働き方、体力、メンタル…… 壁だと思っていたけれど、実はスタートでした
40代からが、おもしろい!

仕事も家庭も一応順調。でも体力が落ちたり、新しいことを始める気力が湧かなかったり……。40代は人生の曲がり角? いえいえ、本当はここからが楽しみどころ。それぞれのハードルを乗り越え、今、充実の日々を送る大人の先輩たちに聞きました。
自分にとって大事なものは? とことん悩んで選び抜いた

どんな選択も、ちゃんと選んだ結果であれば悔いは残らないはず
文筆家 ・ 料理研究家 ツレヅレハナコさん
ひとりで家を建てる。それは、自分と向き合うことだった
自分の住まいを持つ――それはLEE読者世代が、今まさに向き合っている課題です。中でも、土地を探し、一から設計して注文住宅を建てるには、やはり高いハードルがあるもの。でもそれを、40代にひとりで越えた人がいます。
食や暮らし、旅のジャンルで独自の着眼点で深掘りし、毎日が楽しくなるヒントを伝えてくれる文筆家、ツレヅレハナコさん。雑誌や書籍の執筆のほか、近年は揚げ鍋や調理バットをプロデュースするなど、活動範囲を旺盛に広げています。43歳で建てたツレヅレさんの住まいがあるのは、少し懐かしい空気も漂う都内某地。完成から5年を経た家は、持ち主同様、すっかり落ち着いた佇まいでした。
「特に大きな問題もなく、快適に暮らしてます。より家と仲よくなった、という感じもするかな」
台所に住みたい、というツレヅレさんの願望を100パーセント注ぎ込んだ家は、メインフロアの半分がキッチン、半分がリビングという思いきりのいい間取り。これまで旅した国や土地で出会った調理器具や器、食材、雑貨などが収まった居心地のいい空間からは、家は人なりという言葉が浮かんできます。思い立ったのは、40代に入って間もない頃。高い家賃を払い続けるくらいなら、マンション買っちゃえば?――仕事の旅先でかけられた言葉がきっかけでした。
「ずっと賃貸のつもりだったし、住んでいたマンションも気に入っていたし。そもそも、住むところに自分がそこまで興味があるとも思ってなかった」とツレヅレさん。しかし、住む場所に求める条件をリストアップしていくうちに、いつしか計画は拡大。土地に巡り合い、間取りを決め、什器を選んで試行錯誤を繰り返したプロセスは著書『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)に綴られましたが、「家作りは自分と向き合い続ける作業だった」と振り返ります。
「予算や条件が限られている中、ひとつひとつのことに自分の優先順位を決めなくちゃいけない。ひとりで暮らす家だから全部私が決めていいわけですが、それでも何が大事か、どちらを大切に思うかと自分に問い続けるのは、相当ハードな作業でした。でも、今となってみれば、やれてよかったなとは思いますね。問うこと、これまで知らなかった自分を知ることになったのは、すごく大きかったし」

「これが欲しい!」を詰め込んだ渾身のオーダーキッチン。ステンレスの質感もコンロの奥行きや高さも、ツレヅレさん仕様の理想形
何が大事か。どちらが優先か。問うことで知らない自分が見えた
いいこともよくないことも、思いがけないことが人生には起こり、自分が変わっていく——それはまさに、40代までのツレヅレさんが体験してきたことでした。会社員として料理関係の雑誌の編集を手がけ、行きたいところに行き、外食を楽しむ20代の日々。「友達に近況を知らせよう、くらいの気持ちで」始めたブログ上で、「ツレヅレハナコ」名義が誕生します。
「日々のことだから『ツレヅレ(なるままに)』。書きたいことだけを好きなように書けるブログは本当に楽しかったです。全世界に発信、なんて気持ちはさらさらなく、本当に友達だけに読んでもらうつもりだったから、まさかこの名前で仕事をする日がくるなんて」
軽妙で愉快な文章が評判を呼び、やがて本の執筆オファーが届くように。断ってはいたものの、30代になると心境に変化が訪れます。
「自分の仕事の可能性みたいなものを実感し始める年齢になると、考えますよね。せっかく声をかけてもらったのに、私はこのまま会社員でいいのかな、好きなことを断り続けていく人生なのかな、と」
そして、身の上にも大きな変化が。特に結婚願望もなく過ごしていた35歳の頃、飲食店でたまたま出会った男性からいきなり「結婚したい!」と熱烈なプロポーズを受けたツレヅレさん。驚いたものの、半年後には婚姻届を出して結婚生活を始めることに。しかししばらくしてパートナーが治療の難しい病気であることがわかり、自宅介護の末に彼を看取って、結婚生活はわずか3年で終わりました。
「それまでたいしてつらいこともなく生きてきて、このままいくと思っていたんですけどね。それでも、相変わらずごはんは食べなくちゃいけないし、できればおいしいものを食べたい。彼は彼の人生だったし、私は私の人生を生きなきゃと」
やがて会社を退社し、執筆生活に入ったツレヅレさん。ブログから本になっても書く方針は変わらず、好きなことを好きなように。そのエネルギーがあるからこそ、多くの人が惹きつけられるのです。

リビング。秋田で買ったモンキーポッドの一枚板に脚をつけたテーブルは、仕事の現場にも、仲間たちとの歓談の場にも
いつだって、「怖い」より「楽しそう」が勝る
ツレヅレさんにとって家を建てる前のステップとなったのが、「取材のとき、ひとりでどこへでも行けるように」と42歳で免許を取ったこと。免許を取りに行った石垣島で見つけた素敵なレストランや島の食材の豊かさも、のちに執筆する本の題材になりました。
「旅に出ればそのことを書くし、家を建てればそのことを書く(笑)。どれも、まさか自分がそんなことをするなんてと思っていたことばかりです。でも、何かやりたいことがあるのなら、いつどうなるかわからない人生、早くやったほうがいいんじゃないかなと。40代って、結婚した人は子どもが成長してきたり、働いてる人は会社で管理職になったりして、ちょっと“上がり”な感じで余裕の出てきた人も多いですよね。私自身も、それなりに落ち着いているであろうと思っていたんですが……」
意外といろいろなんですよ、とツレヅレさん。つぶやくその言葉に、実感があふれます。
「ひとつ言えるのは、家を建てることに限らず、何かを選ぶ作業を真剣にしたことがあるかどうかだけでも、その先の人生が変わってくるんじゃないかと思うんです。仕事のことでも家族のことでも、避けられない壁のような課題が出てくる時期でもあるので、そのとき自分が優先したいこと、求めることは何なんだろうと突き詰めて考えられるかどうか。壁を避けて通り過ぎると、40代なんてあっという間に終わって、『本当はあのとき決断すればよかった』『もうちょっと頑張っておけばよかった』という後悔が残ってしまう。もちろん、家作りのように楽しいことばかりじゃないし、面倒でつらいこともあるとは思うけど、ちゃんと選んだ結果であれば納得できる。よく“やらない後悔よりやって後悔を”と言いますが、それは事実なんじゃないでしょうか」
自分は、ここまでやってきた。その実感が持てたら、あとは予想外の展開を楽しむだけ。「怖いよりも『楽しそう』と思う気持ちが勝ってしまう」というツレヅレさんの冒険は続いていきます。
「50代は、今までやってこなかった仕事もやってみたいですね。自分の好きな料理人にシェフをしてもらってレストランを経営するのもおもしろそうだし、人にも楽しんでもらえるかな、とか。家は家として完成したので……でも、またフラッと海外に行っちゃうような展開もあるかもしれません」

鍋も器も、好きなものを好きなように集めただけ。それでも「人に伝えたい欲は、昔から人一倍あったんだと思います」とツレヅレさん
何が起こるかわからない人生。やらない後悔は残さないように
私の40代年表
40歳
会社を退社。初の著書『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)を上梓
42歳
取材先で建築家と出会い、家を建てる決意をする
43歳
新居完成。『女ひとり、家を建てる』出版
45歳
ジムに入会し体力作りを始める
47歳
仕込み食材を組み合わせて作る「からだ整え丼」を提唱、書籍化

原点となったブログ。現在はインスタグラム(turehana1)で日々の発見を発信
40代から心がけていること
【働き方】
興味を持ったことは積極的にSNSで発信! それが仕事につながることも
【体調管理】
ジム通いを開始。同時に健康で長生きできるよう家での食生活を見直しました
【メンタル面】
いつもは歩かない道を歩き、店に入る……新しい喜びは積極的に見つけに行きます
Staff Credit
撮影/名和真紀子 取材・文/大谷道子
こちらは2025年LEE6月号(5/7発売)「40代からが、おもしろい!」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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