自転車で大きな事故を起こしてしまう前に
自転車と通行人との事故が大きな社会問題になっています。
2017年12月には、ながらスマホをしながら電動アシスト自転車運転していた20歳の女子学生が、77歳の女性と衝突し死亡させてしまうという痛ましい事故も起きてしまいました。子どもが自転車通学をしている親にとっても決して他人事ではありません。被害者に与えた損害の程度によっては、請求される賠償金が数千万円にも上ることもあるのですから。
こうしたケースに対処するため、自転車保険への加入を義務づける自治体が増えています。東京都でも2013年から「東京都自転車条例」にもとづき、自転車の利用者は事故に備えた保険に加入する努力義務が定められました。自転車保険の種類はいろいろありますが、東京都では区が窓口になって、「区民交通傷害保険」を住民向けに提供しています。保険料は年間1400~3300円と低めに設定されており、自分が交通事故等でけがをした際の補償に加え、相手に対する賠償額が1億円まで支払われます。この保険を実施しているのは、港区、文京区、台東区、墨田区、江東区、渋谷区、豊島区、北区、荒川区、練馬区(2017年10月1日現在)。
今年度の申し込みはすでに終了した区が多いのですが、世田谷区は5月1日から受付が始まっており、6月22日までに申し込むと、7月1日から1年間が補償対象になります。ただし、7月1日時点で世田谷区に在住、在勤、在学の人が対象で、運転者が子どもの場合は、子ども個人で入る必要があるので注意。申し込みは区内の金融機関(ゆうちょ銀行・郵便局、銀行、信用金庫など)で受け付けしています。自
治体が提供する保険の先駆けになったのは、兵庫県(兵庫県交通安全協会)の「ひょうごのけんみん自転車保険」。横浜市(横浜市交通安全協会)も「ハマの自転車保険」を提供しています。どちらも最高でも年間3000円程度で加入できます。
加入前にほかの保険と重複がないかチェックを
こうした安価な障害保険を利用するのもいいのですが、今入っている別の保険で、すでにこの補償部分をカバーしている場合もあります。
例えば、自動車保険や火災保険に入っていて、子どもも対象に含んだ「個人賠償責任補償」を特約でつけているなら、ほかに自転車保険に入ると補償が重複してしまいます。損害保険は生命保険とは異なり、相手に与えた損害額以上に受け取ることはできないので、複数の保険に入ればよりたくさん保険金が出るというものではありません。自動車保険の個人賠償責任特約なら、保険金額が無制限出るというものもあるので、改めて自転車保険に入る必要はないでしょう。まずは今の保険の内容を確認したうえで、足りない補償を加えるという順序が肝心です。
松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。