Dear my Love…
竹下玲奈さんの
娘に受け継ぐものがたり
vol.13
母の着物
母から私へ。私から娘へ。この春生まれた、3代のものがたり

これは、母が20代の頃に着ていたという一枚。何色とも呼べない奥行きのある色みと独特の模様は、洋服にはない美しさです。今年のお正月はこの着物をワンピースのように着て、自宅に人をお招きしました。娘の卒業式には、数年前、親友の結婚式用に購入した着物で出席。さて、娘が私の着物に袖を通す日は来るのでしょうか。それは、まだ少し先のお楽しみとして……
竹下玲奈さん
母方の祖母は奄美大島で、着物の仕立てや着付けなどの仕事に携わっていました。それもあってか母は昔から着物好き。今も千葉の実家には立派な和箪(だん)笥(す)が鎮座し、着物がぎっしりと詰まっています。和服ならではの色使いや模様は、うっとりするものばかり。おしゃれ好き、生地好きの私の心に、刺さらないわけはありません。ところが、母は160㎝、私は170㎝。そう、母の着物は、私には、つんつるてんなのです。
「母の着物は私には受け継げない」。そう思って、ずっと諦めてきました。ところが数年前にふと思い立ち、気に入ったものをいくつか拝借、アレンジして着てみることにしたのです。ワンピースのように着て紐で簡単にブラウジングしたり、普段着に羽織りを合わせてアウター使いしたり。生活の一部として着物を取り入れるスタイルが、なんとも自分らしい。着物への“慣れ”として、私にはこの着方が合っていたようで、正装使いはできないものの、母の着物を思いがけず受け継ぐことができたのです。
そして先日、もうひとつ、思いがけない出来事がありました。なんと娘が、母の着物を受け継いだのです。
娘の小学校は伝統的に、袴(はかま)姿で卒業式に出席する女子生徒が多く、“和服ものアニメ好き”の娘は、ずっと前からやる気満々。着物を探すことになっていました。選択肢のひとつになるかなと思い、母の着物を見せたところ、鮮やかなオレンジ色の着物に一目惚れ。「これ以外は着たくない」と、すっかり気に入ったのです。裄(ゆき)丈(たけ)はほぼぴったり、着丈もお端(はし)折(よ)りを多めに取れば、150㎝強の娘が、問題なく着られる。オレンジに似合うベージュの袴を借り、今年の3月、母の着物で装った娘は、小学校を卒業しました。
1年ほど前に始まったこの連載のおかげで、“受け継ぐ”ことに関して、さまざまな考えを巡らせてきました。母から私、私から娘へ。3代のものがたりが、この春、生まれました。

竹下玲奈
Rena Takeshita
モデル
1981年、鹿児島県生まれ。14歳でデビュー以来、トップモデルとして活躍。群を抜いたセンスに業界内のファンも多く、“モデルが憧れるモデルNo.1”との呼び声が高い。『LEE』では、モデルとしてはもちろん、その愛情あふれるライフスタイルが読者の心をつかんでいる。
Staff Credit
モデル・スタイリング/竹下玲奈 撮影/長山一樹(S-14) 取材・文/磯部安伽
こちらは2025年LEE6月号(5/7発売)「竹下玲奈さんの娘に受け継ぐものがたり」に掲載の記事です。
竹下玲奈 Rena Takeshita
1981年、鹿児島県生まれ。14歳でデビュー以来、トップモデルとして活躍。群を抜いたセンスに業界内のファンも多く、“モデルが憧れるモデルNo.1”との呼び声が高い。『LEE』では、モデルとしてはもちろん、その愛情あふれるライフスタイルが読者の心をつかんでいる。
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