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ASIAN KUNG-FU GENERATION「音作りを探究し、“粒立ち”のいい音で、ポップな曲を」

2019.01.18

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骨太でエモーショナルな音と歌詞でカリスマ的人気を誇るアジアン・カンフー・ジェネレーション。3年半ぶりのオリジナルアルバム『ホームタウン』は、これぞアジカン、と言いたいパワフルな音とポップな曲調がストレートに胸を打つ全10曲だ。

音作りを探究し、“粒立ち”のいい音で、ポップな曲を

アジアン・カンフー・ジェネレーション●左から山田貴洋(Ba/Vo)、後藤正文(Vo/Gt)、喜多建介(Gt/Vo)、伊地知潔(Dr)。 ’96年、結成。インディーズレーベルを経て、’03年、メジャーデビュー。唯一無二の存在感で奏でる「日本語で鳴らすロック」が世代を越えて支持され、長年にわたり、不動の人気を誇る。

「今回は、ここ10年ほどのテクノロジーの発達や音楽のネット配信、イヤホンの進化など、環境が変化するなかで、どんな環境で聴いても『あ、いい音』と感じてもらいたかった。そのためにアメリカのポップス、ヒップホップを意識して聴いたら、音数は少ないけれど、ビート、打楽器の音が太いんですよ。そこを意識すると、音の“粒立ち”がよくなった。今までよりもいろんな音が聴こえるアルバムになったと思います」(後藤)

ゴッチこと後藤さんが作った個人スタジオにみんなで集まり、音作りに邁進した。苦労したスタジオ作りの悲喜こもごもについては、後藤さんの著書『凍った脳みそ』(←おもしろいです!)に詳細が書かれていて、今回の音作りについては苦労のかいがあった様子。

「ゴッチのいいスピーカーで確認し、音の粒立ちがきわだつサウンドデザイン、という方向性を共有しました。自費を投資してアジカンの音を探究する船頭さんがいるおかげで(笑)、安心して作れたのがうれしかった。今回は、もともと僕らが好きなポップで力が抜けた楽曲が多く、いい意味で気軽に聴けるアルバムです」(喜多)

「確かに今回は、じっくり音を探究できた実感があります」(山田)

「“楽曲”作りを探究するとギスギスした空気が流れることがあるんですけど、“音”作りに集中したからか、ギスギスしなかった。もう音は整ったので、次はまたギスギスするかもね(笑)」(後藤)

「ギスギスするのも“バンドあるある”で必要だけど、ゴッチはメールで言いたいことをメンバーに伝えるんですよ(笑)。本当は直接、伝えてほしい!」(伊地知)

「面倒くさい女の子みたいなこと言うなよ(笑)。特に建ちゃん(喜多)

が俺の話を右から左に聞き流すから、メールにしてるんだよ!」(後藤)

長い付き合いのメンバー同士のやりとりは飄々としているが、本作でも、メッセージ性の高い歌詞は健在。社会にはびこる理不尽に対する危機感と同時に未来への希望も感じられ、ずしりと響く。

「僕自身は特に意味を押しつけるつもりはなくて、聴く人に委ねてます。音楽は心が疲弊したときにエネルギーを補給するものであってほしいから。ただ、社会は誰もが日常のなかで変えられる。例えばどんな服や食品を買うかも、VOTE、投票だと思う。みんなが生産される背景を意識しながら買い物をすれば、それが大きな変化につながるでしょうし」(後藤)

後藤さんは ’09年に、良質な音楽を紹介する音楽レーベル「only in dreams」を立ち上げた。

「若い人が活動しやすい場を作っていく義務があると思って。僕たちも過去のさまざまな音楽の影響を受けてきたし、受け取ってそれを独り占めしたら、僕ら自身も淀む。みんなが豊かに幸せになるために、僕ができるのは若手をフックアップする場を作ることだった、という感じです。まあ、生意気なことを言われて“ふざけんな”と思うこともありますが(笑)」(後藤)

結成から23年目のアジカンは今も最前線を疾走しているのだ。

『ホームタウン』

先行シングル『ボーイズ&ガールズ』をはじめ、アニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』主題歌の『荒野を歩け』ほか、ASIAN KUNG-FU GENERATIONならではのパワー全開なギターポップチューン10曲が収められた、3年半ぶりのオリジナルアルバム。初回生産限定盤付属CD 『Can’t Sleep EP』には、ストレイテナーのホリエアツシとのコラボ曲なども収録。(キューンミュージック)


撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/藤岡ちせ スタイリスト/岡部みな子 取材・文/中沢明子
衣装協力/ストフ ダイエットブッチャースリムスキン チャオパニック ベースヤード原宿店 グッドルーザー ムーンスター

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