェ・コンサート」でした。
当初は自宅で100個以上のお菓子を焼いて届けていたそうですが、その話を聞いた友人たちが手伝ってくれるようになり、その後ボランティアを募り、お菓子を作る会を開くことに。毎月、東日本・熊本大震災で被害にあわれた方たちのもとへ行き、カフェ・コンサートを行うようになりました。
みんなで一緒に、被災地に届ける焼き菓子を作ろう!
活動は、作成からラッピングまで行い3時間程度。この日集まったボランティアの方は10名ほどで、みんなで和気あいあいと分担しながら行うお菓子作りは、家庭科の授業のようでとても楽しかったです。
よく参加されているという常連さんも多かったですが、新顔の私を温かく迎え入れていただきとても居心地良く、中には毎回遠方からはるばる足を運んでいるという方も!長期休みの期間は学生さんなども増え更に賑やかな雰囲気になるそうです。
関わる方みんなが「楽しんでいる」ことの素晴らしさ
今回みんなで作ったのは「CAKE au CITRON(レモンケーキ)」。焼き菓子の香ばしい匂いと共にレモンの爽やかな香りが漂う中、協力しながら仕上げやラッピングを進めていきます。
被災地の方が毎回楽しみに待っている手作りスイーツを考えているのは、スタッフのひとりでプロ級の腕前を持つ講師の吉田まどかさん。ボランティアで集まった方々が無理なく時間内に作ることができる難しすぎないお菓子を、季節に合わせてセレクトしているそうです。
厚地さんは、被災地での「カフェ・コンサート」のために喫茶専門学校にも通ったというこだわり派。現地で行うのと同じようにコーヒーや紅茶を淹れてくれました。
そして、お茶をいただきながら伺ったのは、厚地さんが3月に訪れた熊本の被災地のお話でした。
「コンサートの前には毎回、仮設住宅の中を全て回って『これからコンサートをします、みなさんで、手作りのお菓子と珈琲をいただきながら、音楽を楽しみませんか』というようなアナウンスをしています。熊本の場合、516戸ある仮設住宅の半分以上はもう空いているのですが、仮設から出られた方もわざわざバスに乗っていらしたり、近くの施設の方が皆さんでいらしてくださったり…バイオリン演奏体験なども盛り上がりました!今回もお菓子は大好評で、私が行くと皆さん冗談半分で『お菓子の人ね!』とおっしゃるんです(笑)」
様々な方の「何かしたい」気持ちを形にした、楽しみながら参加できるボランティア
今回私が参加して感じた一番の感想は、とにかく全体通じて楽しかった!ということです。
これまでは、被災地のためのボランティア活動というと良くも悪くもシリアスなイメージが先行し、現地まで距離がある、小さな子どもがいることなど色々な理由を言い訳に、何もできないままでいた私にとって、その楽しさは大きな気づきでもありました。
おしゃべりも楽しみながら、集まったみんなで協力してお菓子作って、お茶もして…厚地さんによると、被災地でのコンサートも同じような雰囲気だそうで「その『楽しい雰囲気』を大切にしたいと考えています」という言葉がとても印象に残りました。
毎回欠かさずお菓子作りに参加されているという方も多く、皆さんそれぞれ忙しい中で足を運ぶ理由を伺うと、やはりまず「活動自体が楽しい」「気軽に参加できるから続けることができている」という声が上がりました。
そして、「厚地さんのお話や、ノートに書かれた被災地の方からの御礼のメッセージ、実際の演奏会の映像などを見ることで、実際に自分の行動が被災地の役に立ってると知ることができて嬉しい」という答えが多く、ボランティアを行う方々もそれを受け取る方々も、関わる人がみんな楽しんで参加されているということが素晴らしいと感じました。
「芸術をもっと身近に、芸術で世の中をさらに楽しく元気に!」という想いを持って活動されている厚地さんたちだからこそ作れたボランティア。地域の方やアーティストの方など色々な人たちの「何かしたい」という気持ちを形にし、周りを楽しく巻き込みながら被災地を元気にしている姿はとても印象的でした。
あっちこっちがこれまで開催してきたイベントは、実に200回以上!親子で楽しむアートイベントなど、大人から子どもまで気軽に参加できるような音楽イベントや、本格的なクラシックコンサートなど、今後も幅広い内容で開催があります。
「被災地にお菓子を届ける会」は2019年は7月、9月、11月、2020年は1月、3月に開催の予定があるそうです。私のように、何かしたい気持ちはあるけれど、何ができるか、何をしていいかわからない…という方には特におすすめしたいと感じています。気になった方は是非活動内容をチェックしてみてくださいね!
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。