子どもに対して、つい言ってしまうことの多いネガティブワード。気づかず繰り返すことで、子どもにとっては「呪いの言葉」となってしまうことも・・・
そんな、呪いの言葉のありがちパターンを、"ちゃんと伝わる言葉"に言い換える方法を、NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事の天野ひかりさんにうかがいました。
本意が伝わる話し方のポイントを学べば、子どもとのコミュニケーションが変わるはず!
"ちゃんと伝わる言葉"に言い換えるには?ありがちパターンでチェック!
ありがちパターン1 比較する
NG 「○○ちゃんはかけっこが速いのに、どうしてあなたは遅いの?」
OK 「 昨年はかけっこ4位だったけど、今年は速くなったね!」
» Point!
褒めるも叱るも、他人との比較は禁物。比べるなら、過去のその子本人と。
子どもを評価する際は、どうしても友達やきょうだいと比較しがち。比べることで、その程度を示しやすいからだと思います。
他人との比較で叱られると、子どもは当然いい気持ちはしません。褒める場合でも、比べることでしか自己評価ができない子どもになってしまう恐れが。比べるなら、他人ではなく、過去の子ども自身と比べてください。
「昨日はできなかったけど、今日はできたね」と成長した部分を褒めれば、子どもも前向きな気持ちに。もし比較せずに済むのであれば、その子のそのままを認める言葉がけを心がけましょう。
ありがちパターン2 きょうだい・性別などの枠にはめる
NG 「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい!」
OK
「お姉ちゃんはどうしたいの?」
「Aくん(弟)はどうしたいの?」
「お姉ちゃんはまだおもちゃを使いたいんだって」
「Aくん(弟)は貸してほしいんだって」
(姉がおもちゃを差し出す)
「わ~、お姉ちゃんが貸してくれるって」
「うれしい? Aくんうれしいってよ」
» Point!
● きょうだいを役割の枠にはめると、一生響くことも。きょうだい間では、ママは通訳に徹して。
● ひたすらうなずく。子どもの言葉を繰り返す。気持ちを言葉に置き換える。
「お姉ちゃんだから我慢しなさい」という、本人にはどうしようもない枠にはめると、ずっと心に残ります。姉だからワガママを言えない、とトラウマになることも。
きょうだい間の衝突では、ママは善悪を決める"裁判官"ではなく"通訳"になって。言葉がうまく話せないからケンカしている場合もあるので、気持ちを代弁することに徹しましょう。
また、きょうだいだけでなく「女の子なんだからお人形で遊んだら」などと性別の枠にはめるのもNGです。
ありがちパターン3 押しつけ・決めつけ
NG 「マンガなんかより、歴史の本を読みなさい!」
OK 「その本いいね。おもしろそうだね」
» Point!
● 言葉がけの本来の「目的」を明確にする。
● 子どもにやってほしいことは、親がやって見せればまねするもの。
この例のお母さんは、子どもに本を読む楽しさ、本で知識を得られることの喜びを知ってほしいはず。それなのに子どもの読書欲を邪魔しています。
まずは本来の目的を明確にして、子どもの気持ちがそちらに向くような言葉がけを意識しましょう。
そして、どうしても子どもに読んでほしい本があるなら、自分が読むこと! 親が興味のあることには、子どもも心を惹かれます。子どもにだけやらせようとするのではなく、親が手本を見せて。
ありがちパターン4 勉強について
NG 「いいかげん宿題しなさい!」
OK
母「宿題、何時からやる?」
子「んー、5時からやる!」
母「よし、5時からやろうね」
» Point!
● タイムスケジュールは子どもに決めさせる。
● 夢中になっていることを認めることが集中力につながる。
子どもが夢中になっていることをしっかり認めると、今度はお母さんがやってほしいこと、学校からやりなさいと言われることにも目を向けられるようになります。自己肯定感が着実に育まれれば、勉強もできる子になっていくんです。
ただ、今すぐやらせないと、という場合は、自分で宿題の時間を決めさせるのが得策。とはいえ、子どもはまだ時間の感覚がないので、お母さんも一緒に放課後のスケジュールを組みましょう。
ありがちパターン5 期待・プレッシャー
NG 「Aちゃんはしっかり者だから、できるでしょ? お母さんの右腕だね」
OK 「Aちゃんはたくさんお手伝いしてくれてお母さん助かるわ。ありがとう」
» Point!
● YOU(子ども)ではなくI(親)を主語にする。
● 褒める場合であっても、子どもの性格、能力を決めつけるのはNG。
YOU(子ども)を主語にすると、"呪いの言葉"になりがち、という法則が。
「マイペースだね」など親として悪気のない言葉でも、子どもを縛る言葉になりやすいものです。褒める場合であっても、性格・能力を決めつけることになり、子どものプレッシャーにつながりかねません。
それよりもI(親)を主語にして。「その行動や努力に対してお母さんがうれしい」という伝わり方になり、子どもは前向きな気持ちで「もっとお手伝い頑張ろう」と思えます。
ありがちパターン6 はなから否定する・褒めない
NG
子「イラストレーターになりたいな」
母「夢みたいなことを言って。 もっと現実的な仕事を考えなさい」
OK 母「いいね。Cちゃん、素敵な絵を描くもんね。きっとなれるよ!」
» Point!
● 現実には追々気づくから、将来の夢を否定する必要はなし。勘違いをするところから、夢は育まれるもの。
夢を叶えた人、希望の職に就いた人のお母さんに話を聞くと、みんな子どもの突拍子もないと思うような発言を全力で応援しています。
子どもが勘違いすることから夢は育まれるので、最初から全否定する必要はありません。本当になるためには努力が必要だし、才能がなければ子ども自身がそのうち気づくはずです。
子どもを真っ向から否定していいのは、命にかかわる危険なことをした場合のみ。これだけははっきり叱ってください。
ありがちパターン7 世間体を気にする
NG 「みんな見てるでしょ! レストランで騒ぐなんて恥ずかしいからやめて」
OK 「(周りに向かって)すみません。(子どもに対して)元気なのはいいことだね。でも、ここはごはんを食べる場所だから、静かにしようね」
» Point!
● しつけができるよい親と認められたい気持ちの表れ。親が周りに謝ろう。
その姿を子どもは見ている。
● 指示や禁止はしない。指示はレッツに言い換える。禁止する前に、よい部分を認める。
NG例は、親が人目を気にして、ちゃんと子育てをしているアピールで言っていることなので×。その場でできたとしても、子どもは何がいけないのかわからないので、根本的に改善はしません。
この場合、まずは親が周りに謝ると、子どもは謝るような悪いことをしていると学びます。
また、一方的な指示や禁止は効果がないので、子どもの行動を認めてから「~しよう」という言い方で守るべきルールを伝えて。子どもは聞き入れやすくなります。
親の本意が伝わる言葉がけをするための、具体的なポイントとはどういった部分なのでしょうか?
「最も大切なのは、よいところも悪いところも認めること」と天野さん。
「しつけを頑張らなければと思っている多くのお母さんは『まだ着替えができていない』『寝坊した』などできないことばかりを口にしがち。それを続けると、子どもは『どうせ僕はダメな子だ』と思い込み、“呪い”になってしまいます。
起きるのが遅かったとしても、まず『着替えられたね』と着替えたことを認める。『もう少し早くね』という注意はその後に続けると、子どもも聞き入れやすくなります」
「また、できないことばかりではなく、できたときこそ口にしましょう。当たり前と思わずに『起きられたね。えらいね』と言葉をかけて。
できないことを364日叱って、できた1日何も言わないよりも、364日何も言わないで、できた1日だけものすごく褒めると、翌日からできるようになるもの。子どもって本当に健気で、親の反応次第で大きく変わるんです。
褒めるときは、目の前で第三者に伝えたり、第三者から『○○ちゃん、今日は一人で早く起きられたんだって?』と間接的に褒めてもらうのも有効。子どもは誇らしい気持ちで、また褒められたことをしようと思います(笑)」
また、大前提として、声かけのタイミングも重要。
「『片付けなさい』と伝えて、親の言うことを聞けばいい子だと思ってしまいがちですが、それは間違い。子どもにはその時々で、夢中になっていることがあります。
親から見れば当たり前のことも、子ども目線では『このジュースはなぜこんな色なの?』と何かを発見し、研究している最中かもしれません。自己肯定感を育む言葉がけのためには、このタイミングでしっかり子どもを受け止め、認めること。親の都合で『片付けなさい』と一蹴せず、子どもが何を学び取ろうとしているかよく観察して、一緒におもしろがってください。
『こんな赤い飲み物、なかなかないよね?』と声かけをすると、大好きなママがわかってくれたと思い、子どもは学ぶことを認められた気持ちに。のちのちの学習意欲や知的探究心にもつながります」
子どもを認める言葉がけが自己肯定感を育てるカギ。少し意識を変えるだけで、前向きな言葉になりますよ。
2017年11/7発売LEE12月号『呪いの言葉、かけてませんか?子どもに"ちゃんと伝わる"話し方』から
イラストレーション/モリナオミ 取材・原文/野々山 幸
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