小芝風花さんが「違和感のある人とは付き合わないでいい」と断言する理由【『私の夫と結婚して』配信開始記念インタビュー】
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折田千鶴子
2025.07.02 更新日:2025.07.04
超絶キュートな小芝風花さん降臨!

日本列島を切ない涙で包んだ『べらぼう』の花魁・瀬名の印象が、いまだ濃く脳裏に刻まれている小芝風花さん。近年益々の活躍には思わず目をみはるものがありますが、小芝さんが演じると、どんな役でもナゼか心地よくて、ずっと観ていたくなる不思議な魅力を放っています。だから毎クール、「小芝さん主演ドラマはどれかな?」と、つい探してしまう人も少なくないのでは?
さて、そんな老若男女問わず愛される小芝さん主演のAmazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』が、6月27日(金)より絶賛配信中です。ご存知、同名の韓国ドラマが昨年世界的にヒットとなりましたが、韓国版を未見の方は、「なんというタイトル!! どういうこと!?」と驚くかもしれません。そう、タイトルから推測すると、とってもセンセーショナルそうな本作ですが、そんな作品に小芝さんはどう取り組んだのでしょうか。豪華な共演俳優たちとのエピソード、日本オリジナル版の特色や魅力についてお聞きしました。

小芝 風花
1997年4月16日、大阪府出身。2012年にドラマ『息もできない夏』で女優デビュー。『魔女の宅急便』(14)で映画初主演。『トクサツガガガ』(19)を皮切りに、『波よ聞いてくれ』『転職の魔王様』『天使の耳~交通警察の夜』(全23)、『大奥』『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(24)など、多数の主演/ヒロインで出演したドラマが大きな話題を呼ぶ。映画『レディ加賀』(23)にも主演。現在、大河ドラマ『べらぼう』(25)に出演中、『あきない世傳 金と銀』シリーズ(23、25)が26年に「3」が放送予定。7月より放送予定のドラマ『19番目のカルテ』にも出演。
日本オリジナル版ということはどう意識しましたか?
漫画原作なども同様ですが、やはり韓国版ドラマのファンがたくさんいらっしゃるので、その方々にも楽しんでいただけるように作らなければ、というプレッシャーは毎回とても大きいです。特に本作のように元の作品の人気が高ければ高いほど、賛否が分かれるものだと分かっているので、ドキドキしながら参加させていただきました。
プレッシャーを越えて「参加したい」と思った動機は?
やはり韓国のチーム(スタジオドラゴン制作/監督:アン・ギルホ)と一緒にお仕事できるということです。経験がないので色々学ばせていただきたいな、と思いました。
『私の夫と結婚して』はこんなドラマ
© 2025. CJ ENM Japan / STUDIO DRAGON all rights reserved
ずっと“いい人”として生きてきた美紗(小芝風花)は、37歳で最愛の夫・友也(横山裕)と親友・麗奈(白石聖)に裏切られ、不幸な死を迎える。目覚めると、なぜか10年前の27歳に戻っていた。美紗は、奇跡的に手に入れた二度目の人生で、自分を陥れた友也と麗奈へ復讐を決意する。そして最悪の人生を二度と繰り返さないため、自分を裏切った者同士、夫と麗奈を結婚させる計画を立て、自分は新しく人生を生き直そうとする。その復讐計画を進めていく過程で、一度目の人生では言葉を交わすこともなかった上司の亘(佐藤健)と、美紗は思いがけず親密になっていく――。
“自分を裏切った夫と親友に復讐する”という設定からしてセンセーショナルです。まずは韓国版をどう観たか教えてください。
面白かったです。特に、韓国ドラマならではの“女性同士の戦い”がスゴかった(笑)。その激しさは、やっぱり韓国ならではの味かな、と。そういう韓国版の良さも残しつつ、今回は日本ならではの要素も取り入れ、少し違う味付けになっています。例えば女性同士が戦うにしても、髪の毛を掴み合ったりするようなことはない。というのも、浮気現場を目撃した時に、現場に乗り込んで「わーっ!!」と怒ったり騒いだりしないのは、日本人くらいなんですって。そういう感情の差を、他のシーンでも結構感じました。
序盤の夫と親友の浮気を目撃してから、美紗の死までの流れが衝撃的です。だからこそ復讐にスッキリとし、応援したくなります。ただ1度目の人生と2度目の人生の演じ分けは、同じ人物だけに微妙な匙加減が難しくありませんでしたか?
そうなんです。いきなり2度目の人生になった途端、美紗が急に強くなってしまうと、「それならなぜ、1度目の人生があんなことになったのか?」と疑問を持たれかねない。そのバランスや塩梅が、すごく難しかったです。しかも撮影が時系列順ではなく、過去と現在が混在して撮っていったので、余計に組み立て方が難しかったんです。



どのように組み立てましたか?
1度目の人生では美紗が“おかしい”と気づけなかった点――例えば麗奈や友也君に言われたことを、美紗は「そうか」とすべて受け入れてしまいます。でも2度目の人生では、「あれ、ちょっとそれは違うよな!?」と小さな違和感をキャッチする、という風に組み立てました。そこから復讐を決意するわけですが、どういう風に2人を(結婚させようと)仕向けていくかが、また難しかったです。
匙加減は監督と相談されましたか?
その都度、監督に「セリフの言い回しが強過ぎないか?」「どれくらい敵意を向けるか」「どれくらい言葉に棘(とげ)を感じさせるか」など、シーンシーンで相談しました。表情は1度目の人生の時と変えず、でも言葉には棘がある感じにしよう、麗奈も違和感を覚える程度にしよう、など監督と相談しました。
10年前に戻って復讐開始!
1度目の人生の美紗に対して、「なんで受け入れちゃうの!!」と怒りを感じたりしますが、そんな美紗をどう感じましたか?
でも、なんか分かるんですよ。今は私もだいぶ自分の意見を言ったり、「おかしいな」と思ったら言えるようになりましたが、10代~20代前半までは、どうしても周りの目が気になって言えませんでした。しかも美紗の場合、友也と麗奈があまりに強すぎるので、言われると「自分が直さなきゃ」と思わされてしまっていたのも、なんか分かるんです。

確かに親友の麗奈は、小学校時代からの腐れ縁ですしね……。
そうなんです。小学生の頃からずっと一緒ということは、人格形成期に既に支配に近いことをされていたので、当たり前になっている部分があったのかな、と。さらに家庭環境においても、美紗はお母さんが少しでも不機嫌になるとマズいと子供ながら恐れていたし、そういう空気って子供でも察するんですよね。そんな環境で育って来たので、周りの目や空気が変わる瞬間を察知し過ぎてしまうんだろうな。なるべく穏便に済ますには、自分がニコニコして受け入れればいい、平和な空気が保たれる、と。自分を一度殺してでも、ニコニコして「そうだよね」と言う癖がしみ付いていたんだと思います。
そうして美紗は命を落としますが、気づいたら10年前に戻っていた、という展開にワクワクさせられます。
その展開がいいですよね。美紗は、それまでの理不尽もすべて含めて「いい人生だった」と思い込もうとしていましたが、結果、最悪の終わりを迎えてしまった。後悔しか残らない人生のまま終わってしまって、自分に対しても後悔しか残っていなかったと思います。そこでもう一度チャンスをもらえるって、やっぱり面白い展開ですよね。

強敵2人と闘おうと決めた美紗に共感しましたか?
いえ……。自分なら絶対(闘わずに2人から)離れるだろうと思います。というのも演じて、復讐するって相当キツいということが分かって。復讐のためとはいえ、自分を見下してきた相手や自分を死に至らしめた人と、仲がいいフリをして近くにいるのは、メチャメチャしんどかったんです。だから自分なら逃げると思います。でも、それでも自分の人生を取り戻すために、覚悟を決めて闘う美紗の姿はカッコ良かったです!
確かに、時間を掛けて復讐の機会を狙うのはキツイですね。
きっと嫌な思いをした過去がフラッシュバックもするだろうし、本当に復讐が上手くいくかも分からない。しかも1度目の人生で起きたことは2度目でも起きるので、誰か/何かを身代わりにしなければならないんです。美紗は元々とても優しい性格なので、そこでも葛藤がすごくある。それでも進んでいくのは、かなり気持ちが強くないと出来ないと思いました。復讐を選ぶのは、茨の道を選ぶことでもあると思いました。
もし人生をもう一度、やり直すことが出来たら?
もし美紗のように、もう一度人生をやり直すことができると言われたら、どんな人生を選びますか?
私はこのお仕事が好きで続けているので、変えたいと思うことはないですね。ただ、幼少期から英語を習っておきたかったとは思います。私は英語も大好きですが、苦手で超カタカナ英語なんです。今回、韓国の方々とお仕事させていただくと、やっぱり共通言語は英語。英語さえ出来ていたら、もっと上手くコミュニケーションが取れたのにな、と残念に思う機会は多々あったので……。

今回の現場の雰囲気、苦労した点、楽しかったことを教えてください。
韓国チームは、すごくチャーミングな方が多かったです。「いいお芝居だったよ」「とても良かったよ!」とジェスチャーで伝えて下さる。また撮影終盤では、通訳さんを通さずに覚えた日本語で監督が「ここはゆっくり」などと指示して下さって。そういう姿勢を常に示して下さったので、すごく愛されてるという実感がありました。作品や私たちに丁寧に真摯に向き合ってくださって、感謝しかないです! それだけに自分の語学力がもっとあったらと、悔しい想いは残りますね。
新たな学びや気付きはありましたか?
ビジュアルを意識する、ということを初めて学びました。これまで役柄的に、私はさほど“綺麗”や“可愛い”を求められたことがなくて。でも今回、「顔の筋肉に少し力が入っている。抜けている方が綺麗だから、もう1回」ということが何度もありました。見た目に対するアドバイスが、すごく新鮮でした。韓国チームは、どうしたら俳優が綺麗にカッコ良く見えるか、スタイルよく映るか、アングルを含め常に探ってくれていて。映るものなのに、これまで無頓着だったことを反省しつつ色々と学びました。
佐藤健さん演じる亘さんに胸キュン!

視聴者が楽しみにしている“キュン”と言えば、上司の佐藤健さん演じる亘さんです。佐藤さんとは、意外にも初共演ですよね?
そうなんです。昔、授賞式で一度だけお会いしたことがありますが、お仕事でご一緒するのは初めてで。すごく面白かったです!
面白いというのは、佐藤健さんが(笑)?
佐藤さんの話がすごく楽しくて、ずっと笑っていました。もちろん作品や役についても話しましたし、私の悩みや迷いに対するアドバイスもくださったり、話をよく聞いてくださるので、とても頼りにしていました。でも普段は本当に“しょうもない話”をよくしていたんです(笑)! 例えば幽霊の話とか、「恨みしか持っていない幽霊だけというのはおかしい。絶対に優しい奴もいる」と真剣におっしゃったり(笑)。そういう、何でもないような話を「ああでもない、こうでもない」と真剣に話す、他愛のない会話がとても楽しかったです。
*以下2問、亘さん関連の応答はネタバレに抵触します。鑑賞後に読まれることをおススメします
亘さんとのシーンで、気を付けたことはありましたか。

美紗と亘それぞれの過去や背景についてなど、互いに互いがどこまで気付いているのか、なにを勘付いているのか、という部分は丁寧に演じないと壊れてしまう、と心して臨んだ部分です。佐藤さんも、その辺りの加減について監督とよく話されていたイメージがあります。
これから観る読者に、小芝さんが感じた胸キュンポイントを教えてください。
亘さんが「すごく素敵」だと思ったのは、「俺やったぜ!」的(ドヤ顔的)な部分が全くないところです。美紗が気づかないところで亘さんは、ずっと見守ってくれていたり、実は助けてくれていたり。例えば大学時代のカメの一件もそうです。美紗はすごく救われた、という話を亘にしていたのに、その時でさえ何も言わない。後でハッキリ美紗が分かったときに、やっと話してくれる。そういう不器用さにキュンとしました。亘さんの不器用さ、ぶっきら棒だけど真っ直ぐなところが、本当にステキですよね!
夫役・横山裕さん、親友役・白石聖さん
横山さんと白石さんも、見事に“クズっぷり”を演じています。

聖ちゃんは、元々“目”がとても印象的な方。それを意地悪方向に振り切ると、こんなに怖いことになるんだ、イヤ~って思いました(笑)。美しい人がニラむと、すごい迫力なんですね。日本版では韓国版以上に、麗奈の幼少期からの境遇や背景が濃く描かれているのが、私が好きなところ。だからこそ、ただのヤバい奴ではなく、もう少しいい未来はなかったのかな、と考える余地が生まれたと思います。

友也くんは小学5年生のまま時が止まった、という感じ。中2にさえ行けない、みたいな(笑)。特に2度目の人生では、不憫に思えるぐらい可愛らしさがあるというか。もちろんクズはクズなんですが、1度目の人生でもっと美紗がちゃんとコントロールできる女性だったら、メチャメチャ可愛い男性だったかもしれない、と思ったりしました。
横山さんの新たな魅力も開花されていますね。
これまでは割とクールな役が多いイメージだったので、友也くんをどう演じるか、とても楽しみでした。そうしたら、すごく明るくてお調子者で、調子いい時はニコニコしているけど、ムッとする時の不機嫌さなど、激しいギャップを見事に演じられていて、とても素敵でした。

今、振り返るとどんな現場でしたか?
1話ごとにちゃんと山が作ってあるので、本当に山場の多い現場だった、という印象です。撮影後半は、ほぼ毎日泣いている状態でした。それはとても大変でしたが、それくらい山場のシーンが多かったです。
演じる上でも見る上でも「あそこは肝なので見逃さないで!」というシーンを選ぶとしたら……。
2話目の同窓会シーンですね。学生時代にいじめられていた美紗は、1度目の人生で麗奈から騙しうちで呼ばれ、すごく嫌な思いをしました。その過去を覚えている2度目の人生では、初めてちゃんと麗奈に言いたいことを言うシーン、且つ見た目も大きく変身するシーンなので、大事にしなければと、とても丁寧に演じました。

最後に、美紗の人生を通して教えられたことはありますか?
違和感のある人とは付き合わないでいい、ということですね(笑)。自分の中で「あれ?」と思うことって絶対に繰り返すし、ゆくゆく大きな違和感になっていく。だから違和感を少しでも覚えた方とは、一定の距離を保って付き合った方がいいのかな、と思いました。 毎日ほとんどの時間を「学校」という限られた空間で過ごす学生はともかく、社会人になってまで無理して疲れる人と一緒にいる必要は本当にないな、と。もちろん必要があれば軽く付き合うけれど、深くなろうとしなくていい。あくまでも自分が傷つかない一定の距離を保ちたいな、と思いました。
『私の夫と結婚して』

Amazon Original『私の夫と結婚して』 2025年6月27日より毎週金曜日2話ずつPrime Videoにて配信中
© 2025. CJ ENM Japan / STUDIO DRAGON all rights reserved
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Staff Credit
写真:菅原有希子/ ヘアメイク:青山佑綺子(BOND)/ スタイリスト:小川未久
<衣装>
ノースリーブトップス¥23,100、ハイネックインナー¥14,300、スカート¥24,200 /PRANK PROJECT(PRANK PROJECT AOYAMA)
イヤーカフ・各¥25,300、バングル¥75,900、ゴールドリング ¥112,200、シルバーリング¥41,800/e.m.(e.m. 青山店) 靴¥24,200/ALM.
<問い合わせ先>
・PRANK PROJECT AOYAMA…03-6455-4550
・e.m. 青山店…03-6712-6797
・ALM. …https://almofficial.com
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。
















