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KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、長年気になる存在で、ようやく手に入れた一脚について語ります。
file
33.
[椅子]Chair

Brand:Cassina
カッシーナ
Item:ZIG-ZAG
ジグザグ チェア
空間にあるだけ、目にするだけでうれしくなるほど美しいフォルム
私には憧れの椅子がいくつかありますが、実際に何脚かは幸運にも手に入れることができました。このジグザグ チェアも、そのひとつ。初めて実物を見たのは20年以上も前。いつか買おう、と思っているうちに時がたち……念願かなってわが家にやってきたのは、約3年前のことです。ぼやいてしまえば、「欲しい!」と思った頃から価格が倍以上になっていて、もっと早く決心すればよかったなと(笑)。
さて、そんな憧れのジグザグ チェア、何が素晴らしいかといえば、そのデザイン性に尽きます。4枚板を組み合わせるという、究極にシンプルな形。座面の下に支えがないのに安定していることにも驚きます。ちなみにボルトなどの金属は一切使われておらず、木を寸分の狂いなく切り、組み合わせることで構成されているというのも感動的。その組継ぎの部分を見るだけで、“職人技”好きの私は惚れ惚れしてしまいます。
座り心地に関しては、座面と背もたれが直角なのでゆったりというわけにはいきませんが、この椅子の一番の価値は、空間にあるだけでうれしくなる美しさ。横からの姿はもちろん、後ろから見ても前から見てもそれぞれに表情があります。キリッとした直線なので、空間にほどよく緊張感が生まれるのもいいんですね。
デザインは、トーマス・リートフェルト。彼の作品である「ユトレヒト ソファ」も愛用していますし、私は彼の生み出す美しいラインに抗いようもなく惹かれてしまうようです。

金属のジョイント類を使うことなく、4枚板の組継ぎと、座面下と底面に隅木で補強する手法で成立。「組継ぎの精密な、まるで木材同士が吸着しているような姿は、見るたびに感動します」(石井佳苗さん)

単に長方形の板を組み合わせているのではなく、脚部分の板は、ゆるやかにテーパーがかけられ台形になっている。「こういった細やかなこだわりこそ、ジグザグ チェアの佇まいが洗練されている理由ですよね。美しいチェリー材の質感がきわだつのも、そぎ落とした形状だからこそ」(石井佳苗さん)
Designer:
Gerrit Thomas Rietveld
Netherlands, 1934
ミニマルゆえに力強い存在感。その構造や組継ぎの精緻さにも圧倒されます

オランダ・ユトレヒトで生まれ、20世紀を代表する建築家の一人であるへリット・トーマス・リートフェルトが、1934年にデザイン。オランダの老舗デパートからの依頼で作られたものが原型とされている。ちなみに当時は技術的な問題で、座面と脚部がボルトで接合されていたという。現在のように木材のみを使用する形になったのは1970年代から。

Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2026年LEE4月号(3/6発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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