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「学校に行きたくない」に親はどう向き合う?

著書『子どもが本当に思っていること』が大反響

精神科医さわさん【娘が小1で行き渋り→小3で不登校】 「親が自分の人生を生きることで、学校に行かない生き方を応援できる」

2025.09.10

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仕事や暮らしの調整、心の浮き沈み…

「学校に行きたくない」に親はどう向き合う?

「学校に行きたくない」に親はどう向き合う?

わが子が行き渋りや不登校になったとき、子どもの気持ちに寄り添いたいと思う一方で親の頭をもたげるのは、自分の仕事や生活、メンタルを保つ難しさ。親まで落ち込むことなく、ほどよい距離をとって対応するためには? その心がけを、経験者たちに聞きました。

Index
  1. 「学校に行きたくない」に親はどう向き合う?
  2. 経験者ママはわが子の行き渋りにどう向き合った?
  3. “親が自分の人生を生きることで、学校に行かない生き方を応援できる”
    精神科医さわさん
  4. 精神科医さわさん
  5. 不登校による子連れ出勤がクリニック開業を後押し
  6. 不登校を共有・相談する先はできるだけ多いほうがいい
  7. 行き渋り・不登校ヒストリー
    1. ――小1・7月
    2. ――小2
    3. ――小3
    4. ――現在
  8. まとめ
    さわさんは、わが子の行き渋りにこう向き合った
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Interview

経験者ママはわが子の行き渋りにどう向き合った?

子どもの不登校は親にとっても大きな試練。不安を抱えながらわが子を支え、笑顔を取り戻したママたちにお話を伺いました。

精神科医さわさん

長女が小1で行き渋り  小3で不登校に

“親が自分の人生を生きることで、学校に行かない生き方を応援できる”
精神科医さわさん

精神科医さわさん

精神科医さわさん

1984年生まれ、三重県出身。勤務医を経て、名古屋で「塩釜口こころクリニック」を開業。近著に『「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)。YouTubeでの発信も話題。現在12歳、10歳の娘を育てるシングルマザー。

『子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)

著書『子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)でも、不登校の子どもとのかかわり方を紹介。



不登校による子連れ出勤がクリニック開業を後押し

精神科医、児童精神科医として毎月約400人の親子の診察を行うさわさん。自身も2人の娘を育てる母親であり、長女は小学校から不登校に。幼稚園から集団生活への参加が難しく、行き渋りがあったそう。

「のちに発達障害の診断を受けた長女は当時から発達特性が強くて。園の先生が〝成長を見守りますね〟と丁寧にサポートしてくれて、年長にはみんなと一緒にお遊戯会に参加できるほどに。小学校も最初からすんなりとは通えないと予想していたら、意外にも普通に教室に入れたんです」

このままスタンダードな小学校生活を送れるかと思っていたところ、夏休み前になって「学校が怖い」と訴えるように。

「〝何が怖い?〟と聞いてみてもはっきりとはわからず。そこから行けたり行けなかったりになり、私や祖母(さわさんの母)が付き添い登校をするようになりました」

シングルマザーであるさわさん。実母に頼れない日は、自分でなんとかするしかありません。

「まだ一人で留守番ができない年齢なので、学校に行かないなら誰かが一緒にいるしかない。当時私は勤務医で、外来がある日は休めないので、どうしようもないときは子連れ出勤もしていました」

勤務先は比較的子連れ出勤に理解がありましたが、苦情を言う人もいて、さわさん自身の不安も。

「私がそばにいないときに周りに迷惑をかけていないかも気になって、仕事に集中しづらく。〝今日学校に行けたらおいしいかき氷を食べに行こう〟と物で釣って登校させたこともありましたし、〝仕事に行けないとお給料なくなっちゃうよ!〟と言ってしまったことも。あんなこと言わなければよかったと反省するばかりですが、私もいっぱいいっぱいでした」

厳しいタイプの担任に替わった小3を機に、完全な不登校に。このとき長女の気持ちを受け入れられたのは、小2の終わりにさわさんがクリニックを開業したことがひとつの理由に。

「開業の決め手はいろいろありましたが、長女の不登校が大きなきっかけになったのは確かです。自分のクリニックなら、学校を休んだ長女を連れて出勤するハードルがぐっと下がるので」

子どもの不登校の対応のため、仕事を辞める選択をする人も。さわさんもその選択肢を意識しなかったわけではありません。

「私の両親からすると〝子どもを学校に行かせる〟というのが最優先事項。〝お金の援助はしてあげるから、仕事を辞めて子どもに付き添いなさい〟とも言われました。でも私は仕事を辞めたくなかった。精神科医として、社会の中で役割を果たすことが自分のアイデンティティ。それを奪われたら、生きる目的を失うと感じたんです」

また、長女が留守番をできるようになったのも、大きな変化だったと振り返ります。

「『ママも仕事に行きたいから少しの時間一人で待っていられる?』と長女に相談しました。〝誰かが訪ねてきても応対しない〟〝絶対に火は使わない〟などいくつかルールを決め、少しずつ留守番できる時間が長くなっていきました。常に付き添わなくてよくなったのは、私にとって不登校を受け止める心境の変化につながりました」

不登校を共有・相談する先はできるだけ多いほうがいい

行き渋りになった当初は、学校を休ませることに罪悪感も。

「学校に欠席連絡を入れるとき、なぜか〝すみません〟と謝罪の言葉が出ていました。家で過ごすようになってからも、〝みんなが学校にいる時間は勉強。ゲームは放課後の時間〟というルールでしたが、次第にそれは違うなという気持ちに。学校に行かない子が学校に行ってる子に合わせる理由はないですよね」

さわさんも、こう考えられるまでには、相談をしたり、情報を得たりする時間が必要でした。

「不登校についての悩みは、ママ友に気軽に話せることではなく、私の場合は、かかりつけの小児科でのカウンセリングで相談をしていました。SNSで子育てについて発信している人とつながり、その方を中心とするコミュニティで不登校や子育ての悩みについて共有できたのもありがたかったです。悩みを話せる場も必要ですし、行き渋り、不登校の子に向けた公的な支援は意外と見つかりにくいので。相談先、頼れる先は多く持ったほうがいいと思います」

不登校の子を育てる親として、また児童精神科医として、親が〝自分らしく生きること〟の大切さを痛感しています。

「子どもをサポートするのは大事なことですが、そのために親が犠牲になる必要はなく、 〝ここまではやるけど、これ以上はできない〟というラインを決めていいと思うんです。親が自分の人生を生きることで、子どもが学校に行かない選択をして生きることも応援できます。学校に行かないのは単にひとつの選択肢で、長女は今、その選択をしているだけ。きっと将来も必要なところで助けの手を借りながら彼女らしく生きていけるだろうと信じています」

さわさん親子の

行き渋り・不登校ヒストリー

――小1・7月

子:「学校が怖い」と言い出すが原因不明
親:仕事を調整しながらの付き添い登校に苦労

――小2

子:寄り添ってくれる担任で、親が付き添えば登校できるように
親:自分のクリニックを開業。子どもを勤務先に連れていくことが可能に

――小3

子:厳しめの担任を怖がって不登校に。自宅で留守番をして過ごす
親:子育て・不登校についての発信者とSNSで交流し、気持ちがラクになる

――現在

子:中学入学後も不登校
親:不登校を問題視せず、子どもを信頼

“「学校に行かない」のは選択肢のひとつでしかないと思えるように”精神科医さわさん

“「学校に行かない」のは選択肢のひとつでしかないと思えるように”

まとめ
さわさんは、わが子の行き渋りにこう向き合った


仕事面…フレキシブルに対応できる開業医にシフトチェンジ
メンタル面…仕事を続けることでアイデンティティを保った
夫婦関係…学校に合わせた生活ではなく子どもの状況に合わせる


Staff Credit

撮影/三浦 晴 取材・文/古川はる香 本誌編集部
こちらは2025年LEE10月号(9/5発売)「「学校に行きたくない」に親はどう向き合う?」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。

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