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【今月のおすすめ映画】『ナースコール』 世界の医療現場の“今”を映す深刻だがスリリングな90分!…他3本
2026.03.14
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折田千鶴子さん
映画ライター
愛猫の兄妹。妹が昨年、天国へ。元気な兄まで大怪我。驚異の回復で一安心ですが疲労困憊。
『ナースコール』

世界の医療現場の“今”を映す深刻だがスリリングな90分!
そんじょそこらのサスペンスよりハラハラし、そんじょそこらのドキュメンタリーよりリアルに〝現実〟を突きつける。ある看護師が過ごした一夜の出来事を、彼女の視点から映し出す。ただそれだけなのに、思わず身体が熱くなり、鼓動が速まる。人手不足と聞いてはいるが、これが今の医療現場なのか! スイスで大ヒットを記録し、ベルリン国際映画祭ほか多数の映画祭で絶賛された社会派ドラマにして、エンタメ・スリラーとしても極めて高い満足感を得られる、驚異の一作だ。
スイスの州立病院の外科病棟。遅番のシフトに入ったフロリアは、同僚や患者から信頼の厚い、誠実で献身的な看護師だ。人手不足が常態化した職場は、ただでさえ手いっぱいなのに、この日は3人チームの1人が病欠し、さらに過酷な状態に。2人で手分けして26人の入院患者を看(み)て回り、インターンの学生の指導も兼ねる。病室を訪ねるごとに各患者から要望やクレームを言い募られ、廊下でも待機中の救急患者の家族から対応を迫られ、他の病棟からの電話もひっきりなしにかかってくる。さらにナースコールも鳴り続け、フロリアは必死で対応し続ける。ついに極限状態で混乱する中、あらぬミスを犯してしまう。すぐに対処し事なきを得たが、打ちひしがれたフロリアを、さらに追い詰める事態が起き……。
まさに八面六臂の活躍とはこのことかと思うような、雨あられのごとく降りかかる要望を次々とさばいていく姿に、目を丸くして尊敬の念を抱かずにいられない。その記憶力や冷静さ、点滴や投薬をテキパキこなしていく技術に見惚れてしまう。しかも患者たちの病状や精神状態やパーソナリティは十人十色。本当につらそうな人、不安でおびえる人、攻撃的な人、騒ぎ出す人、さらに言葉が通じない外国人まで。中には「そんな奴、後回しにすればいいのに。やってられるか!」と、観ているこっちが頭に血が上り、投げ出したくなる輩も。けれどフロリアは聞き流し、患者たちの不安や怒りをなだめ、落ち着かせようと歌まで歌う。そんな彼女が次第にキャパオーバーになっていく様子を、当然だと見つめながら鼓動はさらに加速する。果たして夜は無事に明けるのか。
あらためてその実態に愕然とするが、誰もが無関係でいられないのが病院や医療だ。フロリアの懇願を振り切って帰る医師も、看護師を罵倒する患者も、実はいろんな事情を抱え、皆ギリギリ状態であることも描かれる。だから感情が揺さぶられる。フロリアらの奮闘でどうにか崩壊寸前で踏み留まっているが、もはや予断は許されない。休憩も取れず動き続けるフロリアを、一瞬たりとも目を逸らせない緊迫感を身にまとって演じるのは、『ありふれた教室』のレオニー・ベネシュ。途切れぬ臨場感を生み出す、演出やカメラも素晴らしい。生死が流動する病院で繰り広げられる、ヒューマン・スリラーともいうべき傑作を、見逃してはならない。
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて公開中。
『アメリと雨の物語』

Puffin Pictures, 22D Music
日本人の感性に響くみずみずしさ! ベルギー人少女が主役のアニメーション
1960年代、外交官の父の赴任先・神戸で生まれたアメリは、長く無反応状態だったが2歳半で覚醒。好奇心旺盛で、無敵な子ども時代に突入する。見るもの、聞くものすべてが驚きと喜びの連続だ。大好きな家政婦のニシオさんから、自分の名前にピッタリの「雨(あめ)」という漢字を習ったアメリは、幸せな日々がずっと続くと思っていた。しかし3歳の誕生日、生活環境を変える大きな出来事が起こる。アメリの目に映る豊かな自然の美しさや神秘、世界の不思議に、目を見開かされ魅せられる。戦争の傷が残る背景、大人の事情や家族愛にも胸を打たれる。ニシオさんとの絆にも感涙!
3月20日より全国順次公開
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』

ティモシー・シャラメが最低男を熱演し、賞レースを席巻中!
1950年代、ニューヨーク。卓球選手としても活動している靴屋の店員マーティは、世界チャンピオンになって人生を一発逆転しようと、世界選手権出場を目論む。どうにか出場したものの、決勝で日本人選手に敗れる。諦め切れないマーティは、次の大会が開催される日本への遠征費用調達のため奔走するが――。麗しいルックスと口八丁を駆使して人々をだまくらかしながら、夢を叶えるため突進する行き当たりばったりの姿は、衝撃的なほど超デタラメ。そんな最低男を見事にシャラメが体現し、イヤなのに目が離せない磁力を放つ。当時を再現した日本の描写も必見!
3月13日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
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配信 CINEMA&DRAMA
『ハウス・オブ・ダイナマイト』

手に汗握るポリティカル・サスペンス
出所不明のミサイルがアメリカ本土に向けて発射される。着弾が迫るタイムリミットの中、米政府は各国に連絡を取りながら、どう対処すべきか混乱していく――。大統領はじめ軍や政府関係者が、使命感や家族への思いの間で揺れつつ奔走する姿から目が離せない。わけがわからず、叫び出したくなる彼らの焦燥が観る者にも伝播し、リアルな緊迫感に震撼する。『ハート・ロッカー』でオスカー監督となったキャスリン・ビグローが、〝今〞を鋭く照射した衝撃作。イドリス・エルバ、レベッカ・ファーガソンほか出演。
Netflix映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』独占配信中
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE4月号 (3/6発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。
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