平時のうちから備えを見直して
またしても自然災害のため痛ましい被害が起きてしまいました。九州北部を襲った豪雨で、家族や住まいを失ってしまった皆様にはお見舞いを申し上げる言葉しかありません。毎年のように起きる地震そして台風や集中豪雨と、自然災害についての記事をここ数年定例のように書かざるを得ないことが本当に残念です。
なお、避難のさい荷物を持ち出す暇がなかった人も多いと思います。当座の資金として現金は貴重ですから、通帳やカードを失った時の預金の引き出しについて過去の例を見てみましょう。昨年の熊本地震の際、財務省と日本銀行が金融機関に要請した「平成28年熊本県熊本地方の地震に係る災害に対する金融上の措置について」にはこうあります。
- 預金証書、通帳を紛失した場合でも、災害被災者の被災状況等を踏まえた確認方法をもって預金者であることを確認して払戻しに応ずること。
- 届出の印鑑のない場合には、拇印にて応ずること。
- 事情によっては、定期預金、定期積金等の期限前払戻しに応ずること。(以下略)なお、東日本大震災の際には、預金者本人が死亡または行方不明だった場合も親や配偶者、子供に限り、面談の上「預金者本人の氏名・生年月日等」「預金者との関係」などの確認ができれば払い戻しに応じるという措置をとったようです。ただ、預金者が安否不明で、どの銀行に口座があるかわからない場合も想定できるので、以下のようなものを非常持ち出し袋に入れておくといいでしょう。
- 家族の預金口座リスト
- 保険会社の連絡先リストおよび保険証券のコピー
- 家族の身分証明書のコピー(運転免許証、健康保険証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカードなど)
- 家族で写っている写真
- 認め印
しかし、実際の災害時には避難がやっとで、財布と携帯くらいしか持ち出せなかったという事態も考えられるので、このような書類を事前に携帯で撮影し、そのデータをクラウド保存しておくというのも方法の一つです。たとえスマホを失っても、クラウドにあれば他のスマホやPCなどからアクセスが可能ですから。
災害に遭われた方の口から「何十年もここに住んでいて初めて」という言葉を聞くたびに、自然災害のリスクはどこにいてももう低くはないのだと感じさせられます。台風シーズンの到来はこれから、平時のうちからの備えを見直しておきたいものです。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。