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今、大人の“絵本界隈”がアツい!

言葉のプロが選ぶ、大人にこそ読んでほしい絵本

【脚本家・吉田恵里香さんと絵本】「優しさという感情を、洗練された言葉で伝えてくれる〝基本〟みたいなもの」

2025.11.17

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忙しい日々、ちょっと立ち止まって心の旅へ

今、大人の“絵本界隈”がアツい!

吉田恵里香さんの、大人にこそ読んでほしい絵本

絵本は子どもに読み聞かせるもの——そう思っていませんか? 優しいストーリーと温かい絵が疲れた心をそっとほどいてくれる……そんな〝絵本の力〞に癒される大人が、今増えているんです!

Index
  1. 今、大人の“絵本界隈”がアツい!
  2. 言葉のプロが選ぶ、大人にこそ読んでほしい絵本
  3. 優しさを根底とした世界を紡ぐのが、絵本の言葉の力
  4. 吉田恵里香さん
  5. 凝り固まった気持ちや視野を、優しく解きほぐしてくれる存在
  6. 吉田さんのおすすめ絵本
    1. 『やねうらべやのおばけ』
    2. 『クジラがしんだら』
    3. 『しっぱいしたっていいんだよ』
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大切なことを思い出させてくれるから

言葉のプロが選ぶ、大人にこそ読んでほしい絵本

日々、言葉の世界に触れている大人は、どんな絵本に親しんでいる? 脚本家の吉田恵里香さん、絵本創作でも活躍中の浜島直子さん、モデルのKIKIさん、「桃山商事」の清田隆之さんに、おすすめの絵本を聞きました!

吉田恵里香さん

優しさを根底とした世界を紡ぐのが、絵本の言葉の力

吉田恵里香さん

吉田恵里香さん

脚本家

1987年生まれ。脚本家、小説家として多くの作品を執筆。大ヒットしたNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』(2024年)、向田邦子賞を受賞した『恋せぬふたり』(2022年)など、代表作多数。



凝り固まった気持ちや視野を、優しく解きほぐしてくれる存在

吉田恵里香さんにとって絵本は、「優しさという感情を、洗練された言葉で伝えてくれる〝基本〟みたいなもの」とか。

「テレビ、ゲーム、小説など、エンタメ全体を幕の内弁当ととらえたとき、絵本は、ベーシックだけど食べるとほっとするおかずみたいに、入れておきたい存在。胃に優しいスープみたいな感覚もありますね。今の私は5歳の子どもと一緒に絵本を読むことが多いですが、子どもだけのものとは思ってなくて。私の偏見や頑なさも取り払ってくれるものだと感じています」

『しっぱいしたっていいんだよ』は、大人だからこそしみる部分も多い作品。

「人の失敗を許せない主人公のガストンと、パパとの対話の物語。ガストンの感情の流れもよくわかりますし、『こういうイラ立ちに、自分で対処できないことって多いなあ』と。読むと、凝り固まった心が柔らかくなる気がしますね」

一方、『クジラがしんだら』は、死生観を、新たな側面から描いた一冊です。

「絵本で扱う〝死〟や〝お別れ〟は、感情に焦点を当てたものが多いんです。もちろんそういう物語も大切に読んでいますが、この絵本は、クジラという生き物が死ぬことで起こる事実の変化を俯瞰で描いたもの。エモーショナルではない文章で、命の連鎖を描いているのが素晴らしい。大人も子どもも、お説教っぽい話って本能的に『嫌だな』って思いますよね。さらっとして、だけど心に引っかかる。しみるような死と再生の物語は、押しつけがましくない視点だなと思いました」

思い込みや先入観を減らし、世の中を優しい角度から見るのは、吉田さんの創作世界にも通底するテーマ。

「『やねうらべやのおばけ』も、純度の高い優しさがぎゅっと詰め込まれた名作です。登場するおばけと少女の思い違いや交流、距離の詰め方が心地よいんです。〝悪意がない世界〟も、物語として好きな落としどころです」

多くのお話に触れ、言葉を紡ぐ吉田さんが、大人が絵本を読むことをおすすめしたいシチュエーションとは?

「落ち着きたいときや、視野を広げたいときかもしれません。環境が変わると心が揺れる機会も増えてくるもの。私の周りでも、結婚や出産を迎える友人が多く、よく絵本を贈ります。大人の世界は何かと冷笑的になりがちだし、シニカルな目線で物事を受け取られることも多い。でも絵本には、自分や相手を肯定しながら、読み手の心の負担を減らし、新たな価値観を伝える力があると思います」

吉田さんのおすすめ絵本

吉田さんのおすすめ絵本

おばけと少女が生み出す、優しい世界

『やねうらべやのおばけ』

『やねうらべやのおばけ』しおたにまみこ ¥1320 偕成社
しおたにまみこ ¥1320 偕成社

古い家に住んでいるおばけと少女の出会いや交流を描く。「お互いの存在に驚きつつも、フラットに接し合う関係性が心地よいお話です」

生き物の生と死を、独自の視点から描く!

『クジラがしんだら』

『クジラがしんだら』江口絵理(文) かわさきしゅんいち(絵) 藤原義弘(監修) ¥1980 童心社
江口絵理(文) かわさきしゅんいち(絵) 藤原義弘(監修) ¥1980 童心社

「クジラの死骸を中心に、その生態系が描かれます。図鑑的な学びもありながら、生と死を俯瞰する目線から教えてもらえる作品ですね」

主人公の対話からたくさんの気づきがある

『しっぱいしたっていいんだよ』

『しっぱいしたっていいんだよ』オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ(作・絵) 垣内磯子(訳) ¥1320 主婦の友社
オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ(作・絵) 垣内磯子(訳) ¥1320 主婦の友社

「『ソーシャルスキル絵本』という子どもが他者や社会との関係性を育むシリーズですが、大人が自分に置き換えて読んでも発見が」

Staff Credit

撮影/HAL KUZUYA 取材・文/石井絵里
こちらは2025年LEE12月号(11/7発売)「今、大人の“絵本界隈”がアツい!」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。

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