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今月の注目映画情報をお届け!

【今月のおすすめ映画】『レンタル・ファミリー』 『木挽町のあだ討ち』『私のすべて』…他

2026.02.12

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今月の注目映画情報をお届け!

イラスト 折田千鶴子さん

Navigator

折田千鶴子さん

映画ライター

お正月明けすぐ、息子のボート部の応援で久々に大阪へ。ついでに観光を満喫し、正月ボケも解消!

『レンタル・ファミリー』

『レンタル・ファミリー』
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

嘘から出たまことでも思いは本物
優しさと共感に包まれ癒される

荒唐無稽なようでいて、監督自身の綿密なリサーチに基づいた、リアルな日本の姿がここにある。確かにこれまでも小説や映画で、結婚式や葬式に代理出席する“レンタル家族”が描かれたことはあった。だが、そんなテーマにして、この感動は何? ハリウッドでいくつものプロジェクトを抱える日本人監督HIKARI(『37セカンズ』、ドラマ『BEEF/ビーフ』)だからこその視点や気づき、絶妙な距離感でもって、そこに愛と願いと問題意識を注ぎ得たのだろう。すでに公開された全米では、週末興収で5位に食い込む大ヒット。今年の賞レースにも絡みそうな注目作だ。

日本を拠点に活動するアメリカ人俳優のフィリップは、かつて歯磨き粉のCMで人気を博したものの、今やすっかり忘れられた存在。細々と俳優業を続ける彼に、ある日、おかしな仕事が舞い込む。狐につままれたように葬式に参列し、嘆き悲しんで見せたものの、俳優としての誇りや倫理観から、次の仕事を断ろうとする。しかしレンタルファミリー社の社長に押し切られ、迷いながらも引き受けることに。偽の新郎役、小学校受験を控える少女の父親役、あるいは著名な作家に話を聞く記者役を。依頼者や対象者と会って役を演じるうちに、フィリップは彼らの人生に深くかかわり始める——。

おもしろいのは、依頼をしてきた家族以上に、フィリップが当の対象者の気持ちや希望を感じ取り、信頼と情で結ばれていくこと。それは彼自身の人のよさゆえでもあるし、適度な距離感や客観性ゆえでもあろう。同時にプロとしては、一線を越えたルール違反とも言え、依頼者は「話が違う」と怒り出す。嫉妬と焦燥にかられながら。そんな気持ちも人間だもの、よくわかる。また対象者との間に「信頼」が生まれると、フィリップ自身にも役を演じている=相手をだましている後ろめたさや、バレたらどうしようという恐怖がまとわりつく。とりわけ、自分を本物の父親と信じる少女に対しては。それがわれわれをハラハラさせ、目をくぎづけにする。案の定、それぞれのケースは思いも寄らぬほうへ走り出し、想像を超えた展開や彼らの人生を、私たちは驚きをもって覗き見ることになる。

一方で、レンタル会社の社長や社員たちが、なぜこの職業に就いたのかにまつわるエピソードには、現代社会の乾いた人間関係、孤独が浮かび上がる。それが怖く、痛い。監督によると“人をレンタルする”産業は、対面で話すことが苦手で、セラピーが根付かない日本ならではという。それも真実を突いているが、求めながらもうまく人とつながれず孤独に襲われるのは、世界的・普遍的な話だろう。だから“嘘から出たまこと”のごとく、フィリップが紡ぐ心の触れ合いが、誰しもの心の深いところに届く。『ザ・ホエール』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した、ブレンダン・フレイザーの佇まいやしみ出す優しさが白眉。ユーモアとシリアスのバランス、現実と非現実が混じり合うような世界観も心くすぐる!

2月27日より全国ロードショー

公式サイト

『木挽町のあだ討ち』

『木挽町のあだ討ち』
©2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

武士の誇りと正義感、義理と人情
スリルと感動の江戸ミステリー

江戸時代、雪の晩。歌舞伎小屋・森田座の近くで、菊之助(長尾謙杜)という若侍が亡き父の仇討ちを果たす。芝居帰りの大勢の目撃者によって、事件は美談として語られる。しかし1年半後、菊之助の縁者という田舎侍(柄本佑)が当の仇討ちの顛末を知りたいと芝居小屋を訪ね、戯作者(渡辺謙)をはじめ現場に居合わせた関係者らに聞き込みを始める。関係各所で語られるエピソードが次第につながり始め、やがて霧が晴れるように真実が明らかに。飄々と人懐こい田舎侍の醸すユーモア、スリリングな展開、真実に秘められた想いに心ひかれる! 永井紗耶子の直木賞受賞作を源孝志監督が映画化。

2月27日より公開

公式サイト



『私のすべて』

『私のすべて』
©2024 L.F.P.-LES FILMS PELLÉAS/FRANCE 3 CINEMA

愛ゆえの葛藤と痛み、そして解放。母と息子の親離れ・子離れ物語

シングルマザーのモナは、発達に障がいのある息子ジョエルをひとりで育ててきた。ある日、30歳のジョエルと同じ障がい者のための職業作業所で働くオセアンが、彼の子どもを妊娠する。モナは動揺、オセアンの両親は大反対。しかし当の2人は結婚、出産を強く望み……。人生を息子に捧げてきたモナが覚える怒りや不安や迷い、成長の実感、ある種の解放感など、あらゆる感情がない交ぜになる様子(時々、超エキセントリックだが)に、どの瞬間も小さな驚きと共感を同時に覚えずにいられない。ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門オーサーズ・アンダー40賞最優秀監督賞ほか受賞。

2月13日より全国順次公開

公式サイト

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配信 CINEMA&DRAMA

『チェスナットマン』

『チェスナットマン』

続編配信決定! 背すじが凍る北欧ノワール

コペンハーゲンで、手首を切断された女性の遺体が発見される。ほどなく同様の殺人事件が勃発。どちらの現場にも、栗の実で作られた小さな人形が置かれ、その人形には誘拐、殺害されたはずの現大臣の幼い娘の指紋が残されていた。さらに別の女性にも魔の手が伸び……。捜査に当たる刑事コンビの確執とそれぞれの過去、大臣の娘の誘拐事件の真相、連続猟奇殺人捜査の行方、栗の人形の意味、絡む政治的背景などが、北欧らしいひんやり湿った空気の中で少しずつ紐解かれていく。ゾクッと魅せられる! 全6話。

Netflixシリーズ「チェスナットマン」独占配信中

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イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE3月号(2/6発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。

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