The Rose of Versailles
少女マンガの金字塔
不朽の名作『ベルサイユのばら』が劇場アニメ化で令和に蘇る!
私が初めて『ベルサイユのばら』の世界に触れたのは、小学校1年生の時にTVで観た宝塚歌劇星組公演、日向薫さん主演の『ベルサイユのばら ─フェルゼンとマリーアントワネット編─』(1989年)。その後、宝塚歌劇花組公演、大浦みずきさん主演の『ベルサイユのばら ─フェルゼン編─』(1990年)で初めて宝塚の生舞台を観劇しました。TVアニメが放送されたのは1979年~1980年だそうで、私が生まれる前なのですが、その後に再放送された全40話を母が録画していて、宝塚を観劇した後にTVアニメもビデオテープ(当時はビデオテープだったんです!)が擦り切れそうなほど何度も視聴しました。(OP曲もED曲も名曲すぎます…、聴くだけで泣けて来る…。歌詞でタイトルの伏線回収がお見事…!)未だに実家には『ベルサイユのばら 愛蔵版 上下巻』がありますが、マンガをちゃんと読めるようになった小3頃に上下巻とも読了。物語の壮大さ・重厚さ、原作者の池田理代子氏の美麗で完成された作画に圧倒されると同時に、「宝塚版は、原作をだいぶ端折っていたのだな…」と子どもながらに感じました。逆にTVアニメ版は、原作にないエピソードもたくさん付け加えられているのだな、とも。
そして、この劇場版。一切の無駄がない完璧な原作がまずあり、それを112分の映像に収める…原作ファンなら誰しも不安を覚えるに違いありません。いつもは観賞前に映画レビューなどは読まないのですが、今回ばかりは「期待し過ぎてガッカリしたくない」という気持ちが勝ってしまい、いくつかレビューを読んでからある程度の覚悟を持って臨みました。レビュー自体は本当に賛否両論!な印象です。

My Impression…
正直レビュー(ネタバレあり)
画面いっぱいに迸る、製作陣の原作リスペクト!!観て良かった!!
原作のあれだけの大長編を112分に収めねばならない…。この点では、3時間の舞台に収めねばならない宝塚版にも共通していると思います。物語の舞台はフランス革命前夜、王室側と民衆側さまざまな登場人物が交錯する群像劇で、もちろん主人公はオスカルなのですが、王后マリー・アントワネットも同じぐらいの比重で描かれています。宝塚版はアレもコレも…と登場人物ごとの見せ場を作り過ぎて全体的にとっ散らかっている印象なので観賞時はストーリーよりも宝塚ならではの豪華絢爛さ・演者の工夫に満ちたお芝居をひたすら楽しむに徹している私。
…からの、今回の映画観賞も、とにかく「50年の時を経て映画化・令和に蘇った」意味を真っ先に考えて、ベルサイユ宮殿やバスティーユ砲撃、煌びやかな宝石、ドレスやレースに手袋の刺繍まで…細部までこだわり抜いて描き込まれた渾身の作画と、声優さん達の魂が込められた全身全霊の声の演技に自分の感覚を全集中させるスタンスで臨みました。
ここからはネタバレあり!なので、ネタばらしされたくない、という方は引き返してください。
…そんな訳で、短い尺に収めねばならないのだろうし…とストーリーや構成自体にはあまり期待していなかったのですが、予想以上に原作に忠実に、大切なエピソードは全部しっかり押さえてあって、製作陣の方々の原作リスペクトを終始まざまざと感じました!!後から知ったのですが、原作者の池田理代子氏が「原作に忠実に書いてくださった」とコメントされているとのこと、どんな感想もここに全て集約されているのでは?と思います。
主人公のオスカルが、マリー・アントワネット付きの近衛連隊長という立場に居ながら、近衛連隊から衛兵隊に自ら異動し、最終的には貴族の立場も捨てて民衆側に付きバスティーユ陥落に至るまで…が物語の主軸にしっかりと据えられていて、初見勢でも分かりやすい構成に!!メインテーマがしっかり中心にあるので、原作ではわりと重要人物なのに映画ではモブキャラ…という扱いも多々。テーマがボヤける要素は潔いまでに削ぎ落とされており、丁寧に展開するべきエピソードの取捨選択にきっとものすごく議論を重ねたのではないか…と推察します。
映画オリジナルで描かれた、マリー・アントワネットの窮屈な宮廷生活やフランス革命における希望の印である緑の葉っぱ、バスティーユ襲撃時の跳ね橋を下ろす描写など…、「その細かさに痺れる…!」と思わず唸りたくなる、原作リスペクトはそのままに原作を補完する形で盛り込まれているシーンが多数あり胸熱でした。映画オリジナルと言えば、賛否両論分かれている「音楽」!「安っぽいポップスで白ける」という酷評も目にしたので、実際にこの耳で聴くまでドキドキしていましたが…、宝塚の1789やドンジュアンなどのフレンチロックミュージカルに近い現代的でライトな音楽で私はすんなり受容できました。しかし音楽に関しては、個人的にはTVアニメ版の重々しくて時に鬱々としたクラシカルな感じが好みです。(絶妙なBGMの入り方するので没入感が凄いんです)
ベルばら映画化の話が出た時に真っ先に出た疑問が「これは一体誰向けの映画なのか?」ということ。映画を観ながら、「宝塚ファン向けにも作られている!」と感じる場面が散見されました。たとえばマリー・アントワネットとフェルゼンが初めてお互いの想いが通じて抱擁を交わした後、原作にはない宝塚版の船上での逢い引き場面が!ベルばらと同じくフランス革命を主題にしたミュージカル「1789」の要素も。「ベルナールってデムーランだったの…?」と。
作画、ストーリー構成、原作リスペクトと宝塚ファンへの配慮…、そして何より声優さん達の声の演技!!まずオスカルはTVアニメ版を全部観ている私でも全く違和感がなく、凜々しく勇ましい軍人としての立場、アンドレの前での女性としての顔、幼い頃など全方面で完璧なオスカルでした。そしてアンドレ。私は映画版を観て初めてアンドレがカッコイイと思いました( ̄∇ ̄)平民出身の隊士もいる衛兵隊にオスカルが異動した時、影の護衛としてアンドレも入隊する…原作のままですが、映画でのこのシーンにズギュンと来ました!!(ちなみに妹は昔から「アンドレがキモい」と言っていますが、この映画ではアンドレの「キモい」と言われるシーンやモノローグが根こそぎカットされています。)マリー・アントワネットはフランスに嫁いで来た14歳・王太子妃の時から、フランス革命の足音迫る後半の女王までの、年齢に応じた演じ分けが圧巻。フェルゼンは原作もめちゃくちゃカッコイイんですが(語彙が乏しくてすみません)、映画版はそこへさらに麗しさに磨きがかかって描かれている気がします。この映画ではあくまでもオスカルとフランス革命がメインテーマなので、フェルゼンの見せ場は少なめですが、それでも男の色気溢れんばかりの魅力的なキャラクターに仕上がっていました。原作リスペクトと言えば…、衛兵隊のモブキャラ「ジャン」が、そのまんま「ジャン」でした!!めちゃくちゃ忠実に描かれていてここでも密かに歓喜。
令和に映画化で蘇った不朽の名作『ベルサイユのばら』、映画館の迫力ある大スクリーンで、豪華絢爛なベルサイユ宮殿の鏡の間や王妃の寝室、革命と共に散ったオスカルの波瀾万丈な生き様…を観ることが出来て良かったです。特に最後のバスティーユ砲撃の場面の作画は、原作にない付け足しも多く、この場面のために史実を一から洗い直したのではないか…!?と思えるような、製作陣の総力挙げての鬼気迫るものをビシビシ感じましたので、この場面だけでも一見の価値アリ!!とお伝えしたい…!!とにかくオスカルが軍神マルスそのものを体現していて「オスカルの指揮あってこそバスティーユが墜ちたんだ…、ここから共和制の第一歩が始まったのだ…」と納得できる画です!!
This is all I can say…
この一言に尽きる
とにかく原作が神。
映画は映画として、充分すぎるほど楽しませてもらいました。…が!原作ファンとしては、令和のアニメーション映像で原作をそのまま連続アニメにして欲しかったなぁ…観てみたかったなぁ…という思いも。こんなことを夫に話したら、「そんなアニメ誰が観るねん」と…。今Youtubeで無料公開中のTVアニメ版を観ているのですが、それこそ原作の本筋を邪魔しない程度にアニメオリジナルの肉付けが多数加えられていることに改めて驚いています。(ちょうど今シャルロットのくだりを観ていますがドギーシュ侯爵が原作よりかなり掘り下げられていてビックリ。TVアニメは小さい頃に観たきりだったので「私ちゃんと手を洗ったわ」しか憶えていませんでした…)今回の映画を観ても、TVアニメ版や宝塚版を観ても共通して思うのは「やっぱり原作は神。原作を越えるものナシ」。これに尽きます。原作ファンや宝塚ファンの方々がこの映画にいろいろ物申したい気持ちも痛いほど分かります。
映画を観ていて一番気になったのは、「これ、初見の人はどこまで理解できるのだろう…?」ということ。令和のベルばらを全集中で堪能するぞ!と意気込んで観賞に臨んだものの、ちょいちょい初見勢のことが気になって集中できない箇所が( ̄∇ ̄;) オスカルが女装(?)してフェルゼンと最初で最後のダンスを踊る場面は音楽と共にPV映像のようで、初見だと何のことやら分からないのでは…?とか、メインテーマがハッキリし過ぎていて、オスカルがフェルゼンに抱いている淡い恋心…も初見勢は読み取れないんじゃ?とか、アンドレの突然のヘアスタイル変更なぜ?ってならないかな…とか、オスカル、いつの間にアンドレを…?ってポカーンとしないかな…とか、あっ今のロベスピエール!とか、ナポレオンとすれ違った!!とか、フランス衛兵隊が平民側に付く意味・バスティーユに白旗が揚がる意味に解説が必要なんじゃ?とか…いろいろ余計な想いが浮かんで来てしまいました( ̄∇ ̄;)
映画版オスカル、本当に完璧でしたが、原作の人間くささのあるちょっと短気なオスカルも好きなんです。ロザリーやシャルロット、ベルナール、ルイ・ジョゼフ王太子、ジェローデルやアラン、ディアンヌ、ロベスピエール…オスカルの周りをとりまくたくさんの人々あってこそ、オスカルの魅力がより引き立っているんですよね。映画版でまるっと削除された、オスカルが結核に冒されているシーンもなくて、後半あれだけ捨て身に「自分の心のままに生きる」ことが出来た理由として喀血のシーンは必須では…?と少し残念な気も。映画はオスカルの殉死と共にエンドロール突入、フランス革命の顛末とその後の歴史に関しては紙芝居的にサラッと説明。ヴァレンヌ逃亡や処刑まで…命を賭けてマリー・アントワネットを守らんとするフェルゼンの真骨頂はバスティーユ襲撃後の物語後半に有、原作を読んだことがない方は映画をきっかけに原作も手に取ってくれると良いなぁ…と願います。また、宝塚版に見られる謎のシュテファン人形や「フランスの女王なのですから!」という台詞も原作には出て来ませんので、宝塚版しかご覧になったことがない方にも原作を読んで頂きたいです…。(宝塚版も作品としてもちろん素敵なんですよ…!大浦みずきさんのフェルゼン、天海祐希さんのアンドレ、涼風真世さんのオスカル、花總まりさんのマリー・アントワネットが特に大好きです)
来場者特典第2弾の原作複製原稿。映画が始まる前に「ベルばら ミニ」のアントワネットver.特典映像も流れました。

それにしても、弱冠24歳にして壮大な歴史ドラマと男装の麗人オスカルというファンタジーを融合させた、このような完璧な作品を世に送り出された池田理代子氏…「天才」の二文字以外の言葉が見つかりません。
実は、当初は娘(小2)と2人で観ようと思っていたこの映画。一応、全年齢対象。オスカルとアンドレの「今宵一夜」の場面はソフトタッチではありましたが、やっぱり一人で観に行って良かったかも…と。不朽の名作は、短い尺に収めてもやっぱり色褪せない。最後のほうは涙ポロポロになりましたので、これから観に行かれる方はハンカチを持って行かれることをオススメします!!今回の観賞では初見勢のことが気になるという心の雑音アリアリだったため、次回はもっと落ち着いた心で観たい…!また2回目も一人で観に行こうかなと計画中です。
TB - はな
会社員 / 神奈川県 / LEE100人隊トップブロガー
42歳/夫・息子(14歳・12歳)・娘(9歳)/手づくり部・料理部・美容部/大雑把な山羊座のO型。好きなものは器、アメリカンヴィンテージ、宝塚歌劇、マンガ、ミナ ペルホネン、オールドマンズテーラー、GU、ユニクロ、無印良品など。ファッション・インテリア・お料理などLEEで勉強中。両実家とも遠方で3人の子育てに日々奮闘。17年間専業主婦→パートを経てフルタイムで働き始めました。ドタバタと過ぎて行く日々の中でも「今」を大切に、小さな幸せを拾い集めながら成長して行きたいです。
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