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「復職の壁」どう乗り越える? 年収の壁、ブランクの壁、夫ブロックの壁…見えざる壁がこんなに!

出産・育児の後の「復職」を考え時に知っておきたい

いま話題の「年収の壁」、越えると損? 知っておきたい2つの「壁」についてお金のプロが解説!

2025.03.14

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“123万円の壁(旧103万円の壁)” “106万・130万円の壁”

今、話題の「年収の壁」、越えると損するの?

ニュースなどでも頻繁に耳にする〝年収の壁〞。越えてしまうと、損をしてしまうという漠然とした不安が。本当に越えないほうがいいの? お金のプロに聞いてみました(2025年1月時点)。

Index
  1. 今、話題の「年収の壁」、越えると損するの?
  2. 損するから……と働き控えている方はまず仕組みを理解して
  3. 三島芳史子さん
  4. 知っておきたい2つの「年収の壁」
    1. 106万・130万円の壁= 社会保険料の壁
    2. 123万円(旧103万円)の壁 = 所得税の壁
  5. 特に理解しておきたいのは106万・130万円の壁(= 社会保険料の壁)
  6. 106万・130万円の壁(= 社会保険料の壁)を越えた場合のメリット は?
    1. 傷病手当金がもらえるように
    2. 出産手当金がもらえるように
    3. 将来の年金の増額
  7. 106万・130万円の壁(= 社会保険料の壁)を越えた場合のデメリット は?
    1. 収入の約15%が社会保険料に
    2. 夫の社会保険の扶養から外れる
  8. 移行期間の特別措置も要チェック!
  9. 教育費や老後の備え、キャリアのために、年収の壁は気にせず働いてOK
    1. ●38歳で復職、年収の壁を越えて働いた場合の世帯収入差
    2. ちなみに退職せず、継続して正社員の場合
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損するから……と働き控えている方はまず仕組みを理解して

三島芳史子さん

教えてくれるのは

三島芳史子さん

みしま・かしこ

ファイナンシャルプランナー

FPとして、これまで500世帯以上の相談実績を持つ。LEE世代の共働き家庭の相談を中心に、中長期的なサポートをしている。自身も夫と長女、長男の4人家族。

共働き家庭の家計の相談に多く乗る三島さん。私たちが知っておくべき「年収の壁」とは?

「大きく分けると①所得税の壁と②社会保険料の壁の2種類があります。①の所得税の壁はこれまで103万円の収入を越えると所得税が課税されるというものでしたが、2025年1月から123万円に引き上げに②の社会保険料の壁は勤務時間や事業所の規模により106万円か130万円のどちらかが壁となります。これまで夫の社会保険の扶養に入っていた人でも106万円(または130万円)を越えると夫の扶養を抜けて社会保険料を自分で払うことに。越えることで実際に『手取りが減った!』と感じるのは、こちらの社会保険料の壁です」(ファイナンシャルプランナー 三島芳史子さん)

現在は制度が見直されている過渡期。情報をアップデートしながらの対策が必要だと言います。

「特に社会保険料の壁は、今度の制度改正によっては収入ではなく、週20時間以上の勤務で加入対象になる可能性も。目先の手取りだけを見て『損をするから』と思うのではなく、越えることのメリットを知れば、働き控える選択肢以外も見えてきます。将来の支出を見据え、働く時間を増やす、キャリアアップして時給を上げるなど、長い目で、年収の壁について考えてみてはいかがでしょうか」(ファイナンシャルプランナー 三島芳史子さん)

計画中の夫婦のイラスト

知っておきたい2つの「年収の壁」

106万・130万円の壁= 社会保険料の壁

配偶者の扶養から外れ、社会保険料を負担する必要があるライン。51人以上の従業員、週20時間以上勤務などの条件だと106万円、小規模の事業所だと130万円が壁に。負担額は保険組合によって異なるものの、年収の15%ほど。手取りはこの壁を越えた直後に、ガクッと減ってしまいます。例えば、社保を負担しない年収105万円の人の手取りが103万円なのに対し、106万円で社保を負担し始めた人の手取りは90万円になってしまいます。

123万円(旧103万円)の壁 = 所得税の壁

年収には、さまざまな控除が引かれたうえで所得税が課税されます。パートの場合、2025年1月から基礎控除額と給与所得控除額が増え、控除額合計は103万円→123万円に。123万円を越えたら所得税の支払いが発生します。例えば、夫の社保の扶養に入る年収125万円の妻の所得税は、1000円{(125万円-123万円)×所得税率5%}となります。収入増に応じて支払いが増えるという点で、大きな障壁にはなりません。



年収の壁、越えると損するばかりじゃありません!

特に理解しておきたいのは106万・130万円の壁(= 社会保険料の壁)

106万・130万円の壁(= 社会保険料の壁)を越えた場合のメリット は?

傷病手当金がもらえるように

病気やけがで働けないときの安心材料に

病気やけがで働けない場合に支給されるのが〝傷病手当金〞。年収の壁を越えて、自分で健康保険に加入すると受け取ることが可能に。傷病が理由で会社を連続して3日間休むと、4日目から最大で1年半支給されます。傷病手当金としてもらえるのは月収の約6割が目安です。いざというときの安心材料になります。

出産手当金がもらえるように

申請すれば、出産で休んだときのお金を支給

産前産後に仕事を休み、収入がなくなった場合に支給されるのが〝出産手当金〞。壁を越えて健康保険料を自分で納める、被保険者のみが、申請すると受け取ることができます。出産日より42日前から、出産日の翌日以降の56日までが範囲となっていて、会社を休んで給与の支払いがなかった期間を対象としています。

将来の年金の増額

自分で支払うと将来もらえる年金額が増える

社会保険料には、健康保険料だけでなく、厚生年金保険料、
雇用保険料、介護保険料(40歳以上)も含まれます。夫の扶養を外れ、自分で厚生年金料を支払うので、払った分だけ将来受け取る年金額が増えていきます。一時的に手取りは減ったとしても、老後の安心にもつながるので大きなメリットに感じる人も。

106万・130万円の壁(= 社会保険料の壁)を越えた場合のデメリット は?

収入の約15%が社会保険料に

壁を少し越えただけで、手取り額が大幅減

年収の壁を越えて社会保険料を負担することで、手取り額がガクッと減ることをデメリットに感じる人は多いはず。加入する保険組合によって若干異なるものの、収入の約15%の社会保険料を支払うことに。例えば、社保を負担しない年収105万円の人の手取りが103万円なのに対し、106万円で社保を負担し始めた人の手取りは90万円になってしまいます。手取りが106万円を越えるのは年収が125万円以上になったとき。壁を越えるなら、いっそのこと一気に越えるのも手です。

夫の社会保険の扶養から外れる

夫の会社の社会保険をよく確認して

夫の扶養から外れることで、社会保険料の発生以外にもデメリットがある場合も。大きいのは、夫の会社の社会保険の〝付加給付〞が充実している場合です。〝付加給付〞とは、医療機関で支払った額がひと月で上限額を越えた場合に越えた金額を支給する〝高額療養費制度〞に上乗せして、自己負担限度額を越えた費用を払い戻す制度。大手企業などの健康保険組合で適用されることがあるので、夫の会社の社会保険制度をいま一度確認して。

移行期間の特別措置も要チェック!

  • キャリアアップ助成金で手取り減をカバー
  • 一時的に壁を越えても扶養内に

2025年は移行期間ということで、政府の助成金やフォローの制度が充実。ひとつは、キャリアアップ助成金制度で、壁を越えると支払わなければいけない約15%ほどの社会保険料を、登録事業所が申請取得する助成金でカバーできます。1年間は手取り額が減らないので、この間にさらなる収入アップを目指す後押しに。もうひとつは、年末の一時的な繁忙期などで社会保険料の壁を越えたとしても、事業主の証明があれば夫の扶養内での認定が可能になります。

社会保険料の壁を越えると一時的に手取りが減りますが、一旦壁を乗り越えると生涯の収支が大きく変わる可能性も! メリットも考えて、働くことを前向きにとらえてみて!

ファイナンシャルプランナー 三島芳史子さん

年収の壁をFPの視点から見ると

教育費や老後の備え、キャリアのために、年収の壁は気にせず働いてOK

●38歳で復職、年収の壁を越えて働いた場合の世帯収入差

扶養内で働く 年収100万円 給与 2.52億円 退職金 2300万円 年金 7700万円 約 3.52億円
扶養を外れる 年収200万円 給与 2.68億円 退職金 2300万円 年金 8700万円 約 3.78億円

「妻が復職して年収の壁を越えた場合の世帯の生涯所得は、壁を越えない場合と比べて大きな差が生まれます。お金の面から言えば、将来的な出費や老後に備えて壁を気にせず収入を増やすのがおすすめです。目先の手取りにとらわれず、中長期的な視点で収支を考えてみて」(ファイナンシャルプランナー 三島芳史子さん)

ちなみに退職せず、継続して正社員の場合

給与 3.48億円 退職金 4500万円 年金 9900万円 約 4.92億円

出典:内閣府「女性の出産後の働き方による世帯の生涯可処分所得の変化」(試算)
※夫婦は同年齢とし、22歳でフルタイムの正社員として就労開始。妻は29歳で第1子出産に伴い退職。32歳で第2子を出産。38歳で復職し、夫婦それぞれの退職は65歳。その後、夫は88歳、妻は93歳まで生きると仮定。

Staff Credit

イラストレーション/竹井晴日 取材・文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2025年LEE4月号(3/7発売)「『復職の壁』どう乗り越える?」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。

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