前編では、読者世代のお悩みリサーチで特に多くあがったバストトップとしみについてお届けした、「産後の色悩み」シリーズ。後編では、妊娠前は知らなかった、妊娠中&産後特有!? の不思議な色悩みについて、専門家の先生に教えていただきます。
お話を伺ったのは「こすぎレディースクリニック」の院長、椎名邦彦先生です。
■妊娠線にあらず! 細胞分裂の名残りの線が出現!?
高見澤 今からもう6〜7年前、私が妊娠を経験する前の話になるんですけど、ある女性タレントの方がマタニティヌード写真集を出版されて話題になった時に、取材で産婦人科の先生とお話したんです。
椎名 興味深いですね。
高見澤 その時の先生が「きれいすぎて不自然! これは写真を修正してます! 妊婦さんのお腹には、線があるのよ!」と。私が「いわゆる妊娠線ってやつですか?」と聞くと、「違うの! こう、縦に真っすぐの茶色い線が入るのよ」と教えてくれたのですが、その当時はピンと来ずで……。
椎名 お腹の中心に入る線、正中線(せいちゅうせん)ですね。
高見澤 はい。私も妊娠後、おへその上下に薄い茶色っぽい縦線ができまして、「あ、これがあの時、先生が言ってた線か〜〜!!」と気付きました。
と同時に、美しきマタニティフォト的なものは、やはりほとんど修正されているんだろうなぁ、とも気付かされた次第です……。
そして、この正中線。妊娠線に比べて、話題的な意味では存在感が薄い線ではありつつも、今回の調査では、実は結構悩んでいる人も多いことが分かりました。
椎名 正中線が濃くなるのも、前回お伝えしたように、妊娠ホルモンの増加が原因です。(妊娠をすると、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロン、副腎皮質ホルモンの分泌が急激に増加し、メラニン色素細胞を刺激して色が濃くなります)
この正中線は、もともと胎生期から成長過程で作られるもので、妊娠前から存在するものなんですが、やはり妊娠時はホルモンの影響で目立ってきます。
高見澤 胎生期から!? じゃあ、誰にでもあるのでしょうか? 私は妊娠前まったく気がつきませんでしたが……。
椎名 薄かったり、色がないだけで、実は男女ともにありますよ。「正中線」は、全身の真ん中に筋が通るように入る線のことで、胎児だった時の細胞分裂の名残りとされています。鼻の下や、人によってはアゴがふたつに割れたようになっているのも、同じものです。
高見澤 え! そんなところにも胎生期の名残りが……。妊娠中に濃くなるのが鼻の下やアゴではなく、お腹の線でよかったとも言えますね……。
この線、私の場合は出産後にものすごい黒さとなったんですよ! もう、マジックで誰かがイタズラして描いたのか? ってくらいの濃さで、なんかの罰ゲームかと思うほどでした。これは一体どういうメカニズムなんでしょうか?
椎名 色素沈着や肝斑の出方などはかなり個人差があるため、高見澤さんは正中線が特に濃くなったのでしょうか。普通は産後に濃くなることはないので、今まで赤ちゃんがいてお腹の皮膚が伸びていたのが急にしぼんだことで相対的に濃く見えていただけだと思います。
高見澤 妊娠中、お腹がものすごく大きくて、双子が中にいるのかと間違えられるほどだったので、それが急にしぼんだ反動だったんですかね……。
椎名 風船を膨らませる前に文字が濃いのに、膨らませた後は文字の色が薄くなるものの逆バージョンでしょうか?
高見澤 なるほど……。分かりやすいですね。このマジックで描いたような線、産後の里帰り中に、ボディ用のピーリングクリームを塗っていたら、黒い皮が日焼け後のように剥がれてきて……。しばらくしたら元の肌色に戻ったのですが、このようなケアは問題でしょうか?
椎名 アカスリのような荒治療でしたら逆効果ですが、ちゃんとしたボディ用のピーリングであれば、肌代謝が低下したお肌を活性化させてあげるので、よいのではないでしょうか。その後の保湿ケアを怠らなければいいと思います。
高見澤 それならよかったです。脱皮のようで大丈夫なのか? と心配で、なんとなく人には言えずに今日まで生きていたもので……。
■黒ずみ……実はもう一対の「乳」が原因!?
高見澤 それともうひとつ、またもカミングアウトしますが、妊娠中にやたらとワキが黒っぽくなりまして。産後も3ヶ月くらいは、絶対にノースリーブで外には行けない状態でした。今回の調査でも同じように悩んだ経験を持つ人が多く、「妊娠に関係ない部位なのになぜ黒ずむの?」という疑問の声もあがっていました。
椎名 わきはメラニン産生が多い部位ですし、非常に敏感で、乾燥や脇の剃毛だけでも色素沈着しやすい場所です。妊娠中のホルモンの影響で色が濃くなるという人も多いでしょう。
特に副乳のある方は脇の部分が少し盛り上がり、副乳のない方に比べてメラニン色素が集まりやすく、濃くなっていきます。
高見澤 副乳!? 私、下着屋さんで「お客様はワキに副乳がありますので、カップの中にちゃんと戻してあげてくださいね。二の腕にも流れちゃってますよ」などと言われていて。
椎名 副乳は、一対以上の乳房を持っていた頃の名残りで、胎生期に退化しきれずに残ったものです。妊娠中に色が濃くなったり、大きくなって存在に気付く人が多いです。産後に母乳が出る人もいると言われていますよ。
高見澤 そうだったんですね。下着屋さんはムダ肉を副乳と勘違いしてるんですかね……。私の場合、単に胸から流れたワキ肉なのか、本物の副乳なのかは不明ではありますが、すごく神秘的な話ですね。正中線といい副乳といい、普段は忘れられている、胎成期から存在するものに、妊娠をきっかけに気がつくなんて。
■今日からできる! 妊娠&出産後の色悩み対策
高見澤 前編ではクリニックでの治療法について伺いましたが、妊娠、産後の色悩み対策として、日常生活で注意すべきことはありますか?
椎名 保湿をして摩擦を防ぎ、肌の代謝を良くすることです。逆によくないのは、身体を洗う際にゴシゴシ擦る行為。
高見澤 ついサッパリ感を求めて、ナイロンタオルでゴシゴシ洗ってしまうのですが……。
椎名 色素沈着を助長する行為ですよ。ナイロンタオル黒皮症(ナイロンタオルを使用する事により身体の黒ずみが出てくる状態)という病名もあるくらいで、ナイロンタオルよりも自然のコットン素材で身体を洗うこともよいと思います。
高見澤 早速帰りにコットンのタオルを買って帰りますね……。
椎名 それと、産後に子供が大きくなると外出の機会も多くなりますが、肌の露出部位はUVケアがとても大切です。長い目で見るとUVケアは年間を通して必要ですし、出産後は日傘をさすことはなかなか難しいため、帽子をかぶったりするのは大切だと思います。
高見澤 秋にさしかかり、もう帽子を手放してしまったところですが、公園ではまだまだ帽子は必須のようですね。
椎名 はい。小さなお子さんがいらっしゃる方で美容施術に来る方は、大抵、額が特にしっかり日焼けされている方が多い印象を受けます。
高見澤 額……意外ですね。確かに、日焼け止めを塗るのを怠ってしまう部位かもしれません。ほかに、多忙な育児生活でも、手軽にできることはありますか……?
椎名 抗酸化力、血行促進作用のあるサプリメントがおすすめです。マルチビタミン(B群)、ビタミンC、E、コエンザイムQ10などですね。
高見澤 妊娠中は胎児、授乳中は子供のための栄養のみに集中しがちですが、落ち着いたら母自身のためのサプリメントもとりたいものですね。
先生のお話を伺って、色々な謎がとけたり、勉強になりました。これからもよろしくお願いいたします!
■「こすぎレディースクリニック」椎名邦彦院長プロフィール
聖マリアンナ医科大学卒業
同大学院博士課程修了
カナダ・モントリオールマギル大学博士研究員(不妊治療)
聖マリアンナ医科大学病院産婦人科医局長
メディアージュクリニック青山院長(美容皮膚科・婦人科)(2007年-2014年)
東京女子医科大学美容医療科
愛育病院(東京・港区)など産科医療に20年以上携わるほか、不妊症治療専門クリニックにて最新治療に携わり
2016年3月 こすぎレディースクリニック開院、現在に至る
■「こすぎレディースクリニック」
2016年3月、武蔵小杉にて開院。基本姿勢は『癒して治す』。
最新の産婦人科・美容医療に、東洋医学などの代替医療やアンチエイジング医療を取り入れながら、女性がいつまでも健やかで美しくあるための医療を提供。
イラストレーション/烏山ミライ
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高見澤恵美 Emi Takamizawa
LEEwebエディター・ライター
1978年、埼玉県生まれ。女性誌を中心に女性の性質や人間関係の悩みに迫り、有名無名千人超を取材。関心あるキーワードは「育児」「健康」「DIY」「観劇」など。家族は夫と4歳の息子。