私のウェルネスを探して/高妍さんインタビュー後編
【高妍さん】新連載に向けて準備中。漫画を描くときは、いつも新しいチャレンジをし続けたい
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LEE編集部
2025.12.28

引き続き、高妍(ガオ・イェン)さんに話を聞きます。高さん取材は自宅で行われました。光がたっぷりと入る天井の高いデザイナーズマンションには、高さんの好きなものが散りばめられています。大好きなちいかわのグッズ、細野晴臣さんのレコード、ドライフラワーやぬいぐるみ、好きな作家の本や漫画が所狭しと並びます。「今の家は日本に来て2軒目の家。本当は外国の人は住めないマンションですが、あまりに気に入って大家さんに履歴書や作品を見せて直談判して入れたんです」(高さん)。きらきらした大きな目でうれしそうに話す姿に引き込まれます。
後半では、高さんが日本文化に慣れ親しんできた幼少期、好きなことを自由にさせてくれた両親の存在や趣味の料理について聞きます。人生初挑戦となった映画出演のエピソード、今後の漫画の構想についても教えてくれました。(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読む)
幼少期に見た日本のアニメ、日本語塾、沖縄留学で日本語習得
高さんのインタビューは日本語で行われました。高さんは大学3年生の時、沖縄の芸術大学に留学するために台湾で日本語塾に1年間通い、その後1年間沖縄で過ごしたことで日本語の基本を習得しました。

「大学3年の時、毎日学校に行かなくていい時期だったこともあり、日本人の先生しかいない日本語の塾に月曜から金曜まで毎日通って勉強しました。海外留学プログラムの一環として、外国語検定を受けなければなりません。留学先の授業も日本語で受けますし、学校でのやりとりも日本語なので、なるべく上手くなっていた方がいいと思って頑張りました」
日本語の簡単な挨拶は「幼少期から日本のアニメを見ていたのでそこから覚えました」と高さん。『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』に出てくるセリフや聞き覚えのある言葉がある上で勉強したので、とてもやりやすかったそうです。日本のアニメで特に感銘を受けたのは『鉄腕アトム』です。

「台湾では、日本で人気のあるテレビ番組が放送されていたりするんです。記憶の中で“この作品すごい!”と思ったのが『鉄腕アトム』。2000年代、ちょうど私が小学生の頃でしたが『鉄腕アトム』の新しいバージョンのアニメが放送されました。そこで手塚治虫を知って、『ブラックジャック』『火の鳥』の漫画を読み始めました。最初はアニメ、その後に漫画でしたね」
好きなことを自由にやれたのは両親に理解があったから
小学生の頃から絵を描くのが好きで、小学6年生からデジタル作画をスタートし、中学1年生の誕生日にペンタブレットをもらってからは、ペンタブレットで絵を描いてきました。好きなことを自由にやれたのは両親に理解があったからだといいます。

「アジアの国々、特に中華系の親はよく子どもに勉強をさせ、受験戦争も大変で“いい大学に入れなければ人生おしまい”みたいな考え方が強いですよね。医師、弁護士など立派な職業に就かないといけないみたいな古い考え方もありますが、私の家族は違っていました。母親は高校の美術科で勉強をしたり、おばあちゃんも絵を描くのが得意だったり、叔母2人も美術を学んでいました。趣味として描くこと楽しむことを知っていたので、私が美術の道を進みたいと言った時も反対されませんでした。むしろ支えてくれて、高校も美術系の学校を選んだら“いいんじゃない”と言ってくれて。ただ私立の学校で学費がちょっと高かったのですが、それも相談すると受け入れてくれて、大学も台北の芸術大学に進学することができました」
現在日本を拠点に活動する高さんですが、連載をしている時には両親から「頑張って」「体に気をつけて」とメッセージが届き、いつも応援してくれていたそうです。

「両親は私がどんなことをやっているかあまりよく知らないかもしれませんが、いつも応援してくれてとても励みになりました。台湾版の『隙間』が完成して“たくさん頑張ったよ”と渡したら、お父さんが一晩かけて漫画を読んでくれたらしくて。特に言葉はなかったのですが、朝ごはんを食べるときに“頑張ったね”と誇りを感じるような温かい表情で見てくれたのが嬉しくて、私も泣いてしまいました。私のやっていることを理解してくれているのが嬉しいんですよね。人とのつながりや人から助けてもらうことでいろいろな仕事ができるようになり、私は本当に幸運だなと思います」
読者からの声が、漫画を描くモチベーションになっている
高さんが漫画を描くモチベーションになっているのが、読者からの声。展示会やサイン会、トークイベントなどで会った方からの感想、声がエネルギーになっています。
「読者の方々は本当にすごいなと感じます。コマひとつひとつを丁寧に見て、背景の本棚に並んだ本、棚に置かれたレコード、本の装丁までしっかり見てくれるんです。私がこっそり入れていたエピソードやイラストにも気づいてくれて嬉しいんですよね。私が漫画を描きながら学んだことを同じように漫画を通じて学んでもらえたら嬉しいし、今まで知らなかったことを知れたりしてくれたら嬉しいです。漫画をきっかけに台湾や沖縄に行ったときに漫画の舞台になった場所を訪れたり、いつもとちょっと違う旅が楽しめたらいいなと思います。もちろんそんなことを考えずに、ただ楽しんでもらうのも嬉しいです」



趣味、気分転換で好きなことは料理。「得意料理はなく好きなものを適当に作っているだけ」と高さん。友人を呼んで振る舞ったというガパオライスの写真を見せてもらうと、色鮮やかで盛り付けや器もおしゃれ。センスの良さを感じます。
「台湾スタイルの前菜やソーセージ、唐揚げ、火鍋を作る時もあります。火鍋やソーセージは買ってきたものですが、お魚を焼いて食べたりも。最近すごく作りたかったのが、トマトと卵の炒め物。日本にあるトマトは台湾の品種と違って生で食べることが多いので酸味が控えめで甘みが強いですが、台湾のトマトは酸味がしっかりあって炒め物に合うんですよ。いつか料理教室にも通ってみたいです」と料理への愛も明かします。

「最初に料理が面白いと感じたのは化学みたいだったから。2つの調味料を合わせるとどんな味になるのか、さらに別の調味料を足すとどう変わるのか。いつも直感で料理をしていますが、計算できちんと作るとさらに美味しくなる魔法があるので、それを知りたいです。実は料理を真剣に勉強したいと思ったのは、映画『ポトフ 美食家と料理人』(トラン・アン・ユン監督/2023年)を観たから。真剣に料理を作る人の姿や様子、調理の音がとにかく美しくて。それがきっかけでもあります」
最近、映画に初出演。映画を作り手側から、演じる側から体験することは大きな刺激に
これからやりたいことを聞いてみると「そういえば新しいことに挑戦しましたよ」と映画に出演したエピソードを話してくれました。

「人生初、映画に出演しました。日本在住の台湾の蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督の『メイメイ』(2025年)という作品です。監督は東京藝術大学で映画の勉強をしていて、卒業制作として作った映画『走れない人の走り方』(2024年)の“イラストを描いてほしい”と依頼を受けたことをきっかけに、たまに会っておしゃべりする間柄でした。ある時いろいろな話をしていたら、監督がちょうど新しい映画のシナリオに悩んでいる時だったみたいで“高さんと話しているうちに悩みが解決して良いシナリオが書けそう”と言ってくれ、“高さんみたいな人が登場人物にいたらこの作品の1本の柱になるんじゃないか”と台湾の漫画家・緑(みどり)を新たに登場人物に加えたんだとか。それで“ダメ元ですが出演してくれますか?”と声をかけてくれて、ちょうど連載が落ち着いている時でロケ地も近かったので出演させてもらうことになりました」
いつも観ている映画を作り手側から、演じる側から体験することは大きな刺激になったと言います。

「役にセリフがあったのでそれを覚えて読み上げていたのですが、監督から“高さんのセリフにどこか違和感がある。たぶんもう脚本を読んでいて相手が次に何を言うのか知っているから、相手の言葉を聞いていなくて自分が言うタイミングを待っているだけなんじゃないか”と言われ、ハッとしました。ただ相手の言葉を聞いて反応するだけじゃなくて、言葉の内容を聞く、意味を考えて反応すること。そうすることで演じることが変わるということでした。ずっと漫画を描くのは映画を作るのに似ているような気もしていて、1本の映画を作るのはどんな気持ちだろうと思っていましたが、実際に映画制作に関わったことで今までにない経験ができて感動しました。漫画の表現にも良い影響があり、進化につながるんじゃないかと思います」
新連載に向けて準備中。いつも新しいチャレンジをし続けたい
現在は2026年にスタートする新連載に向けて準備中。これまでは高さんの体験を元にした話が中心でしたが、次の作品は少し方向性が変わるようです。

「『緑の歌 -収集群風-』は連載1年前にネームを書き溜め、連載時はペン入れだけをするやり方で進めましたが、『隙間』はペン入れとネームを書くのを同時にやりました。今回はまた少しやり方を変えて、担当編集さんと打ち合わせをしながらフィクションの要素を今までよりも強めるような作り方にしたいんです。物語を一緒に考えて形にしていく。信頼できる編集さんと一緒に作りたいという思いが強くなっています。漫画を描くときはいつも新しいチャレンジをし続けたいんです。ほかにも、まだ構想段階ですが『緑の歌 -収集群風-』『隙間』を含めた青春三部作みたいな感じで、三作目にあたる別のアイデアもあります。ぜひ楽しみにしていてください」
My wellness journey
高妍さんに聞きました
心のウェルネスのためにしていること
「料理をすることです。キッチンでコーヒーを淹れたり、野菜を洗ってご飯を作っている時が一番リラックスできます。いつも漫画のことや物語のことを考えているの頭が休まらないのですが、料理をしている時は何も考えなくていいので気持ちが楽です」
体のウェルネスのためにしていること
「時間がある時に散歩をします。吉祥寺、三鷹、武蔵境。武蔵境に『武蔵野プレイス』という図書館があり、そこで本を読んだり、資料を探したりすることも。余裕がある時は体育館で走ったり、水泳をしたり、自転車に乗ったりもします。日本では近くに河川敷がないのであまり乗らないのですが、台湾にいた頃はリフレッシュするためによく河川敷で自転車に乗っていました」
インタビュー前編はこちらから読めます

Staff Credit
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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