「虫歯や歯周病だけでなく、口臭や歯茎の下がりも、実は正しく歯磨きできていないことが原因となっていることが多いんです」
そう教えてくれたのは、誠敬会クリニック会長の吉野敏明先生。
多くの人の口元悩みは、正しい歯磨き法を知ることで改善できるそう。
「大事なのは、歯の表面ではなく“間”を磨くこと。それにはブラシの当て方や動かし方などにコツがあります。そして、1日1回はデンタルフロスも必ずプラス。フロスは、歯ブラシでは入り込めない歯肉の根元に入り、プラークをこすり落とすことができる必要不可欠なアイテムです。効率よく磨けば、時間や回数を増やす必要はなし。口内の細菌が塊となり、歯垢の本体“バイオフィルム”に成長するには約24時間かかる。だから、1日1回でいいので、フロスまで使った完璧な歯磨きをすることから始めましょう」
意外と間違ってない? 100%歯磨きの前提4カ条
1.念入りな歯磨きは1日1回でOK
磨き残しのプラークが繁殖するのに要する時間は24時間。その間に1回でも完璧に磨けばOK。朝でも夜でも、時間のとれるときに。
2.磨くのは「歯の間」のみ!
実は歯の表面は、唾液や咀嚼で自然ときれいに。ブラシでもフロスでも、磨くべきはプラークがたまりやすい「歯と歯茎の間」と「歯と歯の間」!
3.磨く順は、一方通行・Uターン禁止
同じ場所ばかり磨いたり、場所が飛んだりすると磨き残しの原因に。1カ所を丁寧に磨き、次に移れば時間もかからず磨き残しもゼロ
4.「+デンタルフロス」が必須
歯の間、歯肉の中まできれいにできるのはフロスだけ。1日1回でいいので、フロスをプラスして初めて100%の歯磨きに。
注意!
食べる量でなく頻度が問題!
"ちょこちょこ食べ"が虫歯の大きな原因に
「甘いものに限らず、ひと口でも物を食べたり飲んだりすれば口内は酸性になり、歯が溶け始めます。45分ほどでpHは元に戻りますが、頻繁に飲み食いしていると歯が溶けやすい環境が続くことに。間食を含め、飲食は1日7回までに抑えましょう」
今日からはじめたい、歯磨きの正しい手順
まずは磨き残しの多い箇所と、全体の流れをチェック!
スタートは奥歯外側から。下の歯が終わったら、上の歯も同様に。デンタルフロスは1日1回でOK。
磨き残し多発箇所 ① 利き手側の犬歯
右利きの人は右の犬歯、左利きの人は左の犬歯が角度的に磨きにくい。順手、逆手と歯ブラシを持ち替えて丁寧に磨いて。
磨き残し多発箇所 ② 奥歯の奥側
いちばん奥の歯の奥側は、ブラシを縦に当てにくい場所。フロスやタフトブラシなど+αのグッズを活用し磨き残しをなくそう。
磨き残し多発箇所 ③ 前歯の裏側
歯ブラシを当てる角度に注意しないと磨きにくいのがここ。特に歯茎との境界部分は、ブラシの「つま先」で意識的に。
効率よく磨けば短時間でOK 歯ブラシ
1.ブラシ部分を流水で濡らしつつ、指で雑菌をこすり取る
歯ブラシ自体に雑菌がついていたら、口内に取り込んでしまうことに。水をかけるだけでなく、こすり洗いして清潔にリセット。
2.歯磨き粉の適正量はチューブ5㎜程度
歯磨き粉を出しすぎると泡立ちすぎたり、フッ素の取りすぎも心配。全部の歯を磨くのに、5㎜程度で十分な量です。
3.歯と歯茎の境界に「わき」を45度で当て歯2本ずつ"微振動"で磨く
歯ブラシを正しい角度で当てたら1秒キープ。毛先を優しく入れ込んでから、左右に小さくブラシを動かしながら、ごく軽い力で1 カ所を10~15秒磨きます。微振動は、電動歯ブラシの振動をイメージして。
4.奥歯の奥側と、前歯の内側は「つま先」を45度に当て1本ずつ
上図の矢印に沿って下の歯の周りを1周磨いていく。適宜、順手・逆手と向きを変えて。奥歯の奥側や、前歯の裏など磨きにくい部分は「つま先」を使って。歯ブラシを斜め45度に立てるようにして、縦方向にブラシを細かく動かしながら磨きます。
5.奥歯の溝に直角にブラシを当て、2本ずつ磨く
下の歯の周りを磨き終わったら、奥歯に対して直角にブラシを当て、1~2㎜の幅で細かく動かしながらざっと磨く。前歯など大きな歯の表面は、歯間や歯茎の境を磨いていくうちに自然と磨けているので、特に磨かなくても問題なし。続いて、上の歯も同様に。
6.ブクブク&ガラガラうがいを各15秒しっかり行い終了!
歯磨きをすると口の中にバクテリアがたまるので、頬とのど、両方でしっかりうがいをして吐き出して。
「歯ブラシ」選び方のポイントは?
- 毛は細くないほうが歯垢除去効果あり
- ヘッドの幅は人さし指の横幅、長さは人さし指の横幅の1.5倍
- 柄の形状は、"鉛筆持ち"しやすいものを選んで
「毛が細いと細かいところまで届きますが、毛先が長もちしません。歯並びが悪い場所だけ細い毛のもので、それ以外は普通の太さのほうが、歯の平面の歯垢除去効果が高いです。各メーカーがさまざまに工夫したものがあるので、迷ったら歯科医師や衛生士に相談を」
「歯磨き粉」選び方のポイントは?
- 「キシリトール」は安全性の高い殺菌成分
- 「発泡剤」が多いと、泡立ちで歯磨きが短時間になりがち
- 「研磨剤」は着色が気になる場合に有効
「かつては歯磨き粉のメインは研磨成分でしたが、最近は殺菌や薬効成分配合が増えました。フッ素は、適度に含まれていると虫歯予防に役立ちます。目的に応じて選んで。ただし殺菌作用があっても虫歯や歯周病にならないわけではないので、きちんとした歯磨きを怠らないこと」
歯肉の中を磨くため、1日1回はマスト! デンタルフロス
1.ひじまでの長さで切る
短すぎるとうまく扱えません。40㎝ほどが最適な長さ。フロスを手で持ち、ひじの先まで引っ張り出した長さが、おおよそ40㎝。
2.両手中指に巻いた後、親指と人さし指でつまみ1~2㎝の空間をつくって、そこで磨く
両手の中指にくるくると巻きつけ、中指の間が10~15㎝になるように調整。さらに親指と人さし指でつまんで。前歯は1~2㎝、奥歯は2~3㎝の隙間で。
3.歯間→歯肉の痛くないところまでゆっくり入れたら一度ストップ
歯の間にフロスを通したら、歯肉との間の、痛くないギリギリのところまでそっと入れる。歯肉溝の中に2~3㎜入ったところで、歯に巻きつけて2秒ほどストップ。すると、フロスの繊維が自然に広がります。
4.歯に巻くようにして引き上げる。反対側の歯にも巻きつけて同様に
フロスの繊維が広がった状態で、左右に少し動かしながら上に引き上げれば、歯の表面と歯間のプラークをしっかりこすり落とすことができます。上まで引き抜いたら、反対側に隣接している歯も同様に行って。
5.すべての「歯と歯の間」を磨いていく(場所ごとの手指の使い方は下図参照)
歯の位置や角度によって持ち方を変えていくと、細かく掃除ができます。糸がほつれたり傷んだら、中指に巻きつけた部分を繰り出し、きれいな部分の糸を使いながら進めて。
6.フロスの後にも、ブクブク&ガラガラうがいをしっかり
歯ブラシでは取りきれなかった汚れが出るので、ブラッシング後と同様に、しっかり口の中をゆすいで終了。
「デンタルフロス」選び方のポイントは?
- ホルダータイプより糸巻きタイプがおすすめ
- ワックス加工なしのほうが、プラークを除去しやすい
- 歯間が狭い人などは、ワックス付きが使いやすい
「プラークをこすり取るという目的からすると、ワックスがついていない、繊維が広がるものがベスト。ですが、歯間が狭くてフロスが入りにくい人はワックス付きでもOK。柄があるタイプは、歯に巻きつけて磨くことができないので、糸巻きタイプがベター」
「慣れてくれば、丁寧に正しく磨いても、ブラッシングとフロス合わせて5分程度で完了できるようになりますよ」(吉野先生)
フロスまで使って歯の間を磨く、完璧な手順をマスターして!
イラストレーション/かくたりかこ 取材・原文/遊佐信子
詳しくは2017年3/7発売LEE4月号に掲載しています。 [最新号] 試し読み・定期購読はこちら
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