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【今月のおすすめ映画】『女性の休日』ユーモアとやわらかな連帯が成し遂げた知られざる革命。他3本

2025.10.24

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今月の注目映画情報をお届け!

イラスト 折田千鶴子さん

Navigator

折田千鶴子さん

映画ライター

区で実施の「生ごみ減量・EM堆肥化」活動に参加、チャレンジ中。微妙に本格的で悪戦苦闘してます。

『女性の休日』

『女性の休日』
©2024 Other Noises and Krumma Films.

ユーモアとやわらかな連帯が成し遂げた知られざる革命

どこかユーモラスな味が魅力の、おもしろドキュメンタリーがアイスランドからやってきた。今でこそ北欧は女性が働きやすい、子育てしやすい、手厚い社会保障などで知られるが、たった50年前は他国と同様、いやもっと酷い状態だったという。そんな中でアイスランドが先陣を切り、’75 年10月24日、世界を動かす「女性の休日」運動を成し遂げた道程に、何度も目から鱗が落ちる!

なぜ女性は船長になれないのか、なぜ農場主として認められないのか、なぜ政治の話をすると無視されるのか、なぜ男性より賃金が安いのか。当時、声を上げ始めた女性たちが、運動の動機を楽しげに語り始める。彼女たちの母親世代までは、やりたいことも「女性だから無理」と却下されてきた。中でも印象的な逸話は、街が祝祭ムードに包まれるクリスマスを巡る話。なんと当時はディナーはもちろんケーキやお菓子、子どもたちの晴れ着まで、すべてお母さんの手作り。さらに掃除や飾りつけものしかかり、世の母親たちは何日も働き詰めでヘトヘト。それでも笑顔でクリスマスを祝えだなんて、キツすぎる。だから彼女たちは疲れ切った母親の人形をツリーに貼りつけ、掲げた。世の男性から反発をくらうが、「楽しかった」と目を輝かせる姿に、思わず噴き出し拍手したくなる。またあるときは、男性目線の美人コンテストに、白く美しい雌牛を連れていく。どこかクスッと笑える運動を繰り出し、世の注目を集めていく。

批判や攻撃を浴びたが、密かに溜飲を下げていた女性も多かったに違いない。そうしてついに彼女たちは「1日ストライキ」を提唱することに。ところが、その言葉にひと悶着あり、妥協して「休日」に置き換えて提唱。少しずつ共感の輪が広がっていく。確かに「休日」という身近な言葉は、「それなら私にもできそう」と気持ちを動かしたに違いない。

そして迎えた当日。「できるはずない」と高を括っていた男性たちは、焦って圧力をかけたり脅したり。それを尻目に女性たちは、職場や家庭で静かに労働を放棄し、意志のもと休み、広場に集まり始める。静かな抵抗のさざ波の広がり、やわらかな革命が進行していく様にゾクッと鳥肌が立ち、思わず快哉を叫びたくなる。

この日、なんと国の90%の女性が、自主的に「休日」をとったという。“女性の仕事は誰でもできる簡単なものだから低賃金/無料”とされてきたが、社会は機能停止に。単に「1日休む」だけで、女性の労働力の大きさと存在意義を知らしめたのだ。叫ぶでもつかみ合うでもなく、祖母や母を見てずっと感じてきたことを胸に、自分や子どもの未来のために勇気を出して「休む」。その意義の大きさは、後のアイスランドを見れば(大統領と首相を女性が務め、ジェンダーギャップ指数16年連続1位)一目瞭然だろう。相変わらず当該指数下位をウロウロする日本だが、彼女たちのユーモアと女性同士のやわらかな連帯に、学ぶものは大いにあるはずだ。

10月25日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

公式サイト

『ひとつの机、ふたつの制服』

『ひとつの机、ふたつの制服』
Renaissance Films Limited ©️2024 All Rights Reserved.

小さなことが人生のすべてと思うあの頃の必死さが切なく愛しい

’90年代の台北。受験に失敗した小愛(シャオアイ)は、名門女子高の夜間部に進学することに。全日制の生徒と同じ机を共有するため、小愛は「机友」として成績優秀な敏敏(ミンミン)と知り合う。手紙のやりとりや昼夜の入れ替え時のおしゃべり、やがて刺繍の色だけ違う制服を交換して学校を抜け出したり。けれど同じ男子高生に恋していると気づく。小愛を敏敏の全日制の級友と思い込んだ彼に、小愛は思わず嘘をつき……。やっかいな思春期の友情と恋、コンプレックスとの闘い。イライラしたり自分を嫌いになったり、悩める姿がどこか懐かしく「あるある」で最後は涙目に。

10月31日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式サイト



『爆弾』

『爆弾』
©呉勝浩/講談社 ©2025映画『爆弾』製作委員会

不気味な謎の中年男と警察の攻防。冷や汗ものリアルタイムサスペンス

酔って暴行を働き警察に連行された正体不明の男(佐藤二朗)が、「霊感が働いた」と爆発騒ぎを言い当てる。ヒントのようなクイズで、次なる爆弾の在りかをほのめかし……。取り調べる刑事(山田裕貴ほか)、爆弾捜索に奔走する警官(伊藤沙莉ほか)、責任回避にいそしむ警察上層部は、皆こぞって翻弄される。そこに過去の警察の不祥事が絡み……。謎かけのような男の言葉に、観客も常に頭をフル回転させられる。至るところに現代社会が抱える問題やひずみが埋め込まれ、なんとも言えない気持ちに陥るが、だからこそ必見の衝撃作。呉勝浩の同名ベストセラー小説を、『キャラクター』の永井聡が映画化。

10月31日より全国公開

公式サイト

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配信 ANIMATION

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』

アクション&ミュージカルの青春痛快作

人気絶頂のKPOPガールズグループの3人は、実は人間の魂を奪う悪魔と戦う〝デーモンハンター〞としても活動している。そんな彼女たちの前に突如5人組のボーイズグループが現れ、瞬く間に人気を得るが、彼らは悪魔の手先で……。激しいアクションシーンと、目も耳も奪われるパフォーマンス、そこに友情と恋とアイデンティティの葛藤が描かれ、アニメであることも忘れて自己投影しながら、どんどん高揚感が増していく痛快作。ビルボードチャートに4曲同時トップ10入り、参加アーティストも超豪華!

Netflix映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』独占配信中

公式サイト


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2025年LEE11月号(10/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。

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