11月歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」に”三谷かぶき”が登場!
歌舞伎の魅力は”マスト・ゴー・オン”! 三谷幸喜さんが手がける新作歌舞伎が開幕!豪華俳優陣がなかよく語る見どころは?【11月歌舞伎座】
2025.11.07
11月、東京・歌舞伎座にて新作歌舞伎『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな』が上演中です。作・演出に劇作家三谷幸喜さん、メインキャストに松本幸四郎さん、片岡愛之助さん、中村獅童さん、坂東彌十郎さん、そして中村鴈治郎さんという豪華俳優陣が居並ぶ、大注目の新作歌舞伎。
三谷幸喜さんと俳優5名がそろった囲み取材にLEE編集部が潜入しました。記事後半ではLEEweb限定のレポートもお届けします。最後までお見逃しなく!

about KABUKI 初心者だって気負わず楽しめる!古典から新作まで。進化しつづける歌舞伎の現在とは?
映画『国宝』の大ヒットで、歌舞伎への関心が高まっています。「ホンモノの歌舞伎の舞台、観てみたいな」と思いつつも言葉が難しそう、ストーリーが難解・・・と敷居の高さに躊躇する人も少なくないのではないでしょうか。
いえいえ、心配ご無用です。
そもそも江戸時代から続く歌舞伎は、近年上演されている演目だけでも、その作品数なんと300本以上。その中にはたくさんのジャンルがあり、大きく4つに分けることができます。
- 時代物(じだいもの)
- 世話物(せわもの)
- 舞踊
- 新作歌舞伎
歴史上の出来事を題材にとった、どっしりと重たい時代物。これは言葉や物語が難しいけれど、日本史や歴史好きにおすすめです。世話物は江戸時代の庶民の生活を描き、言葉も物語も比較的わかりやすく、花魁や町人が躍動する、いわば歌舞伎界の現代劇。美しい舞踊は『鷺娘(さぎむすめ)』や『京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)』などに映画『国宝』でもスポットがあてられていました。悲劇もあれば、コメディもあり、選ぶ演目次第でハードルもぐーんと低くなります。
新作歌舞伎はビギナーにもとっつきやすい!
今回上演される”三谷かぶき”は新作歌舞伎。最近は異色ともいえる新作がたくさん作られていて、題材が身近だったり、現代的だったり気軽に楽しめるとあって、歌舞伎ビギナーにも人気です。
今年だけでも時代劇ドラマ『鬼平犯科帳』や『大富豪同心』、直木賞受賞の小説『木挽町のあだ討ち』、講談『無筆の出世』、漫画『ルパン三世』、ゲーム『刀剣乱舞ONLINE』などが歌舞伎化、話題を呼びました。さらに12月にはバーチャルシンガー・初音ミクも歌舞伎座に登場。
歌舞伎は驚くほど進化しているんです!
もちろん”ザ・歌舞伎”という古典演目も充実。とくに今年は、松竹創業百三十周年ということもあり、歌舞伎三大名作といわれる『仮名手本忠臣蔵』、『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』を1日通しで上演するなど、新旧の歌舞伎ファンが劇場に集結する年となっています。
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史上最高に笑える歌舞伎!?
”三谷かぶき”は、抱腹絶倒、爆笑必至!!
そんな中、 11月歌舞伎座で上演されているのが、三谷幸喜作・演出の新作歌舞伎『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) 幕を閉めるな』。
”三谷かぶき”は2019年以来6年ぶり2作目となりますが、今回は三谷さんが自ら書き下ろし、1991年から上演してきた演劇作品『ショウ・マスト・ゴー・オン』を歌舞伎化。劇場の舞台裏で繰り広げられる騒動を描く傑作コメディです。
三谷さんお得意の群像劇と”バックステージもの”に、劇中劇となる名作『義経千本桜』など歌舞伎ならではのモチーフを織りまぜ、歌舞伎ファンから演劇ファン、そしてすべてのエンタメファンにとって「おもしろい」歌舞伎となること、間違いなし!

あらすじ
舞台となるのは伊勢の芝居小屋「蓬菜座」。狂言作者の花桐冬五郎(松本幸四郎)と座元の藤川半蔵(片岡愛之助)は、人形浄瑠璃で人気となった『義経千本桜』を歌舞伎として上演しようとしています。しかし看板役者の山本小平次(中村獅童)に問題が発生するなど、次から次へと騒動が巻き起こり……。「一度、幕を開けたらその幕を降ろしてはならない」という舞台人の強い思いとともに、個性豊かな登場人物が舞台と舞台裏で錯綜します。
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注目俳優勢揃い!
三谷かぶきの稽古場で行われた取材会におじゃましました
稽古場で行われた囲み取材で三谷幸喜さんとともに登場したのは、これまでも三谷作品にたびたび出演してきた松本幸四郎さん、片岡愛之助さん、中村獅童さん、坂東彌十郎さんと、今回が三谷作品初参加となる中村鴈治郎さん。にぎやかで笑いのあふれる会見となりました。

三谷さんと幸四郎さん・愛之助さん・獅童さんの意気込み

三谷幸喜さん
「笑いのセンスのある喜劇役者が集まった劇団」
「とにかく今回は爆笑でガラスが割れるくらい、笑いに満ちたコメディーをやりたいなと思っています。なぜなら僕の知っている歌舞伎役者のみなさんは、コメディアンとしても本当に優れた人たちばかり。こんなに笑いのセンスのある喜劇俳優が集まった劇団はそうはないので、それをフルに活かして最高の喜劇を作りたいなと思っております」

松本幸四郎さん
「傑作をさらなる傑作にしたい」
「舞台を愛してる人たちばかりが登場するお芝居ですので、自分もそれに幸せを感じながら進めたいと思います。三谷さんの書いた傑作をどう表現するかは役者次第。傑作をさらなる傑作にしたいっていう思いでいっぱいです」

片岡愛之助さん
「役者としても非常に楽しみな三谷作品」
「三谷さんとは何度か一緒にやらせていただいいますけれど、毎回いろいろな芝居の提案をいただいて、役者としても非常に楽しみながらやらせていただいています。全力で千穐楽までみんなで頑張っていきたいと思います」

中村獅童さん
「笑える歌舞伎もあると知ってもらえるきっかけに」
「これまで歌舞伎を見たことがなかった若い方も、最近は劇場に来てくださっています。歌舞伎には色々なタイプのお芝居があって、難しいだけでなく、今回の新作歌舞伎のように笑える作品もあるということを知っていただけたら嬉しく思います」
彌十郎さん、鴈治郎さんと三谷さんの化学反応も楽しみ!
ひときわ長身な彌十郎さんはふだん歌舞伎の舞台では立役(たちやく、男性のキャラクター)を勤めていますが、今回は、なんと女方。劇中劇『義経千本桜』で静御前を演じます。獅童さんからの「10月の歌舞伎座では、息子(坂東新悟さん。彌十郎さんの息子)がまともな静御前をやっていたよね」というちゃちゃに「僕もまとも!」とすかさず返して、みんな大爆笑。
さらに三谷作品初参加となる鴈治郎さん。「三谷さんと初めて仕事をさせていただくこと、大変うれしく思っています」と喜びを語ると、三谷さんは「今までなぜこんな面白い生き物がこの世の中にいることに気づかなかったのか(笑)。悔やまれてならない。もっと早く出会っていたかった」と吐露。またまた会見は笑いに包まれました。


始まる前からもうおもしろい”三谷かぶき”。これから歌舞伎デビューしたいという歌舞伎初心者にもぜひともおすすめの舞台です。
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ここからはLEEweb独占取材!
5人が遭遇した”舞台でのピンチ”とは?
今回の新作歌舞伎『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな』では、次々と起きるトラブルを乗り越える舞台人の姿が描かれますが、実際に歌舞伎の舞台では、それに勝るとも劣らない、ありえない事件が起きることが・・・そこで5人に「これまでに経験した舞台でのピンチ」を聞いてみました。
幸四郎さんは、お役の肌の色を間違えた!
「(1日の公演のなかで)役をいくつかやるっていうことは、毎月よくあることで、そのたびにお化粧をやり直すんです。あるとき、すごくきれいに白塗りができて、よし、かっこいいな~と思ってたら、普通に肌色の役だったという・・・」と笑う幸四郎さんに「ウソでしょう!?」と愛之助さん。
「急いで全部落として、なんとか間に合いましたけど、そういうことが何回かあって」
「えっ、何回もあるの!?」とまたまた大爆笑。
鴈治郎さんはそのピンチを目撃したようで、
「幸四郎さんが楽屋からバタバタ慌てて出てきて、何かと思ったら、『いや、ちょっと』って。白塗りと『間違えた』って(笑)」と鴈治郎さん。

愛之助さんは絶対に笑ってはいけない場面で・・・
「大阪の松竹座で、獅童さんと一緒に『吹雪峠』という芝居をやったんですよ。自分の女房(中村七之助さん)と弟分(獅童さん)が駆け落ちしちゃって、二人をすごく恨んでいる男の役。その駆け落ちした二人と山小屋で出会う場面で、外は猛烈な吹雪、すごく緊迫した場面だったんですけれど、舞台上で風の勢いがすごくて横の木戸がバーンと開いちゃったんでさりげなく閉めたら、今度は木戸が外れちゃって倒れてきたんです。これはまずいなと思って立てかけてみたんですけれど、二人に詰め寄っている最中、また木戸がバーンって倒れてきて、今度は頭を直撃してしまって。
絶対笑っちゃいけない場面なのに、もうおかしくて吹き出しちゃって。また獅童ちゃんが悪い人なんですよ。『見ろ、兄貴も笑っているから許してくれてる』みたいなこと言いだして。芝居にならないくらい笑っちゃいました」。
これを横で聞いていた獅童さんが「愛之助さん、笑い上戸だからなんにもしてないのにすぐ笑うんですよ」と言うと、「いや、してくるんですよ!! 6月歌舞伎座公演『連獅子』の宗論でも獅童ちゃんのせいで、おかしくてがまんして、苦しかった!」とまたしても笑顔の愛之助さんでした!


獅童さんは忘れ物に要注意!?
獅童さんは、三谷さん作演出の舞台『江戸は燃えているか』(2018年)に出演した際にまさに”ショウ・マスト・ゴー・オン”な経験が。獅童さんが演じた勝海舟の娘役を、ピンチヒッターで演じたのはなんと三谷さん。「僕の娘役が三谷さんだったので・・・あれはなかなかのピンチでした」と振り返る獅童さんを「あのときは、すごくたいへんだったんですけれど、座長の獅童さんに助けられました。すごく頼りになる男です」と三谷さんも大絶賛。
歌舞伎の舞台でのピンチは「そう、小道具を持ち忘れたことありましたね。舞台で七之助さんにお金を渡さないといけなかったんだけど、気づいたらお金がなくて(笑)。それで手で持っているフリをして、見えないように隠しながら渡しましたけど、焦りました。へんな汗かきましたね」。
鴈治郎さんは、まさかのハプニング!
「昔、たしか南座(京都)で。相手の首を斬って逃げるという緊迫したシーンだったんですけれど、ズバーっと首を斬った瞬間に、勢いで鬘(かつら)が飛んじゃったんです。そうしたら斬った相手が鬘を拾ってハイって渡してくれて(笑)。渡されたら受け取るしかないですよね。そのまま、鬘を持って引っ込みましたけど、シリアスな場面だから笑うわけにもいかないし。気がついたお客さんは大笑いしてました」。さすが笑いの天才と言われる鴈治郎さんです。今回の舞台では「笑わない鴈治郎を見てほしい」と言っていましたが、きっと何かが起きるに違いありません。
彌十郎さんは、無事でよかった大ピンチ
「いっぱいありすぎて、どれにするか迷っちゃうけど(笑)」と教えてくれた彌十郎さんのピンチも衝撃的。
「舞台で気を失ったことがあるんです。昔、中日劇場でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』に出ていたときですね。衣裳が重すぎて背中を捻挫しちゃったんです。芝居の序盤で退場する役だったので、そのまま人に担がれて救急車で病院に運ばれて。次の日から2日間は(市川)右團次さんが代役を勤めてくれましたけど、3日目には復帰しました。
『ひえ~!』っていうくらい痛いんだけど、(市川)猿翁さんが『あんたもう出られるでしょ』って言うので、毎朝、痛み止めの注射を打って、コルセットして。
そんなところですかね。ここでは言えないネタならもっといっぱいあるけどね(笑)」それも今度こっそり教えてほしいです。

幼い頃から舞台に立ち、数々の修羅場をくぐり抜けてきた5人。”ショウ・マスト・ゴー・オン”を地で行く彼らが繰り広げるステージは、間違いなく舞台への愛にあふれた熱量の高いものになるに違いありません。ぜひ劇場に足を運んで体感してください!
information
11月歌舞伎座 吉例顔見世大歌舞伎

令和7年(2025年)11月2日(日)~26日(水)
※10日(月)、18日(火)休演。24日(月)貸切〈幕見席は営業〉。
昼の部(午前11時開演)『御摂勧進帳』『道行雪故郷』『鳥獣戯画絵巻』『御所五郎蔵』
夜の部(午後5時開演)『當年祝春駒』『歌舞伎絶対続魂 幕を閉めるな』
Staff Credit
撮影/露木聡子 取材・文/佐藤裕美
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