彼らが生み出す音楽は、とても耳に心地よい。昼下がりのリビングでくつろぐときや寝る前のチルタイムにぴったり合うサウンドだ。
しかし実は集中して耳を傾けると、詩的な歌詞にアフロミュージックやダンスミュージック、ヒップホップなど、さまざまな要素が盛り込まれた、味わい深い音楽であることがわかる。
BGMとしていい意味で聴き流すもよし、じっくり聴いて堪能するもよし。そんな一粒で二度おいしい(!?)ceroの音楽。自然に体を揺らしてしまう“フィジカルな”魅力にもあふれた、3年ぶりの新作を発表した彼らに近況を聞いた。
「僕らは今、30代前半ですが、以前は技術が追いつかず、ライブで音源を再現するのが難しいのがストレスでした。でも、僕ら自身の技術も上がったし、サポートメンバーにも支えられながら、この3年間、ライブの場数を踏んで、いちばん新しい自分たちを見せられる場として楽しめるようになった。そうした変化が作品に反映されていると思います」(髙城さん)
「音楽的にはブラックミュージックのルーツであるアフリカ、それにブラジルなどの音楽を参照しつつ、僕たちなりのダンスミュージックに仕上げました」(荒内さん)
「もちろん音楽作りのヒントは映画や本など、音楽以外のカルチャーからも得ています。なんとなくそれぞれ今何が好きかというのも共有しているので、それが自然に音楽作りに反映されている部分もあると思います」(橋本さん)
前作発表後に父となった髙城さんは、生活の中に溶け込んでちょっと楽しくなる音楽の大切さをあらためて確認する日々で、自分たちの音楽も気軽に聴いてほしいと話す。「今の音、歌詞は何だろう?」とひっかかる仕掛けは、気づいた人が楽しんでくれたらいいという。
「僕たちは作品を通して“踊りませんか?”とアジテートしているつもりなんです。もちろん実際に踊ってもらってもいいし、“振る舞い”の変化を促したい、と言ったらいいのかな。聴いた人の考えや気持ちに、何か変化を起こせたらうれしいですね」(髙城さん)
3人の出会いは吉祥寺や阿佐ヶ谷といった西東京の地域で、そこを活動のベースにしてきた。髙城さんは阿佐ヶ谷でRojiというバーも経営している。
「今、昔の面影がなくなっていく街が増えていますよね。西東京もそうで、みんなで集まっていた喫茶店などもなくなってしまいました。Rojiをやっているのは、昔の喫茶店のように、仲間がいて、好みが合いそうな人に会える場所を残したいから」(髙城さん)
そこで吉祥寺のおすすめスポットについて尋ねると、荒内さんは「やっぱり動物園がある井の頭自然文化園かな? 僕、年間パスポートを持ってます」。
「東急百貨店の裏あたりに、いい感じの小さなお店が集まってますよね」というのは橋本さん。
髙城さんは「西友にあるチァムというフードコートが穴場でおすすめ。昔ながらの懐かしい感じで都会によくこんな場所が残っているな、と思うんですが、気兼ねせずに子どもと一緒に過ごせます。なくならないでほしいなあ」と教えてくれた。
クールな音楽を届けてくれる一方で、気取らない日常ものぞかせてくれる。彼らのリアルのすべてが詰め込まれたアルバムをぜひ!
3年ぶりのオリジナルアルバム。
ブラックミュージックやジャズ、さらにはブラジルやキューバの音楽などさまざまな要素を感じさせながら、洗練された日本ならではの美しいポップスに仕上がった極上の全12曲。
通常盤のほか、LIVE DVDやボーナスCDがついた2バージョンの初回盤も発売。
(カクバリズム)
撮影/名和真紀子 取材・文/中沢明子
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