3年ぶりに、名作『モーツァルト!』が帝国劇場へ帰ってきた!
俳優・古川雄大さんとSixTONESの京本大我さんによる、ダブル主演で話題のミュージカル『モーツァルト!』が、2021年以来の約3年ぶりに帝国劇場で開幕しました。
『モーツァルト!』は、「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」というテーマをベースに、高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”35年の生涯に迫り、2002年の日本初演以来、日本のミュージカルファンを魅了し続けてきた名作。脚本・歌詞をミヒャエル・クンツェ氏、音楽・編曲をシルヴェスター・リーヴァイ氏のゴールデンコンビによる大ヒットミュージカルです。
この記事では、8月19日に行われた、京本大我さんがヴォルフガング・モーツァルト役を演じるゲネプロの様子を詳しくお届けします。
※この日のダブルキャスト、トリプルキャスト出演者は、ヴォルフガング:京本大我さん、ヴァルトシュテッテン男爵夫人:香寿たつきさん、アマデ:白石ひまりさんが演じています。
京本さん「守りに入らずに、“攻める”気持ちで行きたい」
まずは、ゲネプロ前に届いた、京本大我さんのコメントを全文ご紹介!
「あっという間の稽古期間でした。(古川)雄大君をはじめ、皆さん優しくて、色んな角度から多くのアドバイスをくださいました。今まで演じてこられた方々の事を考えると、プレッシャーはあるのですが、僕にとっては初挑戦なので、作品の歴史にリスペクトを持ちながら、29歳の京本大我が出来るヴォルフガングへのアプローチを大事にしようと思っています。未熟さもたくさんありますが、それも含めてさらけ出して、自分なりに自信を持ってお届けしたいなという気持ちです。舞台はナマモノですし、帝劇で主演も初めてなので、そういう怖さはありますが、それを忘れられるくらいヴォルフガングに熱中してスタートを切れたら、と思っています。なるべく守りに入らずに、“攻める”気持ちで行きたいです。ヴォルフガングだけでなく、京本大我自身の心もあえて尖っていたい。腰が引けたくないし、心持ちだけは常に強く前を向いていたいです。勿論、謙虚さは持ちつつも、舞台に挑む上での“尖り”が、ヴォルフガングの役柄にも良い影響を与えられたら良いなと思います。
『エリザベート』を経て、久しぶりに帝劇に帰ってきたので、重みを知っているからこそ感じるプレッシャーと、逆に噛み締められる想いがあります。僕が帝劇に立つことを待ってくださっていた方々へは恩返しになると思いますし、何より作品が本当に素晴らしいので、観ていただける事が本当に嬉しいです。歴代の素晴らしいヴォルフガングがいらっしゃる中で、僕はかなり初々しく映ると思うんですけど(笑)、おこがましいかもしれませんが、何回も観ていらっしゃる方がご覧になっても、新しい作品を観ているくらいの新鮮さを感じていただけたら嬉しいです。荒削りな部分も沢山ありますが、頑張っていきたいです!」
劇中写真とともにストーリーをご紹介
自身の才能に苦悩するモーツァルト35年の生涯【ネタバレを含みます】
ザルツブルクの宮廷楽士であるレオポルト・モーツァルト(市村正親さん)と、娘ナンネール(大塚千弘さん)は、錚々たる名士たちが集まる貴族の館で、幼い息子がピアノを弾くのを目の当たりに。5歳にして作曲の才能が花開いた、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、”奇跡の子”と呼ばれていました。
歳月は流れて、ヴォルフガング(古川雄大さん/京本大我さん)は、故郷ザルツブルクで音楽活動を続け、傍にはいつも“奇跡の子”と呼ばれた頃のままの “才能の化身・アマデ”が寄り添い、作曲にいそしんでいました。
しかし、青年ヴォルフガングは、ザルツブルクの領主であるコロレド大司教(山口祐一郎さん)に仕えて作曲をすることに嫌気がさし、「大司教に逆らうな」という父と意見が衝突。ついには、自分を束縛する大司教に、怒りを爆発させてしまいます。
ヴォルフガングは、名声と自由な音楽活動を求めて、母親と共にザルツブルクを出ますが、幼い時のように持て囃されることはありませんでした。逆に、旅費を使い果した上に、旅先で母を亡くしてしまいます。
失意のうちに故郷に帰ってきたヴォルフガングは、幼少から彼の音楽の才能を見抜いていたヴァルトシュテッテン男爵夫人(涼風真世さん/香寿たつきさん)の援助を受けて、ウィーンで音楽活動をする決意をあらたにします。
ヴォルフガングは、ウィーンに移り住み、知人のウェーバー一家の娘であるコンスタンツェ(真彩希帆さん)との愛情を急速に深めていきますが、一方で大司教の謀略によって、演奏の機会をことごとく絶たれてしまいます。ヴォルフガングは再び大司教と対決し、二人の関係はついに決裂。
大司教との決裂後、ヴォルフガングはウィーンの社交界で話題を呼んでいました。
コンスタンツェとも結婚。仕事も精力的にこなし、ヴォルフガングにとって、故郷に残してきた父と姉の存在がどんどん薄くなるのでした。
レオポルトは、息子の成功を誇りに思う反面、その思い上がりを感じ取り苦言を呈しますが、ヴォルフガングは聞き入れようとしません。二人はついに心を通い合わせることなく、レオポルトはウィーンを後にするのです。
そして、オペラ『魔笛』を成功させ、音楽家としての頂点を極めるヴォルフガングの前に、謎の人物が現れ『レクイエム』の作曲を依頼するのですが…。
初々しくも、“尖った”ヴォルフガングを好演
京本さんの演技は、自身がこの舞台に立てる喜びと、“芸術家は自由でなければ!”というヴォルフガングの思いがリンクするかのよう。前半の自由な音楽活動を求める様子は、とても生き生きとした笑顔で演じていました。
また、才能への自信や、音楽への情熱を表現する少しやんちゃなパフォーマンスを見せる一方で、コンスタンツェとのロマンスシーンでは、観客をうっとりさせるほどの色気たっぷりな一面も見せます。
本作の代表曲『僕こそ音楽』や『影を逃れて』など、歴代の先輩たちも歌った難易度の高い楽曲も、伸びやかで透明感のある歌唱や力強い歌唱で、堂々と披露。
終盤には、才能と向き合うちに孤独で深い闇へ落ちていく様子を体現。狂気に憑りつかれたようなヴォルフガングは危機迫るものが!
自由を求め、苦悩しながら自分の才能とともに生きる、新しいヴォルフガングを存分に熱演していました。
白石ひまりさん、星駿成さん、若杉葉奈さんがトリプルキャストで演じる、“才能の化身”のアマデは、ヴォルフガングの中に生きているもの。
“芸術家は自分に厳しいものだ”という父の教えに従って生きていて、自由を求め遊び惚けるヴォルフガングに対して、つねに羽ペンを動かし、曲を書くようにアピール。ヴォルフガングがどんな状況にあっても寄り添い、ひたすら譜面と向き合う様子と、セリフがなくとも何かを訴えかける視線や表情は、つい目が追ってしまうほど惹き込まれました。
思い合っているはずなのに…家族のすれ違いが切ない
『モーツァルト!』の初演からレオポルトを演じている市村正親さんは、重厚感が溢れていました。息子を愛し、才能を無駄遣いしてほしくないという父親の想いが、表情や声量、歌声からひしひしと伝わってくるものの、ヴォルフガングには届かず。とうとうレオポルトが亡くなるまで分かり合うことはありませんでした。
大塚千弘さんが演じる姉・ナンネールからは、弟の才能を信じ、また彼のことを理解しようと努めている様子が感じられる一方で、弟の才能に嫉妬し、それを家族のためには使おうとしないことを悔やみ悲しむという複雑な感情が伝わってきました。レオポルトとナンネールのヴォルフガングへの愛がしっかりと描かれていることで、どんどんすれ違っていくモーツァルト家のやるせなさがより一層際立っていました。
ヴォルフガングの妻・コンスタンツェ役の真彩希帆さんは、ヴォルフガングと出会い、恋に落ち、次第に心が変化していく過程を澄んだ美しい歌声で表現。しかし、音楽家の妻として、夫にインスピレーションを与えられる存在でありたいという理想と、夫に寄り添い理解することができない現実とのギャップにもがき苦しむ様子を艶っぽく演じていました。
豪華なキャスト陣の熱い演技と、煌びやかな衣装や世界観をあらわしたセット、さらにオーケストラの生演奏もプラスされたステージは、一瞬で観るものを魅了し、終始、『モーツァルト!』の世界に没入させ、あっという間に時間が過ぎさりました。
京本大我さん演じるヴォルフガングがあまりに素晴らしく、古川雄大さんのヴォルフガングも目に焼き付けたいとの贅沢な願望が湧きました。きっと古川雄大さんのヴォルフガングを観た方もそう思うことでしょう。ふたりのヴォルフガングは、様々なキャストの組み合わせによる化学反応で、回を重ねるごとに、より魅力的に進化していくはずです。チャンスのある方は、この『モーツァルト!』の世界をぜひ劇場で味わってみてください。
ミュージカル『モーツァルト!』
2024年
8月19日(月)〜9月29日(日) 東京・帝国劇場
10月8日(火)〜10月27日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
11月4日(月)〜11月30日(土) 福岡・博多座
※チケット発売情報や、各公演の出演するキャストのスケジュールは、公式ホームページでご確認ください。
会見の様子はこちらをcheck!
Staff Credit
撮影/新谷真衣 取材・文/宮平なつき
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