妊娠中や産後間もない女性の自宅を訪れ、家事、赤ちゃんの沐浴などの育児、上のお子さんのお世話等々くらし全般をサポートし、子育てが軌道に乗るまでの期間、日常生活とお母さんを支えてくれる「産後ドゥーラ」。欧米を始め諸外国ではひとつの職業として確立され、多くの方が活躍されています。
1月に第二子を出産、実際にドゥーラサポートを利用した友人へのインタビューを通し、具体的なサポート内容や感想についてお伝えした【前編】に続き、【後編】では「ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ」の三門久美子さんに、お話を伺いました!どんな想いで、産後の女性を支えるお仕事をされているのでしょうか。
お母さんひとりひとりの状況と気持ちに寄り添う、臨機応変なサポートを
「産後は、とにかく横になって身体を休め、安心して赤ちゃんのお世話に専念できる環境をつくるために、できる限り最善の手段を尽くすことを心がけています。産後の女性が『今こうして欲しい』という希望を言っていただきやすい関係性づくりや言葉かけなどを大切にしています」
例えば家事のお手伝いなどでも「〇〇をやらせて頂いても良いですか?」と具体的に伺うようにしているという三門さん。「お掃除はどうしますか?」というように、“するかしないか”を選択する聞き方だと、つい「大丈夫です」と遠慮してしまう方が多いのですが、こちらが多少前のめりにやる気モードで伺うと「じゃあ、お願いします」と答える方が多いそう。
また、当日何をしてほしいかは、人によっても日によっても違うもの。
疲れていて静かに眠りたい場合は、予定してた家事などは中断して赤ちゃんを抱っこし、お母さんには別室で静かに過ごしていただくこともあれば、育児の相談や日々のちょっとしたお話をゆっくり伺うこともあります。
「もちろん私もお話することは楽しみですが、話をしたいかどうかも人それぞれ。内容によっては家事の手を止めて耳を傾けますし、充分に眠れているか、お母さんご自身がお食事を摂れているか、ゆっくりお風呂に入れているかなど、こちらからお尋ねする時も。相手の方の状況やお気持ちに寄り添って、臨機応変に対応することを心がけています。」
また、しっかり養生してもらうための「手段」を提供する場合もあります。
「例えば第二子、第三子出産予定の方の場合、上のお子さんが未就学児で保育先がないケースも多くあります。実際はそういう方も多いと思いますが、産後まもない女性が上の子と赤ちゃんを同時にお世話していては、体を休めるどころではありません。産後ドゥーラの場合、上のお子さんのお世話のために連日朝から夕方まで時間確保することは、他のサポート等との兼ね合いのため難しい。そういった場合、日中のびやかに過ごせる環境として、キッズライン(産後ドゥーラ対応可シッター専門)や保育園、緊急一時保育、区の預かり施設への申請等もお伝えしています。」
産むまでは具体的にイメージしにくい部分もある産後の生活全般について一緒に考え、自分だけでは持てなかった視点から色々なアドバイスをしてくれる存在は、とても心強いですよね。
砂糖・油・みりんは極力使わない、母乳にやさしく野菜中心の和食。
三門さんのサポートの魅力のひとつに、利用したお母さんたちが皆楽しみにしているという「おいしいごはん」があります。
産後は、空腹やストレス解消などで、手っ取り早くお腹が満たされる炭水化物を多く取ってしまいがちですが、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどバランス良く栄養を採ることは体の回復のためにも大切なこと。そして、ほぼ横になって過ごしているので、消化が良い料理であることも大事なのだそうです。
「砂糖、油、みりんは使用を控えているのは、糖分、油分を過剰に取ることが乳腺のつまりの一因となるから。また甘い菓子パンやお菓子は急激に血糖値を上げてしまい、気分の浮き沈みにも影響してしまいます。出汁でしっかり煮含められていると、それだけでも美味しい。あまり余分に調味料を使わない調理を心がけています。事前に食材や調味料など、用意していただくと良いものをリストでお渡ししますが、ほとんどのお店で手に入るものばかり。もちろん全て揃える必要はなく、調味料も最低限、醤油と味噌があればOKとお伝えしています。」
三門さんにサポートを受けた友人(詳しくは【前編】にて)によると、家にあるもので作ってくださるので調理器具や調味料などは同じはずなのに、すごくおいしくて驚いたそう。玉ねぎの甘味などを活かしていて甘さもあり、サポートのたびにごはんが楽しみで仕方がなかったといいます。体力が回復してきてからは、三門さんの料理する様子を見ながら「このタイミングで干しシイタケを入れるのね!」など参考にさせてもらったと話していました。しっかり休み、体に良くおいしいご飯を食べていた友人は、確かに産後2か月弱とは思えないほど健康的な美しさがありました。
夫婦一緒に、産後の生活について考え準備することの大切さ
今回お話を伺った友人のお宅では、産後のスケジュール管理にまつわるやりとりなどは、基本的に全てパートナーが担当されていました。もともと友人の周りにはサポートを利用した経験者が多く、産後の養生についてのアドバイスや、上のお子さんの送迎のお手伝いの申し出をいただく中で、出産前に、パートナー・三門さん・周りのサポーターでLINEグループを作成。調整などは全てこの中でパートナーが連絡を取ったそうで、三門さんもこの態勢は素晴らしかったと絶賛されていました。
「パートナーが主導となり、産婦をサポートするメンバー皆がスケジュールを簡単に把握できる形を作っていただいたことは、ご本人にとっても本当に心強く、より安心して体を休められる環境だったと思います。産後は、話し合いや調整する体力はないと考えて、とにかく産前に予想できるトラブルを把握し対処するための準備をしておくことが大切。出産や産後に対して男性が介入することはまだまだ躊躇もあると思いますが、産後はまさに育児の導入期。夫婦で一緒に産後の生活を考え、男性パートナーが主導となって産婦がしっかり養生に徹する環境を作ってくださる世の中になって行くことを願います。」
これだけしっかり準備していても想定外のハプニングなど予定通りに進まないこと多くあり、友人夫婦も、産後は何があるかわからないということ、そして事前に多くのサポートの手を借りることの大切さを改めて実感されたそうです。
ベビー用品を買うのと同じように…妊娠中から産後の心身のケアも準備してほしい
現代の日本では、様々な社会的要因により、産前産後に家族や隣近所の助けを借りることが難しくなってきており、孤独に育児と向き合いがちなお母さんたちが増えているといいます。三門さんは、ご自身のブログなどを通して、「ドゥーラサポートを出産祝いに!」という素敵な提案もされていて、とても心を動かされました。このたび、「こども商品券」もドゥーラのお支払いに適用できるようになったとのことで、ベビー用品などを贈るプレゼントも嬉しいですが、母となりゆく女性に寄り添い、体にも心にも寄り添ってくれる「産後ドゥーラ」という贈り物、きっと大きな支えになるのではないでしょうか。
少し大げさな言い方かもしれませんが、産後というのは、誰かに頼らなければ生きていけないと痛感せざるを得ない時期。ひと昔前より便利になったような昨今ですが、その隙間隙間では、やはり人の手や想いが必要だと思うと話す三門さん。
「産後の養生はこれからの子育てに向けての土台づくり。お母さんが笑顔でいることが、子どもやパートナーを始め周りみんなの幸せにつながると思っています。
子育てしていく中でしんどいと感じたら、何かに頼ることは後ろめたいことじゃない。ドゥーラサポートなどは贅沢とお考えの方もきっと少なくないと思いますが、どうか自分だけでやっていけると無理をしすぎず、堂々と人に頼ってほしい。
今後も地域に根差した活動と、産後ケアの重要性を広めていきます!」
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。