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ライター石井絵里がおすすめ!

【今月のおすすめ本】又吉直樹『生きとるわ』稲田俊輔『東西の味』他2編

2026.04.03

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石井絵里さん

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石井絵里さん

ライター

先日、肉離れに。「歩いているだけでなるのは珍しい」と医者に言われて、運動不足を実感してます。

『生きとるわ』
又吉直樹 ¥2200/文藝春秋

芸人・又吉直樹の最新長編小説は、笑いと依存が絡む濃密な世界!

『生きとるわ』又吉直樹 ¥2200/文藝春秋

私事ですが、先日、誕生日を迎えました。この日になるとLINEでメッセージをくれるのが、高校時代からの親友・Mちゃん。私もMちゃんの誕生日には、必ずLINEを送っています。お互い忙しくて、ここ何年かは会えてないけど、誕生日を祝い合うのは、10代から変わっていません。彼女からのメッセージを読むたびに「長い年月をともにしてきた友達って、ありがたいものだな〜」とほのぼのします。が、もしこの友情が、予想もしない方向へこじれていったら……? というのが、今月の一冊。

主人公の岡田は、大阪に住むアラフォーの男性。職業は会計士で、プライベートでは妻と二人暮らしと、世の中的には何不自由なく生きている大人。しかし岡田は、妻には秘密で500万円ものお金を、高校時代の親友・横井に貸しています。横井にお金を貸しているのは、同じく岡田の高校時代からの友人・大倉と広瀬も同じ。物語は阪神タイガースが優勝した夜に始まります。3人は消息不明だった横井と再会。怒る彼らに、横井は謝らず、話を受け流すばかり。一番高い金額を貸していた岡田は、今度こそ返してもらおうと、彼と連絡を取り続けるも、さらに翻弄されることに。そして、安定した生活が徐々に破滅していき——。

世の中に「善意を装った悪意」があるとしたら、横井はまさに、それを体現しているような人物。独特の愛嬌とユーモアで相手の心に入り込み、人をだましたりお金を奪う。でもなぜか周りは彼を憎みきれない。もはや友情ではなく、共依存的な関係が続く岡田と横井に「いい加減にしてくれ〜」と思うふしも。また主人公の岡田に対しても「そもそもこいつだって、本当に“いいやつ”なのか?」という疑問が……。善意と悪意、依存と執着といった重い感情が、静かに綴られていく長編小説。とはいえ、著者で芸人の又吉さんらしい、笑える部分が数多くあるのも読みどころ。最後までたどり着いたら、タイトル『生きとるわ』の意味を、噛みしめていただきたいです!

『東西の味』
稲田俊輔 ¥1870/集英社

『東西の味』稲田俊輔 ¥1870/集英社

鹿児島県で生まれ、関西で料理の道へ。その後名古屋を拠点に、東京をはじめ日本各地で食の経験を積み重ねる著者。今作ではうどんに餃子、お好み焼きからラーメンに至るまで、日本各地の地域や東西における食文化の差を、縦横無尽に解きほぐしてくれます。いつもの味つけや好みの食べ方、よく作るレシピなどが、実はその地域独自のものだったことに気づかされるかも。



『友だちは名探偵』
加藤 元 ¥1430/主婦の友社

『友だちは名探偵』加藤 元 ¥1430/主婦の友社

とわは、クラスの中でも浮いている小学6年生。仲よしの冴(さえ)は、成績も運動神経も抜群によいけど、やっぱり浮いている。そんな少女2人が遭遇する、ちょっと不思議な出来事――。とわ&冴コンビの姿を追いながら謎解きを楽しめる、小学生向けの連作ミステリ小説。2人の友情、そしてとわの生い立ちに感動や切なさを味わえる。親子で読んでみるのもおすすめ!

『5秒日記』
古賀及子 ¥1870/ホーム社

『5秒日記』古賀及子 ¥1870/ホーム社

1日の出来事をすべて書くのではなく、印象的だった5秒間に注目し、200文字で日記を書こうと思いついた著者。仕事のこと、スーパーで気づいたこと、ゲームやお菓子について、中学生の娘と高校生の息子との何気ないやり取り……。鮮やかに切り取られた5秒間は、読みごたえたっぷりの2年以上の記録に。「自分の日々を書きとめたい」と思う人にとっても参考になりそう。


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE4月号(3/6発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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