LEE世代は社会問題への関心も高くなってくる半面、自由に動けなかったり、寄付先などの情報を探す時間がなかったり。何かしたくてもなかなか……という人も多いのでは?
実は今、いろいろな問題を解決するための団体や活動はたくさんあって、それを応援する方法もさまざま、情報にアクセスするのもすごく簡単に。
忙しくてもできること、実はこんなにあるんです!
撮影/亀田 亮 イラストレーション/船越谷 香 取材・原文/中沢明子
この記事は2016年9月7日発売LEE10月号の再掲載です。
PART 2 被災地支援(東北・熊本の場合)
社会貢献についてLEE100人隊に実施したアンケートにて、関心が高かったのが、「災害支援」。
Q どのような分野での社会貢献に関心がありますか?
(複数回答可。3つまで)
「東日本大震災のときに、宮城の牡蠣漁師さんを支援をする活動に寄付しました」(No.088 ウマキさん)
東日本、そして熊本・大分の地震の際に、募金をしたり物を送ったり、何かを購入したりした人は多数。また、募金箱が目についたときには募金をしている人も多く、何かの形で誰かの役に立てればという思いは少なからずあるようです。
と同時に聞こえてきたのは、大きなことが起きたときだけでなく、普段からできることを知りたいという声。
今回は、そんな声にお応えして、様々な支援の形をご紹介します。
「必要な人に必要な分だけ」届けて支援
スマートサバイバープロジェクト
お話をうかがったのは・・・
外所一石さん 一般社団法人スマートサバイバープロジェクト副代表理事。 アパレルブランド「Dr.Franken」等のプロデュースを手がける本業で培った経験やセンスを被災地支援の宣伝や防災グッズ作りに生かしている。 |
手数料無料で寄付金は100%、支援先に確実に届けます!
スマートサバイバープロジェクト(SSPJ)は、東日本大震災をきっかけに、代表の西條剛央が日本最大級の被災地支援ボランティア組織「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を設立、運営した経験を通して、平時から使える支援プロジェクトとして立ち上げました。
なぜなら、有事の混乱した現場で適切に使いこなすには、普段から災害支援以外の社会的意義のある活動をみんなで支援しあう習慣をつけておくことや災害に備えたりすることも大切だからです。
そこでSSPJでは「スマートサプライ」「スマートアクション」「スマートプロテクター」という3つの柱で日々活動しています。
例えば、「スマートサプライ」は「必要な人に必要な支援を必要な分だけ届ける最新システム」です。
実は交通事情や報道が多かった地域とそうでなかった地域などでは支援物資に偏りが出ます。ある地域には余るほど同じ物資が届いているのに、別の地域ではまったく足りないといったケースがあります。
まずそうした偏りをなくす。また、女性用の下着や生理用品など、被災者の方が「欲しい」と言いづらい物資のニーズを細やかにピックアップする。
過剰な支援は自力での復興を妨げるので「必要な分だけ」を徹底する。こうした点に気を配りながら、求められている支援や物資の具体的な中身と量をインターネット上のサイトでわかりやすく「見える化」させています。
活動資金は主に企業からの寄付で賄っていますから、支援者からお預かりするお金は手数料無料で100%、支援先できちんと使用されます。
必要とされているモノと相手と着実に届くことが明確にわかると、支援する側にとっても「確実に役立っている」という手ごたえがあり、貢献しやすいと思います。
先の熊本の震災でも発生当初から今に至るまでいろいろな支援が実現できました。時間がたつにつれて必要とされるモノや内容は変わってきます。小さな額でも継続的な支援は被災地の大きな力になります。
HPをチェックするとどこで何が足りていないかすぐわかる!
ズラリと並ぶ支援先をクリックすると、その支援先が求める具体的なモノの必要量と価格と成立した数量が表示される。ボランティア募集も同プラットフォームに情報開示されている。支援を受けたいときもこちらからアクセスを!
被災地のこんなニーズを掘り起こし
●女性の下着支援プロジェクト
避難所では衣類の支援はあるものの、下着が足りず、替えられなくて困った女性たちが続出。そして体のサイズはいろいろ。同じ下着を大量に用意するわけにもいかないため、ピーチ・ジョンの協力を得て、2200着以上の下着を届けることに成功。
●『器』for 熊本~食卓、はじめよう!プロジェクト
避難生活では、使い捨ての紙皿などで食事するのが日常となる。あたたかな生活や家族の笑顔がある「食卓」に器は必須。
「器が欲しいなんて贅沢な希望は言えない」と遠慮されていた方たちに、陶芸家たちが器を提供。再スタートを切るための応援に!
私たちにできること
●「スマートサプライ」で物を送る。必要経費を支援する
支援先が求めている物資の購入費用や必要経費をクラウドファンディングで寄付したり、Amazonにリンクが貼られているケースなら、リンク先に飛んで商品を購入し、Amazonから直接支援先に届ける方法もあり。
●スキルを提供する
スマートサプライのサイト上には「ボランティア募集」欄に、例えばITスキルや翻訳など、求められているスキル一覧も。たとえ、距離が遠くても、自分が持つスキルや時間を提供して、支援先の一助となれる。
●「防災ママカフェ」に参加または企画する
「ママが知れば、備えれば、未来は変わる」を合言葉に、被災地ママの声と知恵を詰めた冊子を活用し、SSPJでは全国で防災ワークショップを開催。少人数でも開催可能なので企画したい人は、ぜひ問い合わせを!
●活動資金を寄付する
SSPJの活動資金は主に企業からの寄付金ですが、運送やパンフレット作成など、各活動自体にも費用はかかる。活動全体を応援する寄付も大きな支え。こちらは領収書を請求できるので、必要な場合は申し出て。
スマートサバイバープロジェクト
TEL: 050・3825・2165
http://smart-survivor.org
「放課後学校」をつくって支援
認定NPO法人カタリバ
お話をうかがったのは・・・
今村 亮さん 学生時代からカタリバに参画し、「教室に社会を運ぶ」事業型NPOの路線を方向づける。 印刷会社を経て、2010年に復帰。現在は、b-lab(文京区青少年プラザ)館長やコラボ・スクール責任者を務める。 |
勉強する場を奪われた子供たちに放課後、学習指導と心のケアを
2001年にスタートしたNPOカタリバは、主に高校生の進路選択と意欲を引き出すための「動機付けキャリアプログラム」を行ってきました。大学生や社会人を中心としたボランティア・スタッフと高校生がひざを突き合わせて語り合う「カタリ場」を創出し、今持っている悩みや不安を共有しながら、主体的に将来を考えるきっかけづくりが核となる活動です。
しかし東日本大震災後の東北で見た光景があらためて私たちに考えさせたのは「安心して学べる環境」がいかに重要か、というものでした。空き地に寝転んで勉強する子供の姿は「家で落ち着いて勉強できない」ことを示しています。
(2011年6 月宮城県女川町で)
避難所や仮設住宅に勉強するスペースがなかったり、家族もストレスフルで余裕がなかったり、さまざまな条件から子供たちが遠慮してしまう状況が続くと、希望を持って将来を考えることなどできません。勉強も他の地域に比べると遅れがちです。そんな状況を改善するには「放課後」の過ごし方と居場所の提供が必要だと思い至りました。
そこで始めたのが放課後学校「コラボ・スクール」です。
東北では特に被害が大きかった宮城県女川町と岩手県大槌町でコラボ・スクールを開校。例えば、住居倒壊率が82・6%の女川町では津波で自宅を消失した子供たちも多く、避難所として使われていた女川第一小学校校舎に小中高生を集め、月~金まで学習支援と心のケアに取り組んでいます。
多様なキャリアを夢見る力を育てることが私たちの目的でしたから、教育自体は私たちの得意分野ではないのですが、やはり基礎となる勉強は大切です。震災で経営する塾を失った地元の塾講師の方々にも協力をあおぎ、学習支援を行っています。
とはいえ、「よそ者」の私たちの思いだけが空回りすると被災地では逆に迷惑になってしまうこともあります。カタリバでは教育委員会や学校、保護者の方々と連携し、対話を重ねながら求められる支援を届けるようにしています。現地に留まり、地道に伴走させていただくうちに信頼関係ができ、今では「コラボ・スクールがあってよかった」という声をいただいています。
東北での経験を生かし、熊本の震災でも「熊本コラボ・スクール」を早急に立ち上げました。地元の大学生ボランティアの協力を得ながら、彼らとともに学びの機会と居場所の提供を通した心のケアを行っています。しかし、いまだに復興が進まない地域があり、とても心配です。
コラボ・スクールは震災の体験を悲しみから強さに変えることが使命。被災した子供たちの一人でも多くが日常を取り戻し、将来を考え、夢見る力をなくさないように、フォローアップしていきたいと思います。
私たちにできること
●活動資金を寄付する
コラボ・スクールの運営費用は1校につき、年間約6500万円。当初短期予定だったプロジェクトだが、さらに数年間は必要と女川町、大槌町、熊本県益城町で継続中。直接の寄付以外に右のSSPJなどを通しても寄付ができる。
●現地スタッフとして働く
子供たちが安心して学べる場所をつくっていくためには人手も必要です。コラボ・スクールでは学習指導者のほか、運営サポートのスタッフも重要な役割。志と余裕がある人はチャレンジを!
認定NPO法人カタリバ
TEL: 03・5327・5667
www.katariba.or.jp
まだまだあります! こんな支援の形
「被災地の子供たち」をさまざまに支援
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
TEL: 03・6859・0070
www.savechildren.or.jp
撮影/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
世界の困難な状況におかれた子供たちを支援してきたセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、2003年から国内事業も実施。東日本大震災では教育や防災など多岐にわたる活動で延べ188万人に支援を届けてきました。また熊本での震災の際も、益城町を中心に子供や養育者のニーズに合わせた支援物資を届けるなど、即座に対応(写真は熊本の保育園で防災頭巾を配布したときのもの)。寄付はクレジットカードなどで。
「復興事業の"右腕"派遣」で支援
特定非営利活動法人ETIC.(エティック)
TEL: 03・5784・2115
www.etic.or.jp
東北の復興には長期的な視野に立った事業が必要だが、リーダーの"右腕"となるスキルや能力のある若手が足りない。
そこで社会問題を解決する起業家の育成に定評があるETIC.では、復興事業に奮闘するリーダーが軌道に乗るまで右腕を長期派遣するプロジェクトを実施。これまで144プロジェクト、246名の右腕を派遣し、地域資源を使った新事業の誕生に寄与。
写真は女川町でスペインタイル工房を立ち上げた阿部さんと右腕の高野さんたち。
次回は子供の貧困支援についてお届けします。
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おしゃれも暮らしも自分らしく!
1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
ファッション、ビューティ、インテリア、料理、そして読者の本音や時代を切り取る読み物……。
今読者が求めている情報に寄り添い、LEE、LEEweb、通販のLEEマルシェが一体となって、毎日をポジティブな気分で過ごせる企画をお届けします!