椎名桔平さん『スペシャルズ』公開記念インタビュー
「佐久間君(Snow Man)や中本君(NCT)は、僕ら世代と体内リズム感がもはや違う!」殺し屋なのにダンス大会に出場!?【『スペシャルズ』椎名桔平さん】
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折田千鶴子
2026.03.04

椎名さんがダンディな殺し屋に!
どこか親しみと頼りがいを感じさせてくれる、ダンディな椎名桔平さん。年を重ねて最近、益々素敵さがレベルアップしている気がしませんか!? 飄々とした大人の余裕の風情が漂っているというか。というわけで長く機会をうかがっていた椎名さんに、遂に映画『スペシャルズ』でインタビュー致しました!

声や喋り方も素敵!益々ダンディな
椎名桔平
Kippei Shiina
1964年生まれ、三重県出身。86年、21歳の時に映画で俳優デビュー、キャリア40年に。『ヌードの夜』(93)で注目を浴び、様々な作品に出演して人気俳優に。代表作に、映画『GONIN』(95)、『金融腐蝕列島 呪縛』(99)、『化粧師』(02)、『クイール』(04)、『約三十の嘘』(04)、『アウトレイジ』(10)、『ワイルド7』(11)、『仕掛人・藤枝梅安 第2作』(23)ほか。ドラマに『春よ、来い』(94)、『Age,35 恋しくて』(96)、『永遠の仔』(00)、『コード・ブルー–ドクターヘリ救急救命-(10~)』シリーズほか多数。
個人的には、どうしても『アウトレイジ』の印象が強烈過ぎて、強面の役が多いイメージのある椎名さんですが……。
「どうやら、そういうイメージが強いらしいですね。色んな職業の色んな役を演じて来ましたが、なぜか任侠ヤクザものの印象が強いみたいで。さっきも取材で再会した佐久間(大介)君が、“初めて会った時は、ちょっと怖いイメージを持っていた”と言ってましたから。これも結構、コメディなんかもやって来たんですよ(笑)。まあイメージは皆さんそれぞれが自由に持つものですから、それで良しとしています」
でもだからこそ本作の“殺し屋”役は十八番というイメージが強かったんです。しかも小沢仁志さんともご一緒で、馴染みある顔合わせなのかな、と。
「いや、たまたまバーで顔を合わせたことはありますが、小沢さんとも初共演なんですよ。実は今回、ダンス大会に共に挑む他の4人(佐久間大介(Snow Man)、中本悠太(NCT)、青柳翔、小沢仁志)全員と、“初めまして”の初共演でした」
『スペシャルズ』ってこんな映画
風間組ナンバー2の熊城(椎名桔平)は、風間親分(六平直政)を日本一の組長にするため、裏社会のトップに君臨する本条(石橋蓮司)を襲撃するも、失敗。次こそは用心深い本条を確実に狙おうと、本条が溺愛する孫娘が出場する「ダンス大甲子園」での再襲撃を計画する。それには自分も大会に出場し、本条のスキを窺うしかない。熊代は、「過去にダンス経験がある」らしい殺し屋たち――児童養護施設で働く伝説の元殺し屋・ダイヤ(佐久間大介)ら4人を集め、5人チームを結成する。だが経験とは名ばかりで、実際には皆ダンスはズブの素人。悪戦苦闘する彼らに手を差し伸べたのは、児童養護施設のダンス少女・明香だった。明香の指導のもと5人はダンスの魅力に目覚め、本気でダンス大会に向けて情熱を燃やし始めるが……。
何度も吹き出しながら拝見しました。台本を読みながら、「ここは、こんなふうに演じたいな」というような、脳内に思い浮かんだシーンもあったのでは?
「それが今回、あまり浮かんで来なくて。というのも、自分1人のシーンなら想像しやすいのですが、本作は5人で色々なことに関わっていく物語。内田監督*がどんな風に撮って行くのかも想像できませんでしたし……」
*内田英治:『ミッドナイトスワン』『ナイトフラワー』などの監督

ダンスシーンなども想像できない感じでしたか?
「それこそ、ダンスなんてほぼ全くやったことのない人間ですから、そこは特に、どう演じようなんて前もって考える余裕がなかったですね。実際に撮影現場でどれくらい(の長さや分量を)踊るのか、1曲フルか一部分だけか、なども想像できなくて。長年の経験がある芝居部分やアクションに関しては、何が来ても慌てることはないのですが……」
本作の何が面白いって、椎名さん、小沢さん、青柳翔さんといった強面の殺し屋がダンスに悪戦苦闘する、という点です。
「それに加えて彼らには、裏社会に君臨するトップを暗殺するという大きな使命があるわけで、そういうものを抱えながらダンス大甲子園という世界に入っていく。しかも1人1人のキャラクターをしっかり出しながら、それぞれの思いをダンスに乗せて大会に出場するだなんて。それはもう、どういう映画になるのか想像の範疇を越えていたというか、初めて感じた世界観でしたよ」
悪戦苦闘したダンスレッスン
また、小学生の女の子に叱られながら必死で練習する姿が、思わず笑えます。その辺りのバランスや匙加減なども、かなり難しかったのでは?
「難しかったですね~。最初のステップから教えられ、“おじさん、何で出来ないの?”なんて聞かれてさ(笑)。でも当然ながらそういうシーンは、絶対に笑いを取りに行く意識を持ったらダメ。彼らが一生懸命やってるからこそ、傍から見ていると可笑しくなる、というのが正解ですから。その辺は、内田監督が演出でちゃんと作ってくれたと思います」

撮影に入るだいぶ前から、5人で練習されていたのですか?
「いや、前の2人(佐久間&中本)は練習する必要が全くない踊りのプロなので、とにかく後ろ3人(椎名、青柳、小沢)で、1ヶ月くらいダンスの稽古をしました。今の若い世代の人はダンスを気軽に始める方も少なくないですが、僕らの世代では“ダンスをやろう”なんて人はほぼいなかった。だから本当に一からのスタートで。しかも個性的なダンスなので3人とも出来なくて(笑)、お互いに“頑張ろうな、頑張ろうな”と励まし合いながら練習しましたよ」
結局、5人で合わせたのは、いつ頃でしたか?
「撮影の直前です。僕ら3人が必死で稽古をして全体を通してフリを覚えて、ようやくダメ出しが少なくなってきた頃合いに、前の2人が入ってきて合わせていく感じでした」
そうして完成した5人でのダンスシーンは、お見事でしたね!
「だって現場に入るまでに、相当頑張りましたから(笑)。さすがに本番では“上手くいけば全て通しでいけちゃうんじゃないの?”くらいには上達していましたよ。それまで僕ら3人は、稽古の後に帰宅した後も、習ったステップを復習したり、個人レッスンをしたり、それぞれ本当に頑張ったと思います(笑)。僕なんか行きつけのスナックでも、ダンスの得意なバイトの若者に、僕がつっかえてしまう箇所の踊り方や重心の移し方を教えてもらって、そこでも練習したりしてましたから」

そうして臨んだ本番で、5人でビシッと合わせて決まった時は、本当に気持ち良かったのでは?
「本当にその通り! だって実際に大勢のエキストラの皆さんが観ている前で、踊るなんて経験したことなかったですから。しかも一人ではなく5人みんなで合わせて踊るって、本当に気持ちいいもんだなと思いましたね。思わず僕もSnow Manに入れて欲しいなと思ったくらいでしたよ(笑)」
主演・佐久間大介さんの現場での居方
佐久間さんの座長ぶりは、いかがでしたか?
「彼は若いのに、本当にちゃんとしていますね。変な意味での“座長感”がなく、うまく年長者を立てながら、同時にとてもフレンドリーに5人が一体感を持てるように配慮してくれていました」
例えばどんな風に、現場で過ごされていたのでしょう?
「とにかく佐久間君は、明るくて元気(笑)。頭の回転が早くて、自ら色んな話題を提供してくれたり、とても気遣いのある人で。しかもネガティブな話題の振り方を全くせず、ちょっとした日常会話で5人を上手く回してくれる。みんなダンスで疲れているし、段々と話すこともなくなっていったりしましたが、そんな時にも口火を切るのは、やっぱり佐久間君。……あるいは小沢さん」

え、小沢さんですか(笑)?
「たまに小沢さんが、すごくどうでもいいことをパッと言うんですよ(笑)。そうすると必ず佐久間くんが乗っかって話題を広げてくれる。あれはもう、一種の才能だと思いましたね。僕なんて考えてから何かを言おうとして、パッと出なかったりするのですが、彼は誰かの言葉にパッと上手く反応するんですよ。そういう反射神経も本当にいいんでしょうね」
それがダンスにも通じるのかもしれないですね。
「ダンスも音楽もリズムが命じゃないですか。彼はとにかくリズム感が優れているというか、既に体内にリズムを持っているんですよ。自分でダンスを練習して思ったのは、僕らは決められたリズム通りにやるという目標を立て、それに向けて頑張ってきたわけです。でも佐久間君や中本君は、リズムの入り方からして僕らのそれとは少し違う。リズムに身体が入る瞬間が、僕らは“1&2”の“1”で入るんだけれど、2人は既に“1”の前から始まっていて、“1”で合わせて“2”に動きながら繋がっていくんですよ」

椎名さんが体感された、その指摘はとても興味深くて納得です!
「彼らはそれを意識してやっているわけではなく、自然と体がそうなっている。そのリズム感は、もはや僕らには絶対に無理。だから同じ振りを覚えて、みんなで合わせようとしながら踊っているけれど、やっぱり出来た映像を見ると、若干違うんです。とはいえ物語的には、踊りが出来なかった後ろ3人が、踊れるようになるというのが面白いわけですから、流れとしては見事に成立しているんです(笑)」
椎名さんが最近、感じていること
相変わらずダンディで素敵ですが、椎名さんが今の年齢になったからこそ楽しいと実感するもの、そうした時間はありますか。

「一番の変化は、“ゆっくり”ということが不安じゃなくなってきたことですね。休みの日に、家でゆっくり時間を過ごす。昼間に2~3時間ボ~っとしたりしてさ(笑)。昔のように、“もっと俺は何かをしなければいけないのではないか”という焦りが全くなくなってきましたね。“ま、これでいいんじゃない?”という感覚になったというか。
若い時は仕事もたくさんやらないと気が済まなくて、詰め込もうとしちゃっていたんですね。そうしないと、何か不安だった時期もありました。でも今は“楽で良くない?”という感覚があり、それが気持ちの余裕にも繋がっている気がします。だから、あまり急ぐことがなくなりました。きっと、こうしてお爺ちゃんになっていくんだろうな(笑)」
焦りが消えてゆとりが生まれるって、年を重ねることが楽しみに思えて嬉しいです。
「焦りや何かに対する強い欲求が、年とともに段々と薄まっていく。それは、色んなことを経験してくる中で、自分の人生に必要かどうかが自然に見極められていくってことなのかなと思います。若い頃は、こういうことも出来るんじゃないか、ああいうこともやってみたいという、幅を広げることばかりに意識が向いていたと思うんですよ。それは役に対する欲求にも重なる気がします。

例えば医者の役だ、警官の役だというと、色々と調べたり、その職業の人に会ってみたりしていました。でも今は色んなものが経験値としてあるので、新鮮味を感じることはない反面、専門や役職によっても別のキャラクターが出来ていくものだと感じている。いただくキャラクターは一期一会ですし、知らず知らずのうちに自分自身も変化しているので、そこにまた違った新鮮味をどう入れていくかが今は勝負というか。そして僕は今の自分が、これまでで最も楽しいという感覚でやっていますね」
つまり、たくさん引き出しがあるから、状況に応じて開けて取り出して、ひょひょっとアレンジを加える感じですか?
「そう簡単に“ひょひょっ”とはいきませんが(笑)、でも正解は1つだけではなく、いくつかあるということも段々と分かって来るわけです。いろんな人の世界観があって、いろんな正解があると分かって来ると、ちょっと柔軟にものを考えられるようになる。そうすると、人として穏やかな方向に歩んでいける、という気がします。
そう言いながら、自分なんかまだまだだなと感じることもあって。というのも、僕より10歳以上も年長の先輩方が、全然元気に活躍されていますから。そういう先輩方を見ることは、本当に勉強になりますね。幸いにも僕らは定年のない職場なので、いろんな先輩方をこれからもずっと見ていられる楽しさもあるんですよ」

最後、LEEwebの読者世代にも、これからの人生が益々楽しみになるような、勇気をくれる“実感”を語ってくれた椎名さん。近くで聞いていると余計に、シニカルなようで笑いを含んでいるような、椎名さんの声音や喋り方が、とっても心地よかったです。上手い具合に笑いをまぶしながら深いことを語ってくれるのは、大人だからこその余裕と魅力だなと思わされました。
さて、映画『スペシャルズ』で登場する楽曲は、「センチメンタル・ジャーニー」、「フライディ・チャイナタウン」、「ふられ気分でRock’n Roll」、「EZ DO DANCE」など、80、90年代を彩った懐かしの名曲たち。それらに乗って、どんな踊りが飛び出すのかも、観てのお楽しみです。 是非、劇場で大いに笑いながら、彼ら“殺し屋”たちの奮闘にエールを送ってください!
『スペシャルズ』
3月6日(金)よりロードショー

2026年/日本/111分/配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
©2026『スペシャルズ 』フィルムパートナーズ
原案・脚本・監督:内田英治
出演:佐久間大介(Snow Man)、椎名桔平、中本悠太(NCT)、青柳翔、小沢仁志
Staff Credit
撮影/菅原有希子
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。
















