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ライター石井絵里がおすすめ!

【9月のおすすめ本】川内有緒、中野信子、青山美智子、川村元気

2025.09.22

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今月の注目情報をお届け!

石井絵里さん

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石井絵里さん

ライター

人生で初めて「上方落語」へ。お題は怪談。関西の言葉で聴く怖~い話に、震えながら笑いました!

『エレベーターのボタンを全部押さないでください』
川内有緒 ¥1980/ホーム社

人気ノンフィクション作家の、冒険心あふれる“日常”に触れて!

『エレベーターのボタンを全部押さないでください』川内有緒 ¥1980/ホーム社

仕事柄、文章を書くことの多い生活を送っているが、個人的な経験を記録する習慣がないのが、悩みといえば悩み。先のスケジュールは熱心に記入し、世界や日本のドラマティックな歴史は大好きながら、自分の平凡な過去には興味が持てず。忘れたり、見逃していることがたくさんあると思う。

今月の一冊は『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』が、Yahoo!ニュース一本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞、映画にもなった、作家・川内有緒さんの初エッセイ集。50代の彼女のこれまでの経験や思いが、文章になっている。

川内さんは1972年生まれ。東京で生まれ育ったのち、留学先だったアメリカ、日本、フランスと世界各地を転々としながら、国際協力の分野で仕事をしてきた。その後、30代後半で文筆業の道に。最新刊の表題作「エレベーターのボタンを全部押さないでください」は、彼女の小学生から中学生にかけての時期をもとにしたお話だ。

川内さんの妹が小学2年生になったときに赴任してきたのが、マストヨ先生。子どもたちを愛し、自由な授業を行う先生は、一部の保護者たちとも意気投合するように。川内さんのご両親も、先生の飲み仲間となる。ある日、先生や親たちが、川内さんの住むマンションの部屋で「飲み直そう」と帰ってきたところ、事件が起こる——。

どこの街にもありそうな集合住宅のひと部屋で始まった、プチ騒動。川内さんの父親、そして先生と、慌てふためく大人たちの姿がユーモアたっぷりに描かれている。その鋭い観察眼や、みずみずしい感性は、子ども時代の話のみならず、国連の職員として働いていた頃の体験、忘れられない本、敬愛する作家への思い、夫や娘との暮らしについてと、縦横無尽に広がっていく。

読み進めるうちに、「日常こそ冒険の宝庫」という気づきが。そして「歴史を動かすような大それた身ではない私。そんな毎日にも、ドラマがあるのかも!?」と、自分や家族の思い出を深掘りしたくなりました。

『悩脳(のうのう)と生きる 脳科学で答える人生相談』
中野信子 ¥1650/文藝春秋

『悩脳(のうのう)と生きる 脳科学で答える人生相談』中野信子 ¥1650/文藝春秋

人付き合いがしんどい、失敗をするのが怖い、方向音痴が直らない……などのお悩みを、脳科学者の中野信子さんが専門家の目線で解明。葛藤や戸惑いも「脳の働き具合なのか」と解釈できてスッキリ。また、大久保佳代子さん、坂本美雨さん、内田也哉子さんなど著名人からのお悩み相談も。意外な打ち明け話と回答も味わい深い。自分をより深く知るきっかけに、ぜひ。



『チョコレート・ピース』
青山美智子 ¥1760/マガジンハウス

『チョコレート・ピース』青山美智子 ¥1760/マガジンハウス

チョコレートをモチーフにした、短編恋愛小説集。チョコバナナにまつわる高校生の淡い思い、キューブチョコに託すアイドルへの推し活、大人の恋に似合うビターなチョコなど、種類豊富な物語がぎっしり。主人公の成長を見守りながら、お菓子がつないでいく、思わぬ展開にドキドキして。そして「あとがき」として書かれた著者・青山さんのエピソードにも心が温まる。

『小説 8番出口』
川村元気 ¥977/水鈴社

『小説 8番出口』川村元気 ¥977/水鈴社

地下鉄に乗っている最中に、別れた恋人からのメッセージを受け取った〝僕〞。電車を降りて地上に出ようとするも、同じ通路を繰り返し歩いていると気づく――。原作は人気ゲーム。そして映画が公開になっている『8番出口』の、オリジナル小説。主人公の〝僕〞は、無限ループする地下通路から抜け出せるのか? 独特の世界観に、活字でもハラハラさせられてしまう!


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2025年LEE10月号(9/5発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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