連載
KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねても、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。出会いから7年。クスッと笑えるオブジェとは、ともに暮らしている感覚です。
file
29.
[アート]Art

Sculptor: Kasumi Ochi
越智香住
Item: Ceramic art object
陶製オブジェ
動物、人、天使……そこに“いる”だけでいつもの一角に生まれる心地よい余韻
出会いは、友人に連れられて出かけた個展。実は、「ちょっとのぞいていこうかな?」くらいの感覚でした。ところがどうも、惹かれてしまう。友人も、「これきっと佳苗さん好きだと思う」なんて言う。しかも作品自体から感じる、強い視線。気づいたときにはもう、その子を大切に手で包み込んでいたわけです。
陶器でできたその彫刻作品は、動物や人、天使をモチーフにしたものが多いのですが、手放しで「かわいい!」とは言いがたい。でも不思議と忘れられない表情やポーズ。とりわけ、むっちりした体つきの愛らしさ! さらに、釉薬のかかっていない作品には、土そのものを感じさせるプリミティブで力強い存在感があり、もう1体、さらにもう1体と、いつの間にか仲間がこんなに増えていました。
私は特に天使モチーフが好きで、すでに2体ほど手に入れています。ところが並べてみると、同じモチーフながらその印象は全然違う。さらには、ひとつの作品でも見る角度によって表情が変わる。小ぶりなことも私にとってはうれしいポイントで、飾る場所を1カ所に決めず、気ままに移動させています。壁に掛けてしっかり飾ることもあるし、時には気軽に本の上にのせることも。いずれにしても漂うのは、ほほえましい温かさ。彼女の作品はどれも、まさに“いる”という表現がぴったりの佇まい。その視線に気づいて振り向き目が合うと、思わずクスッと笑ってしまう親しみやすさが魅力です。

指をくわえて眠る様子が、なんとも愛らしい天使。「この体勢なので壁に掛けることはないですね。こんなふうに、何かにのせておくことが多いです。アートの素晴らしいところは単体で楽しめるだけでなく、そこにあるものも一緒に、この場合は“本も込み”でアートになるところなんです」(石井佳苗さん)

越智さんの作品には、ユニークな名前がつけられている。こちらの作品名は『ついてこないで』。ぽってりした体つきと少々不満げな猫の表情がなんとも言えないのだとか。
Sculptor:
Kasumi Ochi
Japan, 1996〜
荒削りに見えて繊細なフォルムと無垢な表情で、空間に温かみが加わります

左はお気に入りの天使モチーフ、右は「その不思議な存在感に惹かれて」石井さんが初めて手に入れた作品で、手持ちのネックレスとともに壁掛け。飛騨高山で暮らす越智香住さんは、大学卒業後、スペイン留学を経て彫刻家として独立。10月21〜25日、大阪・心斎橋「ai gallery」で個展開催予定。主な取り扱いは、東京・麻布台にある「Gallery SU」。詳細はInstagram(cara.kara17)にて。

Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2025年LEE11月号(10/7発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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