LIFE

私のウェルネスを探して/牟田都子さんインタビュー後編

校正者・牟田都子さんの心身を整え、仕事のパフォーマンスを上げる暮らしのルール

  • LEE編集部

2025.11.16

この記事をクリップする

牟田都子さん

引き続き、校正者の牟田都子さんに話を聞きます。取材は牟田さんの自宅で行われました。取材をゆったり見守ってくれていたのが猫のみたらしです。2歳で保護され、牟田さんのもとに来たのが11年前で推定13歳。カメラが好きでレンズに積極的に近づき、おおらかな姿を見せてくれました。窓からは濃い緑が見え、広々としたベランダにはガーデニングや野菜を育てているスペースも。インテリアや置いてある物もすみずみまでこだわりを感じさせ、牟田さんのセンスの良さが伝わってきました。

後半では、牟田さんの生活を支えるウェルネスや暮らしのルールについて聞きます。神経を使う仕事だからこそ気をつけたい体や心を整えるための工夫、今後やりたいことについても聞きました。(この記事は全2回の第2回目です。第1回を読む

朝起きてすぐのランニングと、朝夕の瞑想がパフォーマンスを上げる

校正者として忙しい日々を過ごす牟田さんが続けているのがランニング。緑の多い公園のそばに引っ越してきたこと、友人から誘われたことを機に15年以上続いています。

「20代の頃、村上春樹のエッセイをよく読んでいたのですが、彼がランニングを習慣にしていたことから走る人への憧れがありました。最初は3キロからスタートして次に5キロ、駅伝に挑戦したり10キロの大会に出たりして、2年後にはフルマラソンにも出ました。制限時間内にゴールできれば途中歩いてもいいのですが、私はできるだけ歩かないことを目標にしています。42.195kmを走るのはしんどいですが、ゴールできた瞬間は本当に嬉しい。実は30歳で走り始めるまでスポーツの経験がまったくなかったのですが、マラソンはこんな私でもできる!と自信を持たせてくれます」

牟田都子さん

最近は週に3〜4日、朝起きてすぐに5キロほど走るのがルーティン。「走ってから仕事をした方が頭がさえます」と牟田さん。今年はかねてからエントリーし続けていた東京マラソンに当選、念願叶っての初出場です。「今少し脚に痛みがあるので、まずは完走を目標に頑張ります」。走ることに加えて、毎日継続しているのが瞑想です。朝と夕方の2回、20分ずつの瞑想が仕事のパフォーマンスをアップしてくれるといいます。

「以前読んだ本に“本当の意味で休息と言えるのは睡眠と瞑想だけ”とあったのが記憶に残っていて。休みが取れるとつい出かけたくなってしまうのですが、それは休息ではないと知ってから瞑想に興味を持ちました。超越瞑想とかTMとか呼ばれるもので、ビートルズや映画監督のデイヴィッド・リンチが実践していたと言われる瞑想法です。朝は夫が出勤した後、夕方は仕事の目処がついた17時くらいに行います。瞑想は私にとって欠かせないもの。睡眠と同じくらい大切なものです」

食事は素材を選び、なるべく自炊を心がける。作るのは野菜料理が中心

食事にも気をつけています。料理家のたなかれいこさんの料理教室に通ったことを機に食生活を見直し、素材を選び、なるべく自炊を心がけています。

たなかれいこ 生きるための料理

「食事に気をつけるようになったのは結婚がきっかけでした。それまでほとんど料理をしていなかったため、家族の食を預かるなら一度きちんと学ばなければと思い、たなかれいこさんの教室に10年弱通いました。野菜はできれば肥料も農薬も使っていないものを選ぶ、調味料も伝統的な製法で作られるものを選ぶ、肉は健康な状態で育成されたものを選ぶ。結果的に肉も魚もあまり食べなくなり、作るのは野菜料理が中心です。外食が続くと、ちょっと体がきつくなるし家の食事が恋しくなります」

食材は、近所の自然食品店で購入するほか、元恵文社一乗寺店店長の鎌田裕樹さんが独立開業した農園「廣屋商店」の野菜を定期的に取り寄せています。

牟田都子さん

「鎌田さんのところからは月2回、5種類の野菜が届くのですが、夫と2人暮らしなのでちょうどいい量なんです。鎌田さんは元書店員で、今は地元の千葉県でいろいろな野菜作りに果敢にチャレンジしていて、届く野菜も面白いんですよ。季節ならではの野菜、自分では手に取らない野菜が届くので、毎回楽しみです」

目覚ましはかけずに起きる。読書時間が何よりリラックスできる

睡眠も大切にしていますが、ルールは特に決めずに眠れるだけ眠る派。目覚ましもかけずに起きるそうです。

「夜は寝室に本を何冊も持ち込んで、読みながら眠たくなったら寝ます。時間にとらわれて“4時間しか寝ていない”などと思うとかえって不安になってしまうので、時間はあまり気にしないように。予定があって早く起きないといけない時は目覚ましをかけますが、普段はかけていません。起きる時間は毎日ほぼ同じで、今は7時から7時半くらいです」

牟田都子さん

1日でいちばん好きな時間は、本を読んでいる時。家中どこでも、ベッドの中でも、お風呂でも読んだりと、読書時間が何よりリラックスできるとか。

「半身浴をしながら読書している時間がいちばん長いかもしれません。気が散ることがなく集中できます。朝は雑誌、夜は本のことが多いかな。普段は30分くらい、長い時は1時間ほど。冬は寒いので朝も夜も半身浴をして体を温めます」

校正者・牟田都子さんの1日

7:00

起床、ランニング(冬は半身浴) 朝食 家事

9:00

夫出勤、瞑想

10:00

仕事開始(途中簡単に昼食を取る)

17:00

瞑想 必要であれば書店や図書館に行き、調べものや本を探す

21:00

夫帰宅、夕食 半身浴 読書をしながら眠くなったら就寝



校正の仕事以外に執筆、イベント登壇、テレビ・ラジオ出演も

牟田さんは校正の仕事以外に本や書評の執筆、イベントへの登壇、テレビやラジオに出演する機会もあります。自著を出版してから仕事の幅はさらに広がり、初めて挑戦することも増えました。

「校正はすごく時間がかかりますし、苦労も多いですが、一文字一文字読んでいけば、いつかはかならず終わるんです。だけど執筆は一日中書いても使いものにならない時もあって、校正より楽かといえばそうとも言えない。

牟田都子さん

校正の仕事には、細かさや入念さ、冷静さが必要とされますが、それは私の特性ではなく、校正という仕事自体がそういうものなんですよね。時間がかかって効率が悪いように思えても、一文字ずつ実直に見るのが結局いちばん近道だったりします。サボろうと思えばいくらでもサボれる仕事ですが、どこまで手をかけるか、調べるか。私は主に文芸書・人文書を校正していますが、新聞や週刊誌、ウェブ、テレビなど、媒体ごとにそれぞれやり方は違います」

その面白さを掘り下げたのが2024年に出版した著作『校正・校閲11の現場 こんなふうに読んでいる』(アノニマ・スタジオ)です。マンガ、レシピ、テレビ、ウェブ、地図、新聞、雑誌など、それぞれの媒体で校正に携わる人を取材し、校正の仕事に就くまでの職歴や仕事の進め方、醍醐味を一冊にまとめました。

牟田都子さん 校正・校閲11の現場

「世の中の一般的な印象として、校正=正誤を見つける仕事で、時間をかければかけるほどいいと思う人が多いように感じます。でも、例えばテレビの校正などはスピード重視で書籍とは全く違う。校正にもいろいろな種類があって、それぞれ重視するものが異なり、校正者の心持ちも違います。どんな仕事も世間からの見え方と実態には異なる部分があるものだと思いますが、校正もそうだということをたくさんの人に知ってもらいたいと考えてこの本を作りました」

オファーが来て体が空いていれば、どんな仕事も引き受ける

今後やりたいことを聞いてみると「やりたいことは特にないんです」と牟田さん。書籍の執筆依頼がいくつかあり、校正の仕事と執筆を同時に進めていく予定です。

「オファーが来て体が空いていれば、どんな仕事も引き受けています。『校正・校閲11の現場』も出版社から声がかかって作った本です。今も約束している本が何冊かあるので、少しずつ書いていかないとと思っていますが、どうしても校正の仕事を優先しがちで、執筆が後回しに。これからは執筆にあてる時間をもう少し増やせればと思います。

牟田都子さん

あと、ひとつ気になっているのは、校正の歴史です。今私たちが行っている標準的な校正、校閲は誰がいつ始めたのだろう、と。出版や校正にまつわる本を読んでいるとくり返し出てくる名前があったりして、そうした記述をこつこつ集めるのが面白いです。校正の歴史を誰かが書いてくれるなら読みたいですし、誰も書いてくれないならいつか自分で書くかもしれません」

My wellness journey

牟田都子さんに聞きました

心のウェルネスのためにしていること

牟田都子さん

「瞑想です。朝と夕それぞれ20分間行っています。仕事のパフォーマンスをアップするために、睡眠と同じくらい瞑想は欠かせません」

体のウェルネスのためにしていること

「ランニングとヨガです。ランニングは週に3〜4日、5キロほど走っています。ヨガはオンラインで週に1回。食事は野菜を中心に、よい食材を選ぶことと、シンプルな調理法を心がけています」

インタビュー前編はこちらから読めます

牟田都子さん

Staff Credit

撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
ファッション、ビューティ、インテリア、料理、そして読者の本音や時代を切り取る読み物……。
今読者が求めている情報に寄り添い、LEE、LEEweb、通販のLEEマルシェが一体となって、毎日をポジティブな気分で過ごせる企画をお届けします!

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる