「イイホシさんと鹿児島さん、二人がコラボした器があったら、夢みたい」。そんなLEEマルシェの提案から生まれた「floro(フローロ)」シリーズ。イイホシさんがベースの器をデザインし、鹿児島さんが図案を施し、有田焼の職人さんたちが素晴らしい技術力でバックアップ。LEEマルシェ10周年に合わせて別注色もご用意くださったお二人に、「floro」誕生までを伺いました。
イイホシ 私と鹿児島さん、お互いにいろんなところから噂は伺っていたんですけれど、直接お会いできたのって実はほんの数年前なんですよね。
鹿児島 僕はイイホシさんのお仕事を、ずっと注目していましたよ。ものすごく質の高い仕事をしていらっしゃるけど、単に自分の美意識を満たすためというよりは、器を手に取る人のことや、制作する職人さん、販売をする小売店さんなど、ものにかかわるすべての人が幸せになることを深く考えていて、どこにもしわ寄せがないような作り方をしている。そういう姿勢に、僕は勝手に尊敬とシンパシーを感じていたんです。
イイホシ 鹿児島さんの作品の根底にあるのもやはり、器を使ってくださる方へのサービス精神ですよね。手にした人をハッピーにさせてくれる力をすごく感じるんです。それは私も目指すところで、使い手の方の生活が少しでも楽しくなるようにと、いつも考えています。
鹿児島 僕は「アーティストですよね?」と言われると、何だかムズムズしてしまって。社会にたくさんある仕事の中のひとつを、ただ誠意を込めてやっているだけだと考えているんです。
イイホシ でも使い手の方が意識をしてなくても、アートと暮らしの境界を行ったり来たりさせていて、気づかないうちにすごく豊かなものを手渡していると思います。それを鹿児島さんは陰で身を粉にして努力しているんだけど、表はいつもスマートで楽しそうで、それが最初私には驚異的でした(笑)。
鹿児島 そういう考えが一致していたせいか、このプロジェクトをやることが決定してからは、気持ち的には何のストレスもなく、スムーズに進みましたよね。ただし実際の制作過程は、なかなか苦労しましたが(笑)。
イイホシ 今年創業400年を迎える佐賀県・有田焼の職人さんたちのお力を借りました。私の「ボンボヤージュ」シリーズなどを手掛けてくださっているチームなのですが、長い歴史に裏づけされた高い技術があり、プロフェッショナルな役割分担がある。そんな方々が一丸となって「新しいことをやってみよう」と、取り組んでくださったので、個人の作家だったら到底不可能な、レベルの高いものを作ることができたのですが……。
鹿児島 器というのは実際に焼いてみないとわからないことが多いんですよね。焼成すると器が収縮してしまうから、表の絵柄にも影響が出てしまう。だから生地の厚みや形状を検証し、型の改良を何度も重ねて。窯焼きのスケジュールもあるから、時間との戦いもあって。型に図案を彫る作業も現地で行ったんですが、事前に描いたデザインラフも持参したけど、実際の器の原型を前にすると、「やっぱり違う!」となって、フリーハンドで描き直すことにしたり(笑)。
イイホシ 色出しに関しても、何度もやりとりをしました。同じ土、同じ釉薬、同じ温度で焼いたとしても、違う窯で焼けば、色も変わってしまうんですよね。
鹿児島 でもそのかいあって、本当に満足できるものに仕上がったと思います。イイホシさんとはもちろん、職人さんとの仕事はすごく貴重な体験でした。
イイホシ 空間にこの器がひとつあるだけで日常が少し特別になる、そんなふうに感じてもらえたらうれしく思います。
鹿児島 これからこのシリーズも、少しずつ色や型を増やせるといいですよね。
イイホシ これからどんな展開になっていくか、私もとっても楽しみです
シリーズ名の「フローロ」は国際言語・エスペラント語で「花」を意味する言葉。国外でも活躍している二人ならではのネーミング。やわらかでありながらすっきりとしたフォルムの器に、楽しげな花々や魚などがレリーフされたデザイン。色はベーシックなジャスミンホワイト、深みのあるセージブルー、鮮やかなミモザイエロー(LEE別注色)、ニュアンスのあるローズグレー(LEE別注色)の4色展開。「フローロ」シリーズらしく、色名に花の名があしらわれているのに、またときめきます。サイズはS・M・Lの3 サイズ。
プレートM(18.8㎝×19.5㎝×高さ2.7㎝)¥6000
イイホシユミコ/京都嵯峨芸術大学卒業後、「ユミコ イイホシ ポーセリン」の名前で作品を発表。2007年よりプロダクトシリーズを手掛け、 2008年からは海外の展示会にも出品を開始。2012年に東京・世田谷にアトリエを構え、2014年には原宿にショールーム兼店舗をオープン。
鹿児島 睦/美術大学卒業後、インテリアショップのディスプレイやマネージメントを経て、陶芸作家に。現在は福岡市内にあるアトリエで、陶器だけでなくファブリック、版画なども手掛ける。ロサンゼルス、台北、ロンドンなど海外でも個展を開催し、世界中にファンを持つ。
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