またまた図書館で借りて来た本のレビューです(^^)
植島啓司『生きるチカラ』集英社新書(2010年7月発行)
だいたい背表紙のタイトルを見て直感で「コレ!!」という感じで借りることが多いです(°°;) 今回も『生きるチカラ』というタイトルに惹かれました。“生きるチカラ”というワードで連想するのは、宮崎駿監督スタジオジブリの「千と千尋の神隠し」。本書と「千と千尋~」は何の関係もないのですが…。「千と千尋~」の冒頭は、小学生の主人公・千尋が、どうやら引越しに伴い小学校を転校することが決まり、車で両親と、家族3人移動中、後部座席でボーッと花を手に無気力な様子から始まります。突然異世界に迷い込み、両親は何故か豚にされ、自分も消えてしまいそうになるという、生命の危機とも言えるような困難にぶち当たり、無気力だった小学生の「生きるチカラ」が呼び覚まされて行きますね…。
あれほどまでの困難にぶつかることは現代日本ではそうそうなくても、我が子達の「生きるチカラ」を育むヒントを頂ければと思い本書を手に取りました。
結論から言うと、そんな魔法みたいなことが書いてあれば誰も苦労しません…。「子どもの生きるチカラを育むには」等の具体的な方法論が述べられている訳ではありません。しかし世界の聖地を調査して来た宗教人類学者の著者が綴る言葉は、「人生における成功と失敗って?」「生きる喜びとは?」「本当の幸せって何だろう?」という問いかけに対して数々の示唆に富んでいます。
最もドキッとした部分は「Lesson3」の「金持ちはみんな不幸?」の章。いわゆる有名人のほとんどが(実名はここには書けないと書かれていましたが…)人知れぬ不幸を抱えているという…。同じように、私が銀行勤務時代、同じ職場の同僚で「財務コンサルタント」という大金持ちのお客さんをメインに担当する専門職の人が居て、その人もやっぱり「金持ちは何故かみんなお金で解決出来ない問題を持っている」と言っていました。
いつかの日本経済新聞の連載「私の履歴書」で、とあるノーベル賞を受賞され富も栄誉も手に入れられた方が「天は禍福を“調整”するものではないか」(細かい言葉尻まではうろ覚えで…すみません)と発言されていました。読んだ当時、確か長男が2歳で、次男を妊娠8ヶ月、妹が結婚式を挙げたばかりだったと記憶しています。怖くなって同じ箇所を読んでいるであろう祖母に電話をし、「どうしよう。今が幸せ過ぎるから“調整”があったらどうしよう!」と言いました。祖母はケラケラと笑い飛ばしてくれて、「はなちゃんは、大金持ちでもすごい賞をもらった訳でもナシ、調整なんて…そんなこと心配せんでも大丈夫や。でも、けっして調子に乗ったらアカン。今ある幸せは周りのお蔭だと感謝して、自分のやるべきことをやってたら、なーーんにも怖いことあらへんよ。」祖母の言葉でとても救われました。
…そして本書の内容に繋がって行くのですが、お金持ちはどういう訳か色々な意味で、姿を変え形を変え不幸が訪れ困難を抱える運命にあるらしく、たとえばあまりに抜きん出た“幸運”が降って来た場合。その“調整”が働いて、幸運と同じ絶対量の災いが、本人の一番大切な人物、それも最も弱い部分(自分の子どもなど)に降りかかるというのです…!!何という恐ろしい話でしょう…。だから自らの子どもを大切に思うなら幸運の独り占めをしないほうが良いというのが著者の持論です。先述の「私の履歴書」内のエピソードにも通じる話で思わず背筋が凍りました…。(私の履歴書を書かれた某ノーベル賞受賞者の方が幸運を独り占めしたということではありません!)お金は必ずしも幸せを運んで来るとは限らない、むしろ不幸と表裏一体なのだと。
過去に巨万の富を築いた人々の不幸な実例(宝くじ当選した人の話など…)がいくつか挙げられているのですが、良いことを独り占めせず、自分の懐だけ温かくなれば良いと考えないこと、人生において勝敗の決着がついてしまう局面は多々訪れるが自分を負けた側の立場から俯瞰して見ることが大切とのこと…。動物は基本的に弱肉強食、厳然たる食物連鎖と生存競争があるけれど、人間を人間たらしめているものは、勝ち負けに拘らない心だったり、勝てば勝つほどOKという訳でもない複雑さだったりするのでしょう。
先日読んだ曽野綾子さん著『人間の分際』にも共通する部分がいくつかありました。人間の人生は幸不幸がだいたい半々だということです。人間、生きていたら病気になったり人に裏切られたり怖い想いをすることもある。齢を重ねればあちこち支障が出て来るのだって当たり前のことで、幸不幸はどうせ半々なのだから、悪いことが起こるのも“当たり前”。いちいち引きずらない、面白がったり適切に処理することで大難も小難に出来たり、災い転じて福と為す、思いがけないチャンスを孕んでいるかも知れない。要は心がけ、受け止め方次第なのだと学びました。
総じて「生きるチカラ」ってどうすれば強固なものに出来るのか…人間誰にでも、幸福の分量と同じだけ平等に訪れるであろう不幸や災厄に直面した時に、それを乗り越えることで生きる喜びをより深く味わうことが出来て、生きよう!と思う気力になる…ということなのだろうな…と読み取りました。しかし相当量の不幸がやって来た時に心折れてしまう人も一定数いる訳で…私自身、けっして「面白がる」余裕など全くない出来事はいくつかありましたし、「アレもコレも良い思い出☆」とは今も尚思えませんが…沢山涙を流した分、少しは人の痛みを解るようになれたかな、とも思いますし、「普通の暮らし」の有り難みを噛み締める日々です。些細なことにも「生きてて良かった」と喜びを見出せる、これすなわち「生きるチカラ」なのではないでしょうか。平坦で平穏過ぎる暮らしは逆に「生きるチカラ」や生きている実感が育たない、そんなふうにも解釈出来ます。我が子には苦労をさせたくない親心。一方で厳しい環境に身を置いて頭を打ったほうが子どものためになるのでは…と相反する想いを抱えつつ、子育てにおける模索と試行錯誤はどこまでも続きます…。
⋆⸜ᵀᴴᴬᴺᴷ ᵞᴼᵁ⸝⋆ LEE100人隊 はな
TB - はな
主婦 / 神奈川県 / LEE100人隊トップブロガー
41歳/夫・息子(13歳・10歳)・娘(8歳)/手づくり部・料理部・美容部/大雑把な山羊座のO型。好きなものは器、アメリカンヴィンテージ、宝塚歌劇、マンガ、ミナペルホネン、オールドマンズテーラー、GU、ユニクロなど。インテリア・ファッションなどLEEで勉強中。両実家とも遠方で3人の子育てに日々奮闘。ドタバタと過ぎて行く日々の中でも「今」を大切に、小さな幸せを拾い集めながら成長して行きたいです。
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