Dear my Love…
竹下玲奈さんの
娘に受け継ぐものがたり
vol.16
『空也』の最中
手土産に託す、人を想う気持ち

私が小さい頃から竹下家のイベントには必ず登場する、街のケーキ屋さんのチョコレートケーキがありました。そのケーキ屋さんが何年か前に閉店してしまって、もう食べられなくなってしまったんです。思い出ごとなくなってしまった気がして、とても悲しい気持ちになりました。だから老舗ってすごいって思うんです。空也さんの最中が特別なのは、きっとみんなの思い出を託されているからなのかなって、思ったりします
竹下玲奈さん
初めて『空也』の最中をいただいたのは、ある日の撮影現場でした。お仕事でお世話になっている方からの手土産、いわゆる、“おもたせ”です。まだ若かった私は、この有名なお店の存在を知らず、とても上品で、とてもおいしく、そして、とても独特な形の最中に、ただただ感銘を受けたのでした。
その夜、帰宅してから、『空也』を検索しました。明治から続く老舗の和菓子屋さんだということ、多くの食通から愛されている最中であるということ、また、銀座の店舗でしか買えないということを知り、次は、おもたせをくださった方に感銘を受けました。その女性は、『空也』の存在すら知らず、ただおいしそうに最中を食べる若者の姿を見て微笑(ほほえ)むだけで、わざわざ銀座まで足を運び、貴重な最中を手に入れてくださったことなど、何も語らなかったのです。
今、おそらく私は、当時のその女性と同じくらいの年齢になっているはずです。
『空也』の最中を見るたびに、その日の出来事を思い出します。今の私はあの女性のような、心配りができているだろうか。そう反芻します。私は、何かを完璧にできたことがないから、きっと全然できていないんです。ただ幸せなことに、私のことを想い、私のためにしてくださった心配りが、どれだけうれしいことなのかを知っている。だから、上手にはできないかもしれないけれど、心配りができる人でありたいという想いを持っていることだけは、確かかなって思っています。
娘に受け継ぐものやことについて、決して押しつけにならないようにと、常々、意識をしているつもりです。でも、“手土産に託す、人を想う気持ち”については、それを知って大人になってほしいと願っています。そのためには、私がお手本にならなければ。折に触れて、衿を正しています。
そして、和菓子が大好きな娘と、私たち家族の思い出のために、『空也』の最中がいつまでも続きますように。そう願うのです。

竹下玲奈
Rena Takeshita
モデル
1981年、鹿児島県生まれ。14歳でデビュー以来、トップモデルとして活躍。群を抜いたセンスに業界内のファンも多く、“モデルが憧れるモデルNo.1”との呼び声が高い。『LEE』では、モデルとしてはもちろん、その愛情あふれるライフスタイルが読者の心をつかんでいる。
Staff Credit
スタイリング/竹下玲奈 撮影/長山一樹(S-14) 取材・文/磯部安伽
こちらは2025年LEE10月号(9/5発売)「竹下玲奈さんの娘に受け継ぐものがたり」に掲載の記事です。
竹下玲奈 Rena Takeshita
1981年、鹿児島県生まれ。14歳でデビュー以来、トップモデルとして活躍。群を抜いたセンスに業界内のファンも多く、“モデルが憧れるモデルNo.1”との呼び声が高い。『LEE』では、モデルとしてはもちろん、その愛情あふれるライフスタイルが読者の心をつかんでいる。
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