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二宮和也さん自身初の新書『独断と偏見』発売 「自分らしい純度高めの言葉を、ダイレクトに届けられたら」 

2025.06.26 更新日:2025.07.01

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自身の著書「独断と偏見」を手にした二宮和也さん

国民的アイドルグループ・嵐のメンバーであり、映画、音楽、バラエティー……と様々なフィールドで輝き続けるトップランナー。そんな二宮和也さんが新たな挑戦として選んだのは、“文字だけの表現”。話題の新書『独断と偏見』発売直前の合同取材会では、たくさんの質問に真摯に向き合い、ユーモアを交えつつ率直に答えてくれました。著書への思いから仕事観まで、今の二宮さんの言葉をたっぷりお届けします!

新書だからこそ、理解を深めていただけるところもあると思う

長年、お芝居や歌を通して見る人に感動を与え続け、近年はYouTubeやSNSでの発信でも注目を集めている二宮さん。今回、文字だけの表現にチャレンジされた理由を教えてください。

二宮さん 今回の本の企画は、僕が独立して作ったHPのお問い合わせフォームに、雑誌『MORE』の連載でお世話になった編集の人から連絡をいただいて動き出したんです。そこには、「実は自分は病気になってしまったんだけれど、そんな中で、あなたの言葉をよく思い出し、励みにしてきた。それをまとめて、お守りのような1冊の本を作りたい」と書いてあって。僕としては、自分の言葉に人を動かす力が宿っているなんて考えたことはなかったんですが、信頼している方からの依頼だったので「やってみるか」と。1か月に1つの四字熟語をテーマに話をする形で、1年かけて作っていきました。

タイトルは、もともと『MORE』の連載(『二宮和也のIt [一途]』)とリンクさせた『百問一途』だったんです。でも、出来上がったものを読んでみると、あまりにも“独断と偏見”すぎて、このままじゃ性格悪すぎないか?と心配になり(笑)。すぐに、『独断と偏見』一択で変更をお願いしました。ここに書いてあるのは、一般論ではなく、僕が一人の人間として自分の言葉で話したことばかり。このタイトルにしたことで、「これはあくまで一個人の意見です」という立ち位置を明確にすることができたんじゃないかな、と思っています。

二宮さんが本書を出されて、新書の可能性も広がるのではないかと感じました。新書というスタイルにはこだわりがあったのでしょうか。

二宮さん これも“独断と偏見”なんですが、新書で出すことによって、客観的な意見を伝えられるのではと考えたんです。芸能人が自分の考えをまとめる時って、「自叙伝でいいじゃん」と思われがちかもしれません。でも、その場合は「だから今の俺があるんだ」というのがゴールになる。僕の場合はそういうサクセスストーリーはなく、そもそも成功しているのかどうかもファジーな状態。ずっと悩んでいることもあれば解決していくものもあるけれど、「二宮和也はこう考えているんだよね」というのを俯瞰できるスタイルだと思ったので、選択しました。

僕の生息地域って、わりと文字ベースなんですよ。台本にしても文字で情報をとらえてきたし、SNSにしてもInstagramよりXになじみがあるし。長い間、そういう生活をしていたので、写真集などより新書のほうがしっくりくるものはありました。それに、文字だけで言葉を立体化させる新書だからこそ、理解を深めていただけところもある気がしていて。逆に、ここに1ページずつ撮りおろしの二宮がいたら、邪魔でしょう(笑)? 

今は情報を集めやすい便利な時代だけれど、いろいろなものをそぎ落として、色のついていない言葉と対峙する時間というのは、贅沢なものだし渇きを癒す一助になると思うんです。この本もそんなアイテムのひとつにしてもらえたらうれしいですね。

独立して、いただいた仕事により責任を持って向き合うように

自身の著書「独断と偏見」を手にした二宮和也さん

本書で触れられる二宮さんの仕事観に、刺激を受ける読者も多いと思います。今、二宮さんは、“アイドル”とはどうあるべき存在だと考えていますか?

二宮さん アイドルとは、相手の希望を理解して、それをかなえてあげられる存在……なのかな。もちろん、エンターテイナーとして最先端のものを融合していくことで新たな可能性を示し続けることも大切ですが、まずは、誠実に応援してくださるコミュニティーの人たちが喜んでくれることを第一にやっていく。そこが満たされることで、ようやく“お茶の間”と呼ばれるところで見てくださっている人たちのところにも届くんだと思います。

嵐に関して言えば、応援してくださる方のお父様、お母様に「嵐のコンサートだったら行っていいよ」と言ってもらえるような存在でありたい。挑戦も冒険もしつつ、“安心・安全”なものも同時に提供していきたい、ということも、いつも考えていますね。

見てくださる方の声は、以前はファンレターで知ることがほとんどだったんですよ。最近は、エゴサーチができるようになったことで、本当に幅が広がった。僕は、映画など完成したものに関してはあまり検索しないんですが、連続ドラマなど続いていくものに関しては徹底的に洗っていきます(笑)! それは、現状よりよくなり得るから。「なるほど」と思った意見は拝借するし、現場に共有することも。その点に関しては、メンタルが強いというか、向き合いができるタイプなんだと思います。

ご自身の環境が大きく変わった、ここ数年。仕事観の変化についても教えてください。

二宮さん ひとつひとつの仕事に、より責任を持つようになりました。事務所に所属していた時は、いただいた依頼の中から一番自分にマッチするものをプロの人たちに選んでもらって、手元に来たものを理解して表現する、というプロセスだったんですよね。でも独立してからは、自分ですべての依頼を見るように。その結果、お受けするものにもお断りするものにも、平等に時間を費やして向き合うようになりました。

その変化は、僕にとってはいいものだったと思います。連絡をくださった方とも、仕事が始まる前からやりとりを重ねられますし。僕は常々、共演者運、スタッフ運がすごくいい人間だと思っているんですけれど、独立してからもそれはずっと続いているな、と肌で感じることができています。

本作りを通して、自分の中にあったものを整理することができた

自身の著書「独断と偏見」を手にした二宮和也さん

最終章では、ジャニー喜多川氏が起こした問題に言及し、所属していた事務所への思いを明かすなど、赤裸々な表現もあり驚かされました。ここまでご自身の考えを見せることに、躊躇はありませんでしたか?

二宮さん これは、「会いたい人はいますか?」という問いに対して出てきた答えだったんですよね。僕が会いたい人って、基本的にこの世に存在していない人なんです。生きていたらどこかで会えると思っているので。じゃあ誰だろう、と考えた時に思い浮かんだのが彼で、「もう一度会って謝ってもらいたい」という話になりました。僕は生前の彼に対しても、ケンカや言い合いになるくらい自由に発言していたので、そういう言葉が出てきたのかもしれません。特に狙いがあったわけではなく、どんなタイミングであれ、たとえ前の事務所に所属していた時であったとしても、普通に書いていたことだと思います。

本全体に関して言えば、僕もここまで話すことになるとは思っていなくて……もっと楽しい感じかな、と思っていたんですが(笑)。質問される時の温度感に合わせて返していたら、こういう形に出来上がりました。

出来上がった今の心境を聞かせてください。

二宮さん この本が世の中に出て、読者の方に手に取っていただいて初めて感じることが大きいのかな、と思います。極端な話、今はまだ、出来上がっていないのと一緒というか。読んでくださった方にフィットする設問が見えてきた時に、自分でも「あ、そういうことなのか」と合点がいくのかもしれませんね。

僕としては、同世代の方はもちろん、仕事に対する価値観が違う、自分より上の世代や下の世代の方の受け止め方に興味があって。「説教くさい」と感じられるのか「まだまだひよっこだな」と思ってもらえるのか……どんな感想が出てくるのか、気になるところです。

自身の著書「独断と偏見」を手にした二宮和也さん

自分で読んだ時の感想は、「こんなことしゃべっていたんだ!」。昔からあちこちで言っているフレーズもあれば、今回初めて出てきたようなフレーズもありましたが、その二つはかけ離れているわけではなくて、少しずつ手前にあったり先にあったり。何となく一本のラインはとらえられているんだな、というのは発見でした。聞かれたことに答える、という作業を通して、自分の中にあったものを整理することができた、という印象ですね。

”僕は、雑誌などに関わらせてもらってきた人間でありながら、本の作り方をまったくわかっていなかったんですよ。今回、初めて原稿の修正作業をするにあたって、「黒ペンで書かないでください」と言われて、カラーペンを買いに行くところからスタートしたくらい(笑)。知らないままでもいいとは思うけれど、せっかく「作ってみませんか」と機会をいただいたからには、とことん作り方を見てみよう、と取り組みました。そんな風に関わることで、自分”らしい、純度高めの言葉で作ることができたんじゃないかな。それが、読者の方にもダイレクトに届いたらいいな、と思っています。

PROFILE
二宮和也(にのみやかずなり
1983年6月17日生まれ、東京都出身。1999年、アイドルグループ・嵐のメンバーとしてデビュー。以降、幅広い分野で大活躍。2016年、映画『母と暮せば』で第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。近作に、映画『ラーゲリより愛を込めて』『アナログ』『8番出口』、ドラマ『ブラックペアン』シリーズなど。雑誌『MORE』の連載をまとめた書籍『二宮和也のIt [一途]』(集英社)も好評発売中。

『独断と偏見』
二宮和也著
1100円
集英社新書
『独断と偏見』公式Xアカウント



二宮和也さんからの特別メッセージ動画はこちらでチェック!

Staff Credit

撮影/Sai  取材・文/藤本幸授美

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