連載
KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、「香りもインテリアの一部」と考え、大切にしているお香について。
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27.
[香り]Fragrance

Brand: TOKYO KODO
東京香堂
Item: Incense
お香
白い煙がたなびく数分間。香りもまた、空間を彩る要素です
香りは私にとって、リフレッシュアイテム。その場の空気と気持ちを切り替えたいときに使うものです。そんな理由から、部屋全体を香りで満たし続けるルームフレグランス的なものは、ほぼ使いません。
あくまで“切り替え”の役割なので、愛用するのはスティック型。燃焼時間は、おおよそ15分程度でしょうか。残り香に関しても、強すぎないものが好み。煙が立ち上る間のひとときが心を鎮め、次の行動への静かなスイッチになってくれるのです。
今、いちばんのお気に入りは、香りが穏やかな東京香堂のもの。長年にわたり寺院向けの線香を手がけている老舗の新ブランドで、フランスの調香技術を取り入れたアイテムも多く、積極的に新作を発表。実は私も2つの香りをコラボさせていただいたことがあります。
お香立てを使う方法もありますが、気軽に始めるなら好きな器を使うのがおすすめ。私は基本的に、お香は寝かせてたいています。立てた場合は燃え残りが出ますが、寝かせると無駄なく燃え切りますし、灰の処理も必要ありません。むしろ、少しずつ増える灰は、自分自身の日々の重なり。それが少しずつ増えていくのがうれしく感じるのです。
香りで空間を一新するお香。寺院ではもともと、清浄な空間を作るためにたかれたともいいます。日常の空間の中で、少しだけ神聖な“場”を作る。そんな気分でコーナーをしつらえるのも、インテリアのアクセントになるのではないでしょうか。

灰を敷いて寝かせれば、どんな器でもお香はたける。「磁器や陶器のほか、ガラスも涼しげで素敵です」(石井佳苗さん)。手前のガラスは山野アンダーソン陽子さんの作品。

右はCASICAでのイベントの際に石井さんと東京香堂によるコラボレーションから生まれた、「心(shin)」と「地(chi)」(ともに販売終了)。左は、東京香堂の「あさ」。原料は空気を浄化するという麻の炭。「大麻(おおあさ)は、太古から日本人に衣食住を支えてきたもの。香りを楽しむというより浄化の感覚で使います」(石井佳苗さん)
Item:
Incense “ASA”
Japan
好きな器を香皿に。場をしつらえることでも、心が鎮まります

お香をたく器は、木皿など燃える恐れのあるもの以外ならどんなものでも。例えば京都で見つけた黒漆の平皿に、宮田竜司さんの器を重ねて。

Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2025年LEE8・9月合併号(7/7発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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