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ライター石井絵里がおすすめ!

【今月のおすすめ本】森 絵都『デモクラシーのいろは』長谷川あかり『ワンパターン献立』他2編

2025.12.24

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今月の注目情報をお届け!

石井絵里さん

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石井絵里さん

ライター

東京・柴又で行われた『寅さんサミット』へ。山田洋次監督の生トークに目頭を熱くした休日でした。

『デモクラシーのいろは』
森 絵都 ¥2310/KADOKAWA

面倒だけど尊い“自由”の物語。濃いキャラの女性たちに注目!

『デモクラシーのいろは』森 絵都 ¥2310/KADOKAWA

数ある小説の中でも「いろんな性格の女性たち」の登場する物語が、大好きな私。キャラクターたちに親近感や憧れ、驚きなどの感情を投影させながら読みふけってしまいます。今月の1冊は、まさに濃いキャラの女性たちの姿を味わえる長編小説! 

時代は戦後の1946年。日本の民主化政策をGHQが推し進めていた頃。主人公はロサンゼルス生まれの日系2世で、通訳としてGHQで働く男性のリュウ。彼は上司から、4名の女性たちの元へ通い“民主主義のレッスン”の教師をしてほしいと命じられることに。場所は、この非公式な実験を発案した子爵夫人の邸宅。集められたのは10代後半〜20代前半の、生まれも育ちも違う女性たち。いやいや教師役を引き受けたリュウだったが、民主主義を教えながら、自らも学びを深めることに——。

身分の低い華族階級の出身で、上流の華族から差別されて育った美央子。まじめすぎる孝子。住む場所や食事が得られればいいと思っている吉乃と、授業にも共同生活にもなげやりなヤエ。彼女たちの共通項は2つ。家族を失っていること。個人として意見を持ち、自分の夢や理想に挑戦できる権利が与えられてこなかったことだった。

リュウが4人に伝えた「他人の決めた正しさを追うのではなく、自分の頭で考え、動くことが大事」というメッセージは、4人の行動を変えていく。同時に、読み手の私たちにも再確認を促されるものが。何事も誰かがルールを決めてくれたほうがラクだし、責任を取らなくて済むし……。だけどそうやって意思決定を人任せにすると、おもしろい日々にはならない。主体的に生きるって面倒だらけだが、尊いものだと思う。

彼女たちが解釈した“自分たちで考えたこと”には、リュウも仰天! これは民主主義? それとも……。炸裂する女性たちのパワーに、時にニヤニヤ、そして戸惑いながらも応援するのみ。堅いと思われがちなテーマながらも、没入しやすく希望に満ちた読後感を与えてくれる物語です。

『あなたの職場を憂鬱にする人たち』
舟木彩乃 ¥968/集英社インターナショナル

『あなたの職場を憂鬱にする人たち』舟木彩乃 ¥968/集英社インターナショナル

カウンセラーとして、約1万人以上の相談に対応してきた著者。上司、同僚、部下など、それぞれの立場から職場内に〝憂鬱〞をもたらしてくる人たちの例と、彼らの心のメカニズムを解説する。またストレス自体への知識や、自分の認知の仕方、憂鬱さをもたらす相手への対処法などもわかりやすい。職場はもちろん、人づきあい全般でのメンタルケアの味方になるはず。



『ギャグ漫画家の母が初めて中受伴走をしてみたら』
りえ太郎 ¥1540/幻冬舎

『ギャグ漫画家の母が初めて中受伴走をしてみたら』りえ太郎 ¥1540/幻冬舎

「鉄道研究部が充実した学校に通いたい!」という息子の意思を尊重し、中学受験のサポートを始めた著者。日々の塾通い、夏期講習、偏差値、学校選び……と、家族に次々と襲いかかる試練を、ユーモアを交えて描いたコミックエッセイ。中受を考えている人も、追い込まれている人も、笑えて役に立つ1冊!

『ワンパターン献立』
長谷川あかり ¥1650/ダイヤモンド社

『ワンパターン献立』長谷川あかり ¥1650/ダイヤモンド社

今月から本誌で始まった連載「長谷川あかりの私をつくったおいしい記憶」の、長谷川さんによる新しい切り口の料理本。毎日続く献立だからこその、作る時間や手間を最小限にする仕組みを教えてくれます。3つの食材で2品を作るスタイルで、栄養バランスもばっちり! 5週間分+副菜の実用的なレシピがまるっと詰め込まれ、毎日の暮らしをおいしくラクに回せます。


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE1・2月合併号(12/5発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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