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KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、最近とみに通い詰めるようになったという韓国のアイテムです。
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21.
[小家具]Small furniture
Made in:Korea
Item:Korean small antique furniture
韓国骨董の小家具
床座文化ならではの手頃なサイズ感と、素朴ながら鮮やかな意匠が魅力
初渡韓は、実は昨年。韓国の工芸や骨董にはずっと興味があったけれど、これまで不思議と、訪れるきっかけがなかったのです。一度出かけると弾みがつき、すでに渡韓歴は5回ほど。今や、現地の骨董街を自在に歩き回っています。
さて、通常ヴィンテージ家具を手に入れるとなると、なかなかの勇気が必要。ところが韓国に関しては、そのハードルがぐっと下がります。それは、小ぶりな骨董家具がたくさんあるから。韓国は日本と同じく床座の文化を持つため、おのずと床に座った状態で使う背の低い家具が多く見つかります。シンプルに徹した日本の古い家具と比べると、カッティングによる意匠の見せ方が秀逸で、どこか丸みを帯びた素朴さ、大らかさも魅力。洋のテイストのインテリアと組み合わせると、ほどよい加減に東洋の香りが漂い、手軽にこなれたミックス感が楽しめるのです。
中でも取り入れやすいのは「ソバン(小盤)」。脚付きの小さなテーブルで、日本でいう箱膳のような使い方をされていたもの。基本は丸形ですが、私は四角も好み。現在わが家にあるソバンは、おそらく食事用ではなく、薬と水を置くような、高貴な階級の人が使っていた品のようです。
ひとつあると何かと重宝で、壁づけにすれば“床の間”のような、特別感ある空間を作り出せますし、飾り台的な役割も得意。日本国内のヴィンテージショップでの取り扱いも増えているので、見つけたらぜひ手にとってみてください。
昨年、韓国の骨董街で購入。本来は書道の道具を入れるものだとか。「こういった卓上家具は、飾り金具や螺鈿など豪華な装飾が施されたものも多いのですが、シンプルなものを探して手に入れています。私は御朱印帳などを収納」(石井佳苗さん)
今年、現地で購入した小机。「玄関先にお気に入りのガラスランプとともに置けば、おもてなしの印象に。日本の文机よりも小ぶりで、わが家の壁の幅にぴったりでした」(石井佳苗さん)
Item:
Soban
Korea
部屋の一角に、趣きある小家具をひとつ。周囲の空気がゆるやかに変わります
ひとり用の食事テーブルとして、昔の韓国では日常的に使われていたソバン。日本の箱膳よりやや高さがあるのは、韓国特有の、器を持たずに食事をする文化が影響している。こちらは石井さんが日本国内のアンティークショップで5年ほど前に購入。「現地でも、年代が古くて質のいいものは手に入れづらくなっているそう。見つけたときが買いどきだと思っています」(石井佳苗さん)
Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2025年LEE1・2月合併号(12/6発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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