今月の注目映画情報をお届け!
【10月のおすすめ映画】西川美和監督『わたしの知らない子どもたち』綾瀬はるか主演・日本初の“ハラスメント裁判”『ファーストボイス』他2本
2026.10.15
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折田千鶴子さん
映画ライター
育ちの悪いベランダのピーマンをタープの下から出してみたら、実がなるなる! 太陽の威力を実感。
『わたしの知らない子どもたち』

子どもたちのまっすぐで強い眼差しが見つめる未来は――
『ゆれる』(’06 年)などの初期作から前作『すばらしき世界』(’21 年)に至るまで、常に新たな驚きと喜びをもたらしてきた西川美和監督。今を生きる人間の性(さが)や業をユーモラスに描く傑作揃いだが、7作目となる本作で〝戦争〟を扱うと聞いて驚いた。どの角度から、戦争の何を描くのか。果たして本作は、戦争がもたらしたもの――人生を根底から覆された市井の人々、特に〝国の宝〟と言われながら守られなかった12万人もの実在した〝名もなき子どもたち〟の運命に真正面から向き合う。結論から述べてしまうが、まさに「没入」という言葉どおり、繰り広げられる物語に目を見開いたまま、ただ圧倒される。
音楽家の父(竹野内豊)をもち、何不自由なく暮らしていた12歳の琴子(小八重葵美)は、疎開先の学校で軍国主義教育に忠実な教師・曽根(二階堂ふみ)と出会う。やがて終戦となるが、家族も家も失った琴子は行く当てもなく、同じ境遇の子どもたちをまねて路上で暮らし始める。しかし、女性であるがゆえに性的搾取の危機を感じた琴子は、髪を短く切り〝少年〟として生きることを選ぶ。一方、曽根もまた敗戦によって信念も立場も失い、乳飲み子を抱えてひとり生きることに苦闘していた。
戦後、路上に放り出された子どもたちの存在は、例えば朝ドラ「虎に翼」でも描かれたように多くの人が知っている。けれど親や先生にも物おじしない、ちょっと生意気で利発な琴子が突如すべてを失う姿に言葉を失う。鋭い勘や防衛本能で少女であることを捨てる決断、持ち前の機転や負けん気で少年グループの一員となるくだりなど、ハラハラしたり胸をなでおろしたり、とにかく気持ちが忙しい。悪事に手を染めながらも、居場所を得てワイワイ生き抜く彼らのしたたかさは楽しいし、仲間意識や友情、最年少の少年を守ろうとする愛や慈しみに心がなごむ。手先として使う目的があるにせよ、少年たちに目をかけるヤクザ(岡田准一)の存在にも心救われる。だが日本が急激に復興を遂げていく中、子どもたちを取り巻く状況も刻々と変化し、ついに少年グループは捕まり――。
大人だって余裕がなく、皆が傷や痛みを抱えていた。だからこそ、ささやかでも手を差し伸べる人々――
役所広司と田中裕子が演じる老夫婦の温かさがジワジワ胸にしみる。琴子役の小八重葵美をはじめ、子どもたちのまっすぐで澄んだ瞳の光は強く、皆素晴らしい。だが琴子はもちろんのこと、仲間も皆いつまでも〝少年〟のままではいられない。現実を受け入れ、生きる道を選ぶ切なさにはやるせなさも漂う。あらゆる感情に訴えかけ、終始いろんな思いや考えがグルグル巡り続ける、西川美和の渾身作。しかも今、戦争のみならず予想外の事象や出来事で世界がひっくり返り、揺れている。そんな先が見えない今だからこそ、あらためて子どもたちの未来を第一に考える世界でありたい。本作は「明日はわが身」の想像力をかき集め、寄り添う大切さと力を観る者に呼び起こす。
10月16日より全国ロードショー
『ファーストボイス』

日本初の“ハラスメント裁判”に着想。その行方にハラハラ&共感!
バブル経済絶頂期の1989年。困った人を放っておけない弁護士、朝日道子(綾瀬はるか)のもとに、職場で嫌がらせを受けたうえに辞めさせられた女性が、会社と上司を訴えたいと訪ねてくる。前例のない案件に周囲は止めるが、朝日は「この裁判は必ず未来につながる」と引き受ける。実際に争われた〝ハラスメント裁判〞に着想を得て、当時の日本の情勢やムードを描き込みながら、それまでの思い込みや常識や法律をも変えていく姿を活写した痛快リーガルエンターテインメント。「100%負ける」と言われた裁判を、いかに彼女たちは闘い抜いたのか。働く女性は〝あるある〞と熱くなること必至!
全国ロードショー中
『Blue Heron/ブルーヘロン』

どんなに考えても理解しきれない
大切な人との日々と記憶をたどる旅
’90年代の後半の夏、8歳の少女サーシャは両親と3人の兄とカナダのバンクーバー島に移り住む。自然豊かな新天地で、サーシャは自分の居場所を見つけていく。けれど一番上の兄は問題を抱え、挙動不審な言動を繰り返し、手を焼く両親は困難な選択を迫られる。20年後、映画監督になったサーシャは「あのとき、兄は何を思っていたのか?」とカメラを手に思いを馳せる——。過去と現在の交差、ノンフィクション(的展開)が流れ込む瞬間、どんなに欲しても届かない心の距離、一家の心の傷や痛みにつと胸を突かれる。トロント国際映画祭で受賞のほか各国の映画祭や評論サイトでも絶賛。
10月23日より全国順次公開
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配信 CONTENTS
『徹子の気まぐれTV』

若々しいどころか可愛くておもしろすぎる!
誰もが知る黒柳徹子さんが買い物(爆買い!)したり食事(爆食い!)したり、丸ごと素顔ともいえる姿を映し出す。「あら、それ可愛いじゃない? すっごくいいです」など口癖が移ってしまうほど、軽妙なトークに魅了される。デザイナーで気心の知れた田川啓二氏が、楽しげに仕える(笑)様子や絶妙な合いの手も愛とユーモアにあふれて楽しい。特にツボったのは、遠隔操作で爆買い&爆食いする「旧軽井沢銀座」の回。チラッと映っただけなのに徹子さんのオシャレの目利きぶりにも感嘆。無邪気で可愛くて永遠の理想像!
YouTubeにて配信中
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE11月号(10/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。
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