舞台 『ボクの穴、彼の穴。W(ダブル)』に出演
【窪塚愛流さんインタビュー】戦地に残された敵同士の2人が、僕には同じ人物に思えました
2024.08.22
Culture Navi
カルチャーナビ : 今月の人・今月の情報
戦地に残された敵同士の2人が、僕には同じ人物に思えました
窪塚愛流さん
2021年から本格的に俳優の活動を開始、この数年で作品の中で演じる役も存在感も、どんどん大きくなってきた窪塚愛流さん。現在、W主演を務めた映画『ハピネス』も公開中と破竹の勢いに乗り、ついに初の舞台に挑戦します。しかも2人芝居という、なかなかハードルの高い内容。窪塚さんも最初は、「ごめんなさい、できません!」と思ったそう。3回ほど逡巡を繰り返す中で脚本のおもしろさと、演出のノゾエ征爾さんが寄り添ってお話ししてくださったことへの安心感から決意。そこから舞台に立つ自分を想像した感覚が、さらに背中を押したと語ります。
「ノゾエさんの演出は、どこか“特別感”がある。あの刺激的な劇空間に自分がいる“うれしさ”が、何が起きるかわからない怖さを上回って」
その舞台『ボクの穴、彼の穴。W』で窪塚さんは、戦場に残された最後の一人、ボクを演じます。敵陣地にも、彼が一人。
「穴の中から相手をうかがう敵同士の物語で、観客の皆さんからは2人の兵士が見えますが、ボクには相手が見えません。もし自分が本当に兵士になって同じように戦場に立ったら、生きるか死ぬかの中で、こんなふうに自分自身との対話をするんだろうな、と思いました。本作を通して新たな視点を知り、戦争に対する見方も変わり、俳優としても大きな知恵と経験を得られると感じています」
セリフの中では特に、「コンビニってまだあるのかな」というセリフをおもしろいと感じたそうです。
「背景が現代だと僕ら世代にもすごく想像しやすくなるし、きっと自分も(同じ状況下なら)同じことを考えるな、と。観客の皆さんもこのセリフを聞いて、僕が初めて読んだときと同じ感情になるのかな、どんなふうに言おうかな、といろいろと考えています」
上演は9月のため、稽古の開始もまだ先ですが、少しずつ台本を読み込もうとしているとか。
「膨大なセリフ量なので、早めに読み込み始めたほうがいいな、と。読みながら思ったことや気づいたことを台本の白紙部分にメモしていくのですが、すでに2度目で新たに感じることがありました。読むたびに発見することもあるので、それを書き加えていき、きっと本番前には真っ黒になっているんじゃないかな」
信じ難いことに戦争が身近な問題である今、勝手に妄想を膨らませて相手を“モンスター”だと思い込む2人が発する言葉は、現代を生きる私たちにも突き刺さります。
「生まれた場所や生きてきた国は違っても、同じ人間。僕にはボクも彼も同一人物に思えました。家族もいれば、読む戦争マニュアル本も同じ。それを知らずに勝手に恐れを膨らませて。僕が勝手に舞台を怖がっていたことにも通じますが、何事もやっぱり自分の目で見て確かめないといけないな、と」
現在20歳の窪塚さんに、これからも失いたくないもの、これから得ていきたいものを聞きました。
「よく周りからは“背は伸びたけど子どもの頃から変わらない”とか“相変わらずピュア”と言ってもらえます。そこは大切にしたいと思うところです。これからも挨拶や笑顔を大切にし続けながら、いつかイケオジになりたくて(笑)。一言二言だけで、人生を謳歌してきた深みと説得力を感じさせるような。だからいろんな人生経験を積んでいきたいなと思っています」
PROFILE
2003年10月3日、神奈川県出身。映画『泣き虫しょったんの奇跡』(’18年)でスクリーンデビュー。出演作にドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』『あたりのキッチン!』(ともに’23年)、映画『麻希のいる世界』(’22年)、『少女は卒業しない』(’23年)、『ハピネス』(’24年)など。『恋を知らない僕たちは』が8月23日公開予定。
Instagram:airu_kubozuka
X:airu_kubozuka
公式サイト:https://tencarat.co.jp/kubozukaairu/
『ボクの穴、彼の穴。W(ダブル)』
戦場に残された敵対する2人の兵士。それぞれの穴の中で孤独に苛まれ幾度も限界を迎えながらやがて「かれ」を知ることで、勇気を持って新たな未来へと踏み出す希望の物語。共演に篠原悠伸。同じ2人舞台を、井之脇海×上川周作チームと交互に上演。東京公演:9月17日(火)〜9月29日(日)スパイラルホール(スパイラル3F)/大阪公演:10月4日(金)〜10月6日(日)近鉄アート館
問い合わせ=☎︎03・3327・4312(大人計画)
Staff Credit
撮影/山崎ユミ ヘア&メイク/大和田一美(APREA) スタイリスト/上野健太郎 取材・文/折田千鶴子
こちらは2024年LEE8・9月合併号(7/5発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。