【インタビュー】中島健人さん・キタニタツヤさん「異なるようで似ていた」 異色ユニット「GEMN」で知ったお互いの素顔とは/アニメ【推しの子】主題歌
2024.08.02
作品のみならず、その主題歌も大ヒットを記録し注目を集めたアニメ【推しの子】。先日スタートした第2期で、新たな主題歌『ファタール』を手がけ話題沸騰中なのが、中島健人さんとキタニタツヤさんからなる新生ユニット「GEMN」(ジェム)。お互いにこの組み合わせは「予想していなかった」と公言する二人の楽曲制作の裏側から、才能あふれる互いの素顔まで……たっぷり語っていただきました!
足りない、満たされない。思いを抱えたふたりが歌うアニメ【推しの子】第2期主題歌『ファタール』
ユニットを組むことが決まったときはお互いに「予測不可能な展開に驚いた」そうですが、そこからお二人はどのような時間を過ごしてきたのでしょうか。
キタニ まずは、普通にメシに行きましたよね。
中島 行ったねぇ、結構行ったねぇ(笑)。もちろん、それまでもお互いの存在については知ってはいたんですけど、やっぱり「一緒にやるからにはもっとちゃんと知りたい」と。特にキタニ君に関しては、楽曲は知っているけれど、パーソナリティが見えてこなかったから。写真やM Vを目にする限りアーティステックで「芸術家的な方なのかな」と、勝手にそう思っていたんだけど……。
キタニ 実際のキタニタツヤはどうだった(笑)?
中島 普通に同年代の男子だった(笑)。個人的にはそのギャップが面白かったよね。「え、部活やっていたの⁉︎」「しかも、体育会⁉︎」みたいな。
キタニ 小・中学校と9年間、野球部だったからね(笑)。
「天才か努力家か?」僕らはきっと完全なる後者(中島)
実際に面と向かって語りあい、それまで知らなかった一面に出会うことで、お互いの印象は変わりましたか?
キタニ そうですね、僕も“知らなかった中島健人”にたくさん出会えたので。それまではやっぱり、世間の皆さんと同じように、キラキラとした世界で輝く“天真爛漫な王子様”というイメージを持っていたんですけど。実際の彼は、負けん気が強いというか、何クソ根性的なものをエネルギーに前進しているというか。辿り着きたい場所や超えたいライバル、明確なビジョンを掲げ「その目的を達成するためにどう進むべきか」とすごく考えていて。
「どうしたら自分は勝てるのか」「もっと高みを目指せるのか」常に頭を働かせている、その戦略家であり努力家な一面はすごく意外だったし。
中島 「天才か努力家か」と聞かれたら、オレは完全に後者ですからね。
キタニ そこもまたすごく共感できる部分で。僕も“天才”を信じていないんですよ。それはきっと、僕自身が“天才”ではなく“秀才”だからなんだと思います。たまにポンッと作った曲がいきなりヒットする音楽家がいるんですけど、僕はそうではなかったというか。最初は特に誰の目にもとまらず、「自分の音楽がたくさんの人に届くにはどうしたらいいか」とにかく考えて考えて……考え続けた今だから。自分はそういう努力こそが正しいと信じているし、信じたいと思っているんですよね。だからこそ、健人さんのありようを見て、「そうだよな、間違ってないよな」と再確認できたというか。
中島 嬉しいね。最初は異なるように思えた僕たちだけど、言葉を交わすなかで「わかる」「似ている」という思いにいくつも出会ったんだよね。常に「もっと」「もっと」と渇望しているのもまたすごく似ているところだし。
キタニ 僕らはいつも足りていない「欲しがり屋さん」で。どんなに満たされる瞬間があっても、周りからは満たされているように見えていたとしても「まだこれができていない」「足りない」「あいつは持っているのに自分は持っていない」って。何かがずっと欠落しているんですよ。
中島 その足りない何かをずっと追い求め、僕らはずっと走り続けている……。今回、ふたりで作り上げた楽曲『ファタール』にはそんな僕たちの姿も投影されているんです。
明日の自分を信頼して、未来の自分に期待している。それが中島健人の素晴らしいところ(キタニ)
初対面から「シンパシーを感じあった」というおふたりですが、楽曲制作はどのように進んでいったのでしょうか。
キタニ 僕が楽曲の骨組みを作り、それをもとに二人であーだこーだと意見を出し合って、一緒にスタジオワークを重ねていった感じですね。
中島 本当に卵の状態から「どう温めようか?」と始まったので。そこから孵化するまでの共同作業はとてもワクワクしたし楽しかったよね。
楽曲制作をするなか、印象に残っているお互いの姿について教えてください。
中島 この人、発声をせずにいきなり歌い始めるんですよ。「じゃあ、やりまーす」って。自分は歌う前は必ず声出し(ウォーミングアップ)が必要なんだけど、キタニ君はそれがいらない。すぐに喉があったまるの、湯沸かし器みたいに(笑)
キタニ 健人さんはとにかく本数を録るよね(笑)。「もう一回やろう」「もう一回歌わせて」ってメチャクチャ頑張る。オレなんか、多く録っても4回くらいなのに、健人さんは超熱血。で、どんどん声がガサガサになっていって「明日に響くからもうやめなよ」って、こっちが止めるまで歌い続けるっていう。でも、それって次の自分への自分に対する信頼というか、未来への自分に期待することができているわけで、そこはマジで健人さんの素晴らしいところ。
中島 確かに、自分を信じる才能はあるのかもしれない(笑)
キタニ 今、「これぞ中島健人だな」と感じたエピソードを思い出したんだけど。二回目のスタジオワークだったかな、ふと見た指先の爪がすごく綺麗で「何かケアしているの?」って聞いたんだよね。そしたら「何もしていないんだけど、なんか綺麗になっちゃうんだよね」って言ったの(笑)。それもまた、本当か嘘かわからないような表情で。そんなふうに私生活にもミステリアスさを残したり、日常生活の一挙手一投足が自然と “中島健人”であり“アイドル”になる、そこはさすがだなって思ったよね。
子供の頃、“超普通”な自分がコンプレックスだった(キタニ)
おふたりは自分たちのことを「天才ではない」とおっしゃるのですが、自分の中にある才能を伸ばす力にはとても長けているように思います。子育て世代が多いLEE読者としてはきっと「どうしたら、その力は手に入るのか?」が気になるはず。おふたりはどのような子ども時代を過ごしてきたのでしょうか?
キタニ 僕は“超普通の男の子”でしたね。かけっこは早くも遅くもないし、勉強も得意だったけど1番になれるほどではなくて、だからこそ、そこに対するコンプレックスがすごくあった。「自分には何もないんだなぁ」「オレって普通で面白くないなぁ」って。そんな自分がいたからこそ、ロックを聴いたり、音楽に救われている部分がすごく大きくて。高校生になって自分で楽器を弾くようになるまではずっと、燻っていた気がする。
中島 自分で音楽を奏でるようになってキタニ少年は変わるの?
キタニ そうだね。本当に好きなものと向き合ったことで高い温度を手に入れたというか。それこそ、「周りの同世代の奴等よりも上手くなりたい」「舐められてたまるか」「全員蹴散らしてやる!」って思いながら楽器を弾いていたし。ライブハウスでは「こんな下手くそな奴等よりオレのほうがすごいのに」「こんなダサい音楽よりオレの曲のほうが絶対にいいのに」って思いながらステージに立っていたし。自分の曲がコンテストで入賞しなかったときは「ジジイどもにオレの音楽はわからないんだ!」って、ずっとそういうことを思っていたし、なんなら、今も思っているからね(笑)
“見返したいヤツ”の名前をノートに書いていました(中島)
中島 いいねぇ、そして、わかるわぁ。オレも悔しさをバネに進んできたタイプだから。中学校の頃は真っ黒なノートを買ってきて、そこに修正液で“いつか見返したいヤツ”の名前を書いていくっていう、『デスノート』を持っていたからね(笑)
キタニ 黒いノートを買う時点でやばいね、厨二病入っているわ(笑)
中島 アイドルのキラキラした道を順風満帆に歩いてきたように思われがちだけど、全然そんなことなくて。特に10代の頃は悔しい思いをたくさん経験した。小学生の頃は好きな子に告白もできなかったしね。思いを募らせて、募らせて、募らせまくったからこそ、アイドルになってからは「言えなかった」言葉や思いが爆発。自分の中から甘い言動が無限に出てくるようになったっていうね(笑)。
キタニ ははははは! 最高! 不毛な思いは宝だね(笑)!
大事なのは「好き」の種を見つけること。その種が見つかるように導いてあげること(中島)
ちなみに、家庭環境は子どもの才能にどんな風に影響するのでしょうか。子どものために親ができることはあると思いますか?
中島 この仕事もそうだけど、本気で「やりたい」と思ったことは反対せずにやらせてくれた。今思うと、自分が選んだ道を自由に伸び伸びと歩かせてもらった気がします。だからこそ、お子さんを持つLEE読者にアドバイスを届けるなら「自分の好きなようにやらせてあげて」。個人的にはそう思うかな。実際、自分も無理矢理にやらされたものは何も残らなくて。結果、好きなものだけ、自分で履歴書を送り、自分でオーディションに行くと決めた、この仕事だけしか残っていないから。
キタニ ただ、子どもの目がいろんなものに向くように導線をひいてあげるのも大切なことかもしれないよね。子供って視野が狭いから、導いてあげないと気づかないこともあるじゃないですか。だからこそ「こんな世界もあるよ」「あんな世界もあるよ」って興味を持つように導くというか。実際、うちの両親は音楽のスキルはないけど音楽フリークではあって。家の中では常に音楽が流れていたんですよ。そのなかにはきっと、僕に聞かせたいと思って流しているものもあったと思うし。これみよがしに音楽家にまつわる映画を見せることもあれば、音楽家がいたんだよって話をされたこともあったし。今振り返ると思うんだよね。「あのとき、種を蒔かれていたんだな」って(笑)。
中島 今思うと、オレも導かれていたのかもしれない。うちの両親が大の映画好きで、そこから自分もエンタメの世界に興味を持つようになったから。大事なのは“好き”の種を見つけること。それが見つかるようにさりげなく導いてあげることなのかもしれないね。
キタニ いろんな種を蒔いてあげれば、そのなかのなにかひとつが勝手に育っていくと思うから。あとは、トライアンドエラーを重ねがら子どもが育っていく様子を“見ているんだか見ていないんだかっていう距離感”で観察してくれたら……。
中島 それだけでじゅうぶん嬉しいと、僕たち“息子”は思っています。
【中島さん】ジャケット¥103180/HEōS(HEōS TOKYO) ベスト¥8800/THE BOOK STORE(C.E.L STORE)
【キタニさん】ジャケット¥135080 ・パンツ ¥94380/ともにHEōS (HEōS TOKYO)
Staff Credit
撮影/山崎ユミ スタイリスト/JIKI ヘア&メイク/石津千恵(中島さん) 山田千尋(キタニさん) 取材・文/石井美輪
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