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映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

土屋太鳳さん「踊る主人公に自分を重ね、共感!!」/アニメ 『フェリシーと夢のトウシューズ』声優インタビュー

  • 折田千鶴子

2017.08.08

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世界のエンタメ界&舞台芸術の“技と心意気と美”が結集!

日本でも大ヒットを記録した『最強のふたり』の製作陣と、これまた世界中でヒットしたユルカワで痛快な『カンフー・パンダ』のアニメーター、さらにパリ・オペラ座の芸術監督がタッグを組んだと聞いたら、映画好きの方はもう観ずにはいられいですよね!? その作品こそ、『フェリシーと夢のトウシューズ』というアニメーション映画です。

舞台は19世紀末のパリ。踊ることが大好きな少女フェリシーがバレリーナになる夢を叶えるため、発明家を目指す少年ヴィクターと共にブルターニュ地方の施設から逃げ出し、憧れのパリにやって来ます。とはいえ身寄りのないフェリシーやヴィクターの運命はいかに!? というワクワクハラハラと心躍る物語です。

既にニュースがネットを賑わせていますが、この“踊るのが大好き”“夢を叶えるために頑張る”フェリシーの声(日本語吹替版)を、そのままイメージがピッタリ重なる、今をときめく土屋太鳳さんがアフレコしました。

 

95年2月3日、東京都出身。05年、オーディション“ MISS PHOENIX”で審査員特別賞受賞。08年、映画『トウキョウソナタ』で女優デビュー。連続ドラマ初レギュラー出演の『鈴木先生』(11)で注目される。映画『果てぬ村のミナ』(12)で映画初主演。NHK連続テレビ小説『花子とアン』(14)に出演、『まれ』(15)のヒロイン役で国民的女優に。代表的な主演作に『orange—オレンジ—』(15)、『PとJK』(16)、『兄に愛され過ぎて困ってます』(17)の他、年内に『トリガール!』(9月)、『8年越しの花嫁』(12月)も公開待機中。  <写真:中澤真央>

完成披露試写会の舞台挨拶後でまだ興奮冷めやらない中、バレリーナのような薄いグリーンのミニドレスに身を包んだ土屋さんが、LeeWebのインタビューに応えてくれました! さすが22歳! 澄んだキラキラの瞳に、ツルツルで張りのあるお肌に、思わず視線が吸い寄せられてしまいますね!!

 

弟に相談し、励まし合って頑張りました(笑)!

イメージ通りにふんわりと、でも、一つ一つ丁寧にしっかりと質問に答えてくれる土屋さん。みなさんがテレビなどで目にするイメージ通り、すべてに誠実に向き合う姿勢が、とっても好感度大です! まずは、夢を追い掛ける少女フェリシーを演じた感想からうかがってみましょう!

土屋「フェリシーは年下ですが、その年頃の自分としてではなく、今の私がそのままフェリシーに共感できました。これまで自分が経験してきたこと――身体で何かを表現する、お芝居をする――ことを、フェリシーを通して、フェリシーの人生に重ねて、声を当てることができることを、とても嬉しく思いました!」

 

『フェリシーと夢のトウシューズ』
2017年8月12日(土)、新宿ピカデリーほかにて全国公開
配給:キノフィルムズ
© 2016 MITICO – GAUMONT – M6 FILMS – PCF BALLERINA LE FILM

 

――演技とはまた違うアテレコは、大変でしたか?

「日本のアニメは一度経験がある(『僕だけがいない街』(16))のですが、海外のアフレコは初めてで、独特の空気感やリズム感がありました。海外(オリジナル版)の声優さんの呼吸に合わせなければならないので、予習がたくさん必要でしたし、とても難しかったです。最初は打ちのめされましたが(笑)、声を当てながらフェリシー自身からパワーをもらいました!」

「私には声のテクニックが全くないので、一つ一つ巻き戻して何度も練習するしかなくて。もちろん弟にも相談しました。ちょうどこの時期、弟(声優の土屋神葉さん)も、「ボールルームへようこそ」という踊りを題材にしたアニメをやることになっていたので、2人で「頑張ろう!!」と励まし合いながら一緒に練習しました!

 

 

フェリシーの踊りが魅力的で、声を当てながら、つい踊りたくなりました(笑)!

――フェリシーのどんな点に共感したのでしょう?

夢を追い掛ける姿思春期の恋の具合や気持ちの揺れなども、とても分かるな、と思いました。オペラ座に入るためのオーディションシーンも、一人ずつ落とされていくように、きちんとシビアに描かれているのですが、自分がオーディションを受けていた時のことを重ね、本当にドキドキしました。でもフェリシーの“絶対に自分が残りたい”“落ちたくない”という強い気持ちも、すごく分かるなぁ、と思いました」

「また、フェリシーの踊りがすごく魅力的なんです。動きにコンテンポラリーが入っている、彼女の踊りにもぜひ注目していただきたいです! 私もつい踊りたくなって、声を当てながら一緒につい動いてしまって、台本の台にガーンと手をぶつけたりして、「あ、すみませんっ!!」と(笑)。なるべく動かないように頑張りました」

■声の出演:エル・ファニング、デイン・デハーンほか
■監督:エリック・サマー、エリック・ワリン
■振付:オレリ―・デュポン、ジェレミー・ベランガール

 

――作品全体を通して、どこに魅力を感じましたか?

絵がすごく綺麗なことです! 見ていて、本当に心が開かれていくのが分かるんです。すごくツルツルしていて、フェリシーに触れるような感覚になるんです。日本の文化や言語とは違うものから生まれる絵というのもありますし、19世紀のパリの街並みや空、さらに旧オペラ座を見ることができて、すごく嬉しかったんです!」

 

土屋さんが、主題歌にこめた思いとは――

 

――初めて主題歌を担当されましたね。歌った感想、作詞に込めた思いとは?

「自分の歌がエンドロールで流れるかと思うと、動揺を隠しきれないです(笑)。私、16歳の時に舌小帯の手術をして、声を出すためのボイストレーニングをしたんです。その私が、今度は歌うためのボイストレーニングをさせていただいて……本当に嬉しかったんです」

「ただ今回こだわったのは、自分の言葉を歌詞にすることでした。私自身、色んな方からの言葉をいただいて励まされて来たので、自分の言葉にはこだわりたかったんです。歌だけなら、プロフェッショナルな方に歌っていただいた方が絶対に素晴らしいですから。だから、どう歌うかではなく、何を歌うかということを大事にしたかった

 

いつも元気でいられる理由は、「落ち込んだときは、食べる!」そう(笑)。「でも、決して食べて忘れはしません! 辛いことは忘れず、それを生かしてエネルギーに変えたいんです。食べるのが好きだから、ですが(笑)、幸せを味わう時間でもあるので、食べることは大切にしています」。もちろん、そういう時に食べるのは「お肉!!」とか。<スタイリスト:KOSEI MATSUDA (SIGNO)/ ヘアメイク:永瀬多壱(VANITES)>

「ダンスに限らず、夢を見つけることは生きることに繋がるし、夢を見失うことは、自分自身を見失うことよりも厳しいのだな、と感じることもありました。フェリシーを通して感じたそういう気持ちや、これまで私が生きてきた中で抱いた実感を、応援して下さる方々へのエールを込めて、歌詞に綴らせていただきました」

 

 



他人事のように「女優さん」というのを止めました

 ――フェリシーのように、土屋さんも見事、自分の夢を叶えた一人ですよね! その原動力は何なのでしょうか。

「……今でも信じられなくて、目を開けたら高校生に戻っているんじゃないかと思うこともあって、実感がないんです。それでも今、一番のパワーになっているのは、見て下さった方々からの感想です」

「これまで私ずっと、“女優さんになる/なりたい”等々と言っていたのですが、“女優さん”という表現に逃げていたな、と。エランドール賞をいただいたとき、いつまでも他人事のように言っていてはいけない、と思って。“女優”として立てる場をいただけるのなら、一つ一つの仕事にちゃんと責任を持ち、大事にして、少しでも見て下さる方に勇気や元気を渡せたらいいな、と思っています」

 

「私と踊りの出会いは、3歳からはじめたバレエと日本舞踊。でも姉の後を追い掛けただけで、フェリシーのように「踊りたくて仕方ない!」というわけではなかったんです。でも大学で創作ダンスに出会って、フェリシーのように踊りに魅せられました!」

 

――土屋さんにも、ヴィクターのように、たとえ夢は違えど励まし合って元気づけ合えるような仲間はいますか?

「います! 弟もそうですが、お芝居をしているお友達とは常に“頑張ろうね、終わったらお肉を食べに行こうね”といつも励まし合っています(笑)。特にフェリシーのようにバレエなどの芸術は、体調を整えるのは最低限で、休まず努力をし続けなければならない。一日休んだら自分に分かり、二日休んだら周りも分かると言われるくらいなので、プライベートの時間がなくなってしまう。そうなると自分自身の成長はどうなるのか、と感じてしまうことがあるんですよね。そんな点にもすごく共感しました」

 

 

「そんな時、友達とよく話すのは“まず楽しもう!”ということ。常に“役を大事する”ことに没頭してしまうのですが、友達から“役と同時に、土屋太鳳自身も大事にしてね。その時間を愛してあげて”と言われて、なるほど、そうだよな、と気づかされました」

 

冷蔵庫の中のものだけで、サッとお料理できるのが夢です!

 

――本当に作品が目白押しで多忙の土屋さんですが、この夏“せめて、これだけはやりたい”と思っていることはありますか?

浴衣が着たいなぁ。夏祭りに行くのは難しいかもしれないけれど、浴衣が着たいです! あと、のんびりと、お酒に合わせたお料理なんかをしてみたいです。レパートリーはとても少ないのですが、お料理は好きなんです。ワインにあったおつまみみたいなものを、冷蔵庫を開けてあった材料だけで、ササッと作れちゃう、ということが出来るようになるのが夢なんです(笑)」

 

ここまで嫌味のない、素直で可愛い女の子って珍しい! そんな土屋さんが“夢に向かってまっしぐら”なフェリシーに、溢れる思いを声に乗せた「フェリシーと夢のトウシューズ」。踊れない筆者でさえ、思わず何度も体を動かしたくなってしまうほど、躍動感に満ちたアニメーションです。エッフェル塔を建設中(その状況が実に上手く物語に使われています!)のパリの風景を見られるのも、お得感たっぷりですよ。

色んな楽しみを、ぜひ劇場で体感し、パワーをもらってください!

 

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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