『パパはわるものチャンピオン』で仲良し家族を演じた 棚橋弘至選手、木村佳乃さん、寺田心くんに直撃!
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折田千鶴子
2018.09.18
本当の家族みたいな3人に頬が緩みっ放し
LEE読者の中にも、プロレスファンという方は、少なくないのではないでしょうか。実は今、プロレス人気がスゴくて、チケットもなかなか取れないらしく、しかも女性の観客がとっても多いのですって! 知りませんでした……。何を隠そう、今回、写真を撮ってくれたカメラマンさん(女性)も大のプロレスファン! そんなわけで取材前に、棚橋さんがどんなにスゴイ人なのか等々、色々教えていただいちゃいました。
さて、そのプロレス人気をここまで復活させた立役者でもある棚橋弘至選手が、なんと映画に主演されました! その映画『パパはわるものチャンピオン』で、棚橋選手と仲良し家族を演じた木村佳乃さん、寺田心くんの3人に、お話をうかがってきました。
久しぶりに顔を合わせたこの日。木村さんを見るなり心くんが「わぁ、佳乃ママ、髪切ったの!?」と歓声を上げました。かと思うと、「あ、棚橋パパだ! お怪我大丈夫ですかぁ?」と、嬉しそうな顔と心配そうな顔を同時に覗かせます。「試合ですごい怪我をされたんでしょ? 膝、大丈夫ですか?」と木村さん。
お互いを気遣い合う3人の様子から、仲良し家族を演じた、すごくいい雰囲気が伝わってきて、思わず頬が緩んでしまいました。
「もう大丈夫だよ。海外で膝を捻ってしまって」と棚橋さん。「やっぱり、強いですね!」と心くん。心くんが抜群のムードメーカーとなり、笑顔いっぱいの取材が始まりました。
スーパースターの棚橋さんが悪役レスラーに!
――棚橋選手が、トップレスラーのドラゴンジョージ役ではなく、敢えて悪役のゴキブリマスク役というオファーを聞いたとき、ご自身でも驚かれたのではないですか?
棚橋「確かに、原作の絵本に出てくるドラゴンジョージは、元々棚橋をモデルとして描かれたのですが……。この絵本が出版されてから何年か経ち、実際のリング上での僕と、主人公の大村孝志がすごくリンクして。かつてはエースだったけれど、怪我もあって段々と世代交代の波などにのまれていって、という。大村孝志、俺じゃん、って思って(笑)、この役の気持ちがスッと自分の中に入って来たんです」
木村「棚橋さんと言えば、プロレス界を牽引した方、という印象がまず来ますものね」
寺田「うん、そう、カッコいいし、優しいし」
――対して木村さんは、トップレスラーからヒール役に転向したプロレスラーの妻を演じられました。その感想を教えてください。
木村「絵本より先に脚本を読んだのですが、それがもう、すごく面白くて。読みながらイメージが次々と湧いて来て。若い監督が書かれた脚本で、10稿くらいブラッシュアップされていって、毎度、これ以上良くなりようがあるの?と思いつつ、どんどん良くなって。とにかく素晴らしかった! 今、私も色んな経験を積んできたので、今度は監督のようにお若い(撮影時34歳)才能とお仕事してみたいな、とずっと思っていたので、まさに自分がやりたいドンピシャの作品に巡り合った、という感じでした」
心くんは、最初は棚橋さんが怖かった!?
――3人は家族を演じられたわけですが、現場ではどのように過ごされていたのですか?
木村「心君、棚橋さんに、ずっと遊んでもらってたよね」
寺田「はい。木村さんにも、ずっと遊んでもらって。棚橋パパには、胸の筋肉ルーレットで遊んでもらったり。どっちが動くか選ぶと、大抵、外されるんです(笑)!」
棚橋「筋肉、自由自在だからね(笑)」
寺田「いつも棚橋パパは、すごく優しかったし、色んなことを教えてくれて、すごく楽しかったんです。でも最初、プロレスとレスリングの違いも知らなかったし、調べたら怖そうな人たちばかりが出て来るし、DVDを見せてもらったら血だらけで、最初はビクビクしていました」
棚橋「確かに最初、心くんは一定の距離感を保っていました(笑)」
寺田「でも会ったら、すごく優しくて、楽しくて、こんなパパいいな~って思いました。人は見た目で判断できないな、と思いました」
棚橋「ハハハ(苦笑)……」
自然な演技はどう生まれた!?
――棚橋さんの演技もとても自然でしたが、苦労はされましたか?
棚橋「撮影に入る1ヶ月くらい前から、心くんと監督さんの3人で、リハーサルをさせていただきました。本作以前でも、何度か演技のお仕事はさせていただいたのですが、撮影前の本格的なリハーサルは初めて。本当に監督のおかげです。でもこのメンバーが集まると、当時の記憶が甦って……主演だなんて、すごいプレッシャーでした。プロレスの試合とは、また違ったものがありましたね。でも貴重な経験をさせてもらっているんだから、それを生かそう、楽しもうと思って、必死でした。やるからには、いいものを見せたいですから」
木村「でもある意味、リングの上でも“棚橋弘至”を演じるわけですから、通じるものはありますよね?」
棚橋「リング上のマイクパフォーマンスでも、一番おいしい所で毎回、噛んでしまうので(笑)、プロレスファンから“大丈夫ですか? セリフ覚えられましたか?”ってよく聞かれましたね。大丈夫、映画は撮り直せるから、って答えてました(笑)」
――監督によると、木村さんの登場で、棚橋さんの演技が格段に上がったそうですね。
棚橋「はい、すごく引っ張っていただきました」
木村「いえいえ、単にものすごく緊張されていただけですよ(笑)!」
棚橋「ガッチガチでしたね(笑)。デビュー直前の、新人並でした」
木村「本当に真摯に役に向き合ってくださって。このタイミングでセリフを言わなければ、とか、頭がパンパンになっている感じだったんです。私はそれを解くだけだ、と思って」
棚橋「木村さんが最初のセリフで、「祥太~」って息子を呼ぶのを目の前で聞いたとき、“あ、こういう感じなんだ”って、イメージがバーッと広がっていって。家族の空気感を、木村さんが柱となって作ってくださいました」
――ちなみに棚橋さんは、セリフをどのように覚えましたか?
棚橋「一気に集中して覚えました。息子や娘、嫁さんに見てもらいながら、何度も読んでから現場に行きました。人目に見てもらっておかないと、現場で集中できないので、家族に鼻で笑われながら(笑)」
棚橋パパは常にカッコよさを目指してます!
――ご自身は、家ではどんな父であり、母であり、息子でいたいと思っていますか。
棚橋「僕は、常にカッコつけていたいですね。嫁さんに対しては、そういうのはなくなっていますが、子供の前では、常にカッコよくいたいんです。うちのパパはちょっと違うよって思われていたいんですよね」
木村「私、ファザコンだったので、すごくよく分かります! やっぱり父親のことを頼りにしたいんですよ、娘は。さすがパパって思いたい。その姿勢、素敵ですね」
棚橋「朝起きたら子供が起きる前にちゃんと着替え、学校に行っている間に、練習に行って治療に行って、子供たちが帰ってくるまでに帰宅。それから習い事の送り迎えに行き、夜9、10時くらいに子供たちが自分たちの部屋に戻ったら、それからまた練習に行くような生活スタイルです」
木村「偉~い。偉すぎる~!!」
棚橋「ありがとうございます。2016年ベストファーザー賞をいただいたので(笑)」
――木村さんは、どんなママですか。
木村「うちは女の子2人なので、女3人揃ったら、とにかく賑やかですよ。うちの母がすごく明るい人なのですが、お母さんが明るいと、やっぱり家って楽しくなる。だから、とにかく明るく元気があるお母さんでいよう、と思っています」
棚橋「素敵です。よく笑うお母さんの家の子は、子供もよく笑うんですよ。僕、幼稚園の送り迎えをしていたのですが、本当に、お母さんとお子さんって似ていて。よく笑うお母さんのお子さんは、よく笑う。でもムスッとしがちなお母さんの子供は、無表情な子供が多いかもな、って思ったんですよ」
木村「あとは、自分が間違えたときは、すぐに謝る。謝れる母親でいたいな、と思っています」
寺田「僕は、小さいなってお母さんに思われています。僕のお母さん、結構、厳しいです」
木村「そうだね、心くんのお母さん、ビシッと厳しいところは厳しく、でも心くんも怒られると納得していて、すごくいい親子関係だよね」
家族の会話がきっと増える、ステキな映画!
――では最後に、この映画の素敵さをLEE読者に伝えてください。
棚橋「観終わったとき、家族の会話が増えたらいいな、と思います。家族でも、お互いに対する見方が変わると思うんですよね。子供から見たお母さん、お父さん。親御さんから見たお子さんの視点とか。理解度が高まると思います」
木村「普通は、何の映画を観るか決めるのは、女性が主導権を握ることが多いと思うのですが、本作に限っては、男の人に女の人を連れて行って欲しいです。なぜならこの映画は、男の人が、とってもカッコいいんです。ですから男の人から積極的に、カノジョや奥さんや子供を連れて行ってください!」
寺田「僕は、小さい子からお爺ちゃんお祖母ちゃんまで観ることのできる映画だな、って思います。すごくあったかい映画です!」
パパが悪役だと知ってショックを受けた祥太は、素直に応援できるようになるのでしょうか――。自分のプライドを懸け、家族のために戦う孝志とその家族に、思わず熱い涙がこぼれてしまうハズです。ぜひ、大切な人と劇場に足を運んでください!! プロレスシーンも、興奮必至ですよ!!
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。