がん年齢入口にいるLEE世代。正しい情報を集めることからはじめよう
30・40代で「がん」になったら?【仕事・子育て・お金】読者の“5大不安”にがん専門医が回答!
2025.12.16
LEE世代の私たちが今、考えたい
仕事や子育てをしながら、「がん」とどう向き合う?

仕事に子育てに忙しいLEE世代が、もしも「がん」になったら……? 実際にがんを経験した人へのインタビューから、専門ドクターが答えるがんの不安と悩みQ&Aまで、今から知っておきたい情報がここに。

LEE読者が抱えている「がん」への不安は?
30〜40代で「がん」になったという経験談を耳にすることも。もしも今自分が「がん」になったら、どんなことが不安? LEEメンバーとLEE100人隊にアンケートで聞きました。
入院を余儀なくされたら、子どもの成長を間近で見られないかも(LEE100人隊 No.044 ゆっPさん)
治療費はどれぐらいかかるのか? 治療費以外でも、例えば子どもの世話をお願いする場合にかかる金額は?(LEE100人隊 No.017 みもざさん)
夫と過ごせる時間が減ってしまうこと(LEEメンバー ichiさん)

自分自身よりも、まず子どものことが一番心配。まだ保育園に通う「ママ大好き」な子を、不安にさせたくない(LEEメンバー まままさん)
これから叶えたい夢に大きな影響が出そうなこと(LEE100人隊 No.023しーさん)
仕事をしながら治療できるのか不安。職場の人手も足りないし…(LEEメンバー めめさん)

知識編❶
もし「がん」になったら? 読者の“5大不安”に回答!
がんは誰もがかかる可能性がある病気。LEE世代が特に不安に感じがちな5つの事柄について、がん専門ドクターが解説します。

清水千佳子先生
がん総合診療センター長
乳腺・腫瘍内科診療科長
がん総合診療科長
乳腺・腫瘍内科医長
主に乳がんの術前・術後の薬物療法や進行再発患者の治療を担当する傍ら、チーム医療の体制づくり、若年層のがん治療支援にも尽力。
がん年齢入口にいるLEE世代。正しい情報を集めることから
「まず前提として、がんは加齢に伴う病気であり、若い人の罹患は100万人中2〜3人という少ない割合です。だから過剰に心配しなくて大丈夫ですが、LEE世代はいわゆる『がん年齢』に差しかかる年代ではあり、意識は持ってほしいと思います」と清水先生。
「がんになれば誰でも不安です。でも正しいことを知らなければ不安や心配が過剰に募ってしまうことも。だからがんとわかったら、まずは国立がん研究センターのサイト『がん情報サービス』や、学会が作成している患者さん用のガイドラインなど、信頼できるソースから正しい情報を得ることを心がけてほしいと思います。お金や妊娠出産など、LEE世代が不安に思うことについて、ある程度見通しが立つはずです。逆に注意してほしいのは、ネットにあるさまざまな体験談。同じがん種、ステージの人の話は参考になる一方、有効な治療法や副作用などは個人差が大きく、まさに千差万別。あくまで参考程度に受け止めましょう。
今はがん患者への支援もずいぶんと充実し、医療の進歩で予後もよくなりました。希望を持って乗り越えられる時代になったと言えるでしょう」
不安❶ 使える制度がいろいろ。自治体の窓口へGO
【お金】
「がん治療にかかる金額は、がん種や治療法や治療期間によってさまざま。平均いくらとは出せませんが、小さく見つかり手術だけで済むような場合は比較的安く済みます。一方、特定のがん細胞だけを攻撃する分子標的薬などは、保険適用であっても自己負担額が月に数万円。それが長期間続くとなると、負担はかなりの大きさです。今は制度が進んでいて、高額医療費制度(下記参照)をはじめ、さまざまなお金に関する制度があるので、罹患したらまず自治体に相談を。余裕があれば、がん保険に入っておくのも安心です」

自己負担額に上限を設ける
「高額医療費制度」って?
医療機関や薬局で支払った金額の1カ月の上限(年齢と所得に応じて決定)を超えた分が支給される。事前に「限度額適用認定証」の交付を受ければ窓口での負担は限度額のみ。窓口で全額を払って後から申請する方法も。
自分に合った制度が見つかる
「がん制度ドック」
がんの部位や治療状況など条件を入力すると、適用可能なお金の制度がすぐわかる。がん確定前でも検索可能。どのタイミングでどこに申請するかなども記載されている。
●がん制度ドック ganseido.com

不安❷ 会社員は勤務先の制度もよく確認を
【仕事】
「かつてはがんと診断されたら『治療に専念』と仕事を辞める人も多かったのですが、今は仕事と治療を両立させる人も多いです。がん支援センターに行けば、仕事についての相談に乗ってもらえます。会社員なら必要な範囲で勤務先へ伝えておくほうが○。勤務時間や給与面など、会社で使える制度も調べておくと安心です。以下のサイトも参考に」
●一般社団法人CSRプロジェクト https://workingsurvivors.org

不安❸ 人に話したり相談することが力になる
【メンタルヘルス】
「独りぼっちで考えているとネガティブな方向にいきがち。誰かに話すことで乗り越える力が湧くことも多いので、主治医や看護師、がん支援センターの相談員などに話してみて。がん支援センターは地域のがん診療連携拠点病院にあり、そこで治療を受けていなくても利用できます。また、全国にがんの患者会や支援団体があって、同じがん経験者(ピアサポーター)を紹介してもらえる場合も。そうした〝先輩〞に相談するのも有効です」

不安❹ 周囲の人を頼ってもいい。子どもの将来も心配しすぎないで
【子育て】
「親御さんが力を貸してくださる場合もありますし、きょうだいや友達が支えになることも。夫だけでなく、そうした周りのサポーターの力を借りて闘病中の育児を乗り越えている方が多いようです。子どもの将来の学費の心配もあると思いますが、今は高校まで無償化の流れも進み、公教育まではそこまで心配しなくても大丈夫。その後のキャリアも多様な時代。『がんになったから、あれこれしてあげられない』と自分を責めないで」

不安❺ 妊娠前にがんがわかった場合将来に備える方法も
【妊娠・出産】
「妊娠中にがんがわかった場合、妊娠を継続できるかはがん種やステージ、治療法などによるので医師との相談が不可欠。妊娠する前にがんがわかった場合などは、将来の妊娠に備えて、妊娠できる可能性を残しながらがん治療をする(妊孕性温存療法)ができる場合もあります。国が卵子や精子の冷凍保存費用を助成する事業もあるのでチェックを」

子どもが欲しい人のための
「妊孕性(にんようせい)温存療法」って?
がんとわかってからは、検査や治療方法など短い時間の中でいろいろな選択を迫られますが、妊娠を望む人は妊孕性温存療法をすることも選択肢のひとつ。がん治療を始める前に妊孕性温存治療をする必要があるため、治療前に一度検討を。妊孕性温存で卵子や精子を凍結保存する費用は、保険適用外のため自己負担。数万円から、保存にもお金がかかりますが、最近は助成金の制度が充実してきました。がん治療による生殖機能への影響や妊孕性温存療法、生殖医療補助についての正しい情報は、以下のサイトを参照。
●一般社団法人 日本がん・生殖医療学会 www.j-sfp.org

Staff Credit
イラストレーション/喜田なつみ 取材・文/遊佐信子
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