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今月の注目映画情報をお届け!

映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』普通にとらわれずに生きようと心を強くしてくれる感動の快作。他3本

2025.06.08

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今月の注目映画情報をお届け!

イラスト 折田千鶴子さん

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折田千鶴子さん

映画ライター

ハマった韓国ドラマ『私の夫と結婚して』の日本版・主演の小芝風花さんにLEEwebでインタビュー。お楽しみに。

『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』

『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
©2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

普通にとらわれずに生きようと心を強くしてくれる感動の快作

クサクサした気分のときに観れば、いっぺんに湿った気分も弱気も吹き飛ぶ。ジワッとしながら「大好き!」と叫ばずにいられない、愉快で痛快な唯一無二のバディ(相棒)映画だ。

入学したばかりの大学。自由奔放でエネルギッシュなジェヒ(キム・ゴウン)は、周りから注目されやすいが群れることを嫌い、そのため完全に浮いている。一方、繊細で物静かなフンス(ノ・サンヒョン)はゲイであることを隠し、できるだけ目立たないように過ごしていた。そんなある日、クラスメイトがフンスの秘密を暴こうとし、機転をきかせたジェヒが助け船を出す。言葉を交わすようになった2人は、飲みに行き、酔っ払って意気投合! 人目を気にしてばかりだったフンスは、ジェヒの「あんたらしさがなぜ“弱み”なの?」という言葉にハッとし、いつしかすっかり大親友に。ルームシェアをして一緒に暮らし始めた2人は、思いきり青春を謳歌しはじめる。やがて兵役、卒業、社会に出た2人の環境は、少しずつ変わり始めるが——。

竹を割ったような性格、かつ陽気で楽しいジェヒの、ダメ男に惚れっぽい“玉に”が人間くさくていいが、正面から傷をくらう。逆にフンスは人間関係に臆病で、好きな人にも素直になれない。完全に凸凹な2人が、噂や陰口や失恋に傷つきながら、互いの痛みを思いやり、励まし合い、隙あらば飲んだくれてくだを巻いてはパワーチャージする、そんな日々のかけがえのないこと! 誰もが思わず“あれこそが青春だったな”と遠い目をしてしまうハズだ。一方、社会に出てから経験する理不尽や、将来を見据えての恋愛、大人になったゆえの妥協にも、“あるある”と疼きを感じずにいられない。だからこそパワハラ上司や社内の偏見を、ジェヒが鮮やかに覆してみせる姿に、思わず胸がすき、快哉を叫んでしまう。果たして相変わらず恋愛下手なジェヒの恋の行方は——。

韓国国内の映画祭で多数の賞を受賞した本作の魅力は、何といっても2人を演じた俳優の魅力が大きい。ジェヒ役のキム・ゴウンは、『破墓/パミョ』で百想芸術大賞・映画部門女性最優秀演技賞を受賞した人気女優。フンス役のノ・サンヒョンは、『Pachinko パチンコ』で注目され、本作で青龍映画賞・新人俳優賞を受賞した期待の星。そんな2人が演じる羨望を覚えずにいられない関係、鮮度の高いかけ合いやコンビネーションの妙は、きっと“最強のバディもの”として語り継がれるに違いない。互いにダメな部分を十二分に知ったうえで、そのままがいいと自分らしさを肯定してくれる親友の存在ほど、心強いものはないから。終盤はもう、泣き笑いしながら踊り出したくなる、最高にゴキゲンでハッピーなシーンが待ち受ける。感涙のまま突入するエンドクレジット(オマケ付き)に至るまで音楽にも乗せられる。国際ブッカー賞にノミネートされたパク・サンヨンの『大都会の愛し方』の中の一篇を、『アメノナカノ青空』のイ・オニが映画化。

6月13日より全国ロードショー

公式サイト

『国宝』

『国宝』
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会

カンヌ国際映画祭・監督週間出品
ゾクゾク鳥肌が立つ傑作芸道映画

任侠の一門に生まれながら15歳で父を亡くし、天涯孤独となった喜久雄は、上方歌舞伎の名門の当主に引き取られ、歌舞伎の世界に飛び込むことに。跡取り息子の俊介と兄弟のように育てられ、2人は青春のすべてを芸に注ぎ込む。しかし事故で入院した当主が、息子でなく喜久雄を代役に指名したことが、2人の運命を大きく狂わせていく。喜久雄に吉沢亮、俊介に横浜流星。身を削る稽古、初舞台、喝采を浴びるまで心臓バクバク。芸の素晴らしさ、女形の美しさに目も心も奪われる。愛憎を深める2人の鬼気迫る演技に鳥肌!『悪人』『怒り』に続き原作・吉田修一×監督・李相日が再々タッグ。

全国ロードショー中

公式サイト



『ルノワール』

『ルノワール』
©2025「RENOIR」製作委員会/International Partners

好奇心、切実で真剣、純粋と打算
目が離せない少女のひと夏の経験

『PLAN 75』で鮮烈な世界デビューを飾った早川千絵による3年ぶりの新作、カンヌ国際映画祭コンペ部門出品作。’80年代のある夏。11歳のフキ(鈴木唯)は闘病中の父、仕事と夫の世話に疲れた母の3人暮らし。感受性と想像力が豊かなフキは、大人を観察しては好奇心を膨らませる。しかし病状が悪化してゆく父と、生活に疲れた母の溝が広がり……。子どもらしい能天気さと鋭さを併せ持つ彼女の言動がおもしろく、何度もクスッと笑いつつヒヤッとさせられる。少女の視点や感性、そのユーモアと哀感のバランスに感嘆。石田ひかり、リリー・フランキー、河合優実ほか全キャストが魅力的。

6月20日より全国公開

公式サイト

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配信 ANIMATION

『チ。―地球の運動について―』

『チ。―地球の運動について―』
©魚豊/小学館/チ。―地球の運動について—製作委員会

命懸けで“真理”を求道する闘いの物語

15世紀のヨーロッパを舞台に、禁じられた〝地動説〞の研究に情熱を尽くす人々の命懸けの闘いを描く。最初こそ現代から遠い物語を難解に感じるかもしれないが、回を追うごとにドハマり必至。教義に反する研究を諦めようとしながら、〝真理を知りたい〞という本能と〝真理を守りたい〞という信念の力に魅せられる。地動説の信奉者が回を追うごとに変遷するなか、彼らを追い詰める異端審問官ノヴァク(CV:津田健次郎)の存在もツボ!

Amazon Prime、Netflixほかにて配信中

公式サイト


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2025年LEE7月号(6/6発売)『カルチャーナビ」』に掲載の記事です。

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