先日、食の専門家による出張料理サービスを手がけるシェアダインが、学校法人食糧学院とタッグを組んだ「作り置き専門家養成講座」に参加させていただきました。気温も湿度も程よく気持ちの良い今の時期ですが、そんな梅雨前こそ実は一番危険だという食中毒。
【前編】ではまず、その理由と共に、今から意識して始めておきたい「おうちでできる対策」についてお伝えしていきます!
私自身も「作り置き」については色々と試行錯誤しており、SNSなどにアップされている作り置き投稿を見るのも大好きです!
そんな作り置きを通して、献立の組み立て方や段取り、そして大切な衛生管理についてプロから学ぶことができる今回の講座は、「衛生管理に関する座学」と「調理のデモンストレーション・試食とディスカッション(詳しくは【後編】で)」という盛りだくさんな内容。専門家の先生から、日々のごはん作りに今すぐ活かせる知識やコツをたくさん教えていただくことができました。
一番気を付けるべきは「温度の管理」!ちょっとした意識が大切な理由
私がまず驚いたのは「気候の良い今の時期こそ、実は非常に食中毒が多い」というお話でした。
人間が心地良く感じるという事はつまり、同じ“生き物”である菌にとっても、気持ちが良い状態だということ。
これから梅雨を経て夏場になると、実際に暑くなり、食中毒が多い季節だという危機感も高まるため、早めに冷蔵庫を入れるなど対策を意識できる人が多くなるそうですが、過ごしやすい今の時期は寒い季節の感覚のまま「これぐらいならば常温で置いておいても大丈夫だろう」と油断してしまう方が多いといいます。
細菌は、一定した温度よりも上下する環境の方が増殖しやすいそうで、菌にとっても心地良い気候な上に朝晩など気温差の激しい今は、意外にも危険な時期だというのです。
そこで大切になってくるのが、とにかく温度をしっかり管理すること!そういった「1番気持ちの良い温度帯=常温」をなるべく短い時間で通過させることが、菌を増やさないためにはとても重要なのだそうです。
前日の夕食にカレーを作り、粗熱を取ってから冷蔵庫に入れようと思いつつ子どもと一緒に寝てしまい、まさにその朝「これぐらいなら大丈夫かな」と思っていたところだった私。
「作り手が一番考えなければならないことは、作ったものが『安全』であり『おいしい』こと。そして食べることによって『幸せ』になることです。自分ではなく第三者を安全にするためのことなので“これくらい大丈夫かな”という判断が実は一番危険で、そこが一般の方とプロの差なのだと思います。
ただ、それはあって当然のもの。このような場を介して、正しく実践しやすい知識を広め、ご自身やご家族に合った方法を見つけるヒントにしていただけたらいいなと思っています。」
という先生のお言葉が非常に心に響きました…。
ちょっとした心がけで、安全に大きな差が
食中毒の予防のための三原則は「清潔」「温度」「迅速」。
当たり前のことばかりに聞こえますが、改めて自分の日常を振り返ると、できていないことも多いと感じました。
例えば、実際に色々なご家庭に出張するシェアダインの料理家さん達が実際に見た怖い実例として挙げられていたのが「小麦粉、パン粉、ホットケーキミックス、ソース、お醤油などを冷蔵庫に入れていない人が多い」という声。
開封の際、瓶などの入り口を触った時点で入れ物自体が汚染されるため冷蔵保存の方が安心とのことで、特に怖いのが粉系の袋などにつくダニだそう。「常温保存」と書かれた醤油や粉ものは、棚などに置いていた私は衝撃!その日は帰宅後まず、粉ものを冷蔵庫に移動させました…。
また先生のお話の通り「今はまだそこまで暑くないから」という油断があり、鍋のまま粗熱が取れるまで待ち、冷蔵庫にいれるのはそのあと…なんてことも多く、夏場ほど意識できていないと実感。
そこで改めて、常温に置く時間を短くするポイントを伺うとやはり「とにかく早く熱をとること」が重要だということでした。
1番早いのは密閉した上で氷水や流水で冷やす方法ですが、難しい場合はまずバットなどに食材をなるべく広げ、更にその下にお箸などを入れることでなるべく多くの空気が通るようにすると熱が逃げやすいそうで、扇風機の風をあてることも効果的とのこと。
毎晩、夫だけ夜遅く食事を摂るため「粗熱をとって冷蔵庫に入れる」ものが多い我が家、さっそくその夜から実践しています。
プロの料理家の方たちは、爪切りや頭髪など清潔な服装と調理環境を徹底した上で臨みますが、家で日々ご飯を作る私たちは、そこまでしていないことがほとんどだと思います。
この講座は、興味があれば誰でも受講することができますが、シェアダインで料理家として活躍する方が知識と技術をブラッシュアップに来ることも多いそう。
例えば訪問先の家庭にまな板が1つしかないという場合は、洗剤で洗って水分を拭き取ってからアルコール消毒するのが1番早い、もしくは今は色々な所で手に入る下敷きみたいな薄いまな板を持参する…など、出張先での衛生管理についての具体的なアドバイスなども参考になりました。
ちなみに、シェアダインの料理家さんたちはが出張料理に必ず携帯している衛生用品は、食品用アルコール・食品用エンボス手袋・タオル・三角巾・マスク・キッチンペーパー。衛生講習受講は必須など、衛生管理に関しても細心の注意を払っているそうです。
これまで、ゴム手袋で食品を触ることになんとなく抵抗があった私ですが、手洗いなど基本的なことに加え、例えばお弁当に入れるものなどは手袋を使うようにしよう、また家で長く使っているタオルや布巾等がないか再チェックしようなど、小さなことから日々のキッチンでの行動を見直そうと考えさせられました。
家庭での衛生管理は、自分の大切な人たちを守るための心がけ
主な細菌性食中毒の原因となる菌と特徴や、加熱による食材の変化など専門的なことも教えていただきましたが、要は有害物質が体に入ってくることによって起こるのが食中毒。きれいにする目的で行う漂白なども、万が一調理器具に残ってしまうと有害なものとなってしまいます。
お寿司屋さんをイメージするとわかるように、プロの料理人は「拭く」「洗う」作業をとにかく頻繁に行います。料理専門学校でも、その日の作業が終わると全ての台を拭く、翌朝はまた全て拭きなおすところから授業を開始し、学生時代から衛生管理を徹底する大切さを伝えているそうです。
「どんなものどんな場所でも、そこで調理する人の意識と知識さえしっかりしていたら大丈夫。とにかく有害物質をつけない、そして増やさないことが大切」という言葉が印象的でした。
私が作るものは、自分より抵抗力の低い子どもの口にも入るもの。「自分だけでなく第三者を安全にするための心がけ」とはつまり、大切な家族を守るための行動だと言えると思います。 “これぐらいいいかな”という自分の勝手は判断ではなくプロの知識や基準を知ることができ、調理後の冷却や保管方法など、その日からすぐに見直せることを学ぶことができた今回の講座は、本当に勉強になりました。
続く【後編】では、沢辺先生が実際に2時間半で14品の「作り置き」を調理するデモンストレーション型講座の様子をレポ。安全な作り置きのポイントに加え、日々のごはん作りに活かせるコツが満載の内容をお送りします!
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。