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窓辺に、絵をかける感覚で

「ポジャギ」こまやかな手仕事の跡が美しい1枚【石井佳苗さんのインテリア名品】

  • 石井佳苗

2024.08.23

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連載

KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items

スタイリスト

石井佳苗の「インテリア名品」

テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は韓国のポジャギ。古いものも新しいものも、それぞれに魅力的です。

石井佳苗さん

石井佳苗さん

Kanae Ishii

スタイリスト

「カッシーナ・イクスシー」にて10年間勤務後、独立。雑誌や書籍、広告など多分野にわたる活躍で知られる。住まい作りの感覚を磨くヒントを綴った近著『Heima』(扶桑社)も好評。

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17.

[布]Fabric

ポジャギ

Made in:Korea
Item:Bojagi
ポジャギ

ヴィンテージにはアート的な存在感を、新たなものには日用品らしい親しみを求めて

ポジャギとは、韓国語で「ものを包む布」。いわば風呂敷ですね。古い端切れをパッチワークのようにつなぎ合わせたもの(チョガッポ)のイメージが強いと思いますが、それ以外のデザインも、新しいものも、すべてポジャギと呼ばれます。

ヴィンテージとして多く流通しているのは、着古した衣類などを無駄にしないよう、手仕事で端切れをつなぎ合わせて1枚の布に仕立てたもの。私も何枚か持っていますが、使い込まれた麻や絹ならではの美しい表情が魅力です。とはいえ古い布は繊細なので、なかなか気軽に「ものを包む」用途には使えません。

そこで、透け感を生かしてカーテン代わりにしたり、模様を楽しむために棚の目隠しにしたりなど、実用というよりは“見せる”使い方で楽しんできました。暮らしの中で使われてきた布特有の、小さなシミやほころびに物語を感じ、それを“景色”として愛でてきたのです。

ただ、「もっと気軽な、暮らしの道具としてのポジャギもあったらいいな」と感じていたところ、今年、縁あって理想のポジャギを作れる機会が到来しました。そこで選んだ素材は“苧麻(ちょま)”。シャリ感のある手触りながら、使い込むほどしなやかに変化します。

布は、コンパクトにものをまとめるのにとても便利。旅行のパッキングや家の細かなものの収納に、今や欠かせない存在です。新しく手に入れた気負いなく使えるポジャギにも、古いもの同様、暮らしの道具としての機能美が宿っています。

石井さん宅の食器棚の目隠しにしているヴィンテージポジャギ

2つと同じものはないのが、ヴィンテージポジャギの魅力。石井さん宅では、大きめなものを食器棚の目隠しにしている。「おおい隠すのではなく、うっすら向こうの気配を漂わせる軽やかさがいいんです」(石井佳苗さん)

石井さんがザ・コンランショップとのコラボレーションで作ったポジャギ

石井さんがザ・コンランショップとのコラボレーションで作ったポジャギ。「韓国で感動したのは、今も“包む”文化が生きていること。買い物をすると、布で美しく包んでくれるショップもあるんです」(石井佳苗さん)。ザ・コンランショップ代官山店で販売中



Item:

Bojagi

Korea

こまやかな手仕事の跡が美しい1枚。窓辺に、絵をかける感覚で

15年ほど前に手に入れた、李朝時代のポジャギ

小さな端切れをつないでいくことで、長寿を願う意味もあったとされる。素材となっているのは、使い古された麻の肌着類が多いそう。ヴィンテージの価値が高まった現在は、古く状態のよいものは韓国でも出回る量が減っているそう。「これは15年ほど前に手に入れた、李朝時代の1枚。白と生成りのバランス、規則的なようでふと自由になる縫い目の動きなど、見るたびに美しいなと感じます」(石井佳苗さん)

猫

Staff Credit

撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2024年LEE8・9月合併号(7/5発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。

石井佳苗 Kanae Ishii

インテリアスタイリスト

「カッシーナ・イクスシー」にて10年間勤務後、独立。雑誌や書籍、広告など多分野にわたる活躍で知られる。住まい作りの感覚を磨くヒントを綴った近著『Heima』(扶桑社)も好評。初心者にもわかりやすいオンラインレッスンも行っている。

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