甲斐みのり、キャシー・パーク・ホン、村田吉弘
【今月おすすめの本】石田夏穂『ミスター・チームリーダー』他3編
2025.01.05
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石井絵里さん
ライター
東京国立博物館で催されていた「はにわ」展へ。約1750年の時を超えて巡り合えたはにわにうっとり♡
『ミスター・チームリーダー』
石田夏穂 ¥1650/新潮社
100点満点に縛られそうなときに、笑いとツッコミを入れてくれる物語

毎日を効率よく過ごすことに興味はあるものの、完璧ではない部類の私・ライター石井。この間も息抜きに見たスマホに時間を取られ、その後、慌ただしくやるべきことに着手。そして「エクササイズの10分動画、今日もやってないわー(たった10分なんだが。この世って不思議……)」と思いながら眠りにつきました。完璧とは、ほど遠いですね。とはいえ凝り性な部分もあるので、ピラティスにはまっていたときは、個人レッスンとグループレッスン、2つの教室をかけ持ちしていたっけ。隙間時間を見つけてボディメイクに励む日々は100点に近かったけど、どことなくせわしなかったなあ。
今月の一冊『ミスター・チームリーダー』の主人公・後藤は、31歳の男性会社員。大手リース会社の係長を務めるかたわら、趣味のボディビル大会で入賞を目指す日々。「しごでき(仕事ができる)」なうえに、私生活でも向上心に燃えている。こりゃ毎日ハッピーなこと間違いない!と思いきや、後藤の心の中は怒りや焦りだらけ。ボディビル大会出場のための体重管理と減量がうまくいかず、職場では部下たちのマイペースな働きぶりが、彼のイラつきに拍車をかける。そこで後藤は、彼が使えないと思った人を異動させ、部署内の合理化を進めることに。すると“ムダな人材を削る”たびに、体重が減り、目指している引き締まった体へ近づくことに気づくが――。
理想や希望を持つのはいいこと。でも「効率よく」「使える」という価値観は、バランスを考えないと、偏った状況を招く可能性があるのかも。自分が感じた「必要ない」は、誰かには「すごく大事」かもしれないし、逆もしかり。上司や後輩の助言を聞かず、ムダと思い込んでいるものを排除する後藤の姿には、おかしみすら漂う。彼の言動にツッコミを入れつつも、「何かをコントロールしすぎると自分がつらくなる」「適度なゆるさも必要」と感じさせてくれるこの小説。満点を目指しすぎてパンクしそうなときに読むと、いい抜け感をくれます。
『旅のたのしみ』
甲斐みのり ¥1100/サンクチュアリ・パブリッシング

クラシックホテル、お菓子、手土産などを題材に執筆を行っている著者。仕事柄、各地を旅することも多い彼女が、印象に残ったモノやことについて綴った随筆集。和歌山県の田辺で魅力を知ったティーソーダ、祖母の思い出の地・広島県の呉を訪れた際の忘れがたい経験。小さなエピソードに、おいしいもの、名産品、そして土地への愛がぎゅっと詰まっています。
『マイナーな感情:アジア系アメリカ人のアイデンティティ』
著:キャシー・パーク・ホン 訳:池田年穂 ¥2750/慶應義塾大学出版会

さまざまな人種が移住し、社会を構成するアメリカ。その中でもアジア系アメリカ人は、マイノリティとしても無視されがちな存在。韓国にルーツを持つ著者が、アジア系アメリカ人の歴史的な立ち位置と自らの生い立ちも交えつつ、複雑な思いを描いたエッセイ。視野を広げ、物事を考える力を与えてくれます。
『ほんまに「おいしい」って何やろ?』
村田吉弘 ¥1980/集英社

さまざまなメディアにあふれる安易な「おいしい」に、疑問を投げかける京都の老舗料亭「菊乃井」3代目主人の村田さん。著書の中では、幼い頃の食事経験、若き日のフランスでの修業時代、初めて店長を任されたがお客さんが来なかった苦労時代、その後の和食を世界に広める活動などを通して「おいしさ」の本質を追求。「料理」を、あらためてきちんと味わいたくなる一冊。
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2025年LEE1・2月合併号(12/6発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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