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最果タヒ、大橋明子、ファビオ

【今月おすすめの本】くどうれいん『コーヒーにミルクを入れるような愛』他3編

2024.05.21

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今月の注目情報をお届け!

石井絵里さん

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石井絵里さん

ライター

アナログのオーディオ機器でクラシックのレコードが聴ける喫茶店が大当たり! 再訪を狙ってます。

『コーヒーにミルクを入れるような愛』
くどうれいん ¥1705/講談社

幸せは何気ない日々の中にある! 感性を刺激してくれるエッセイ

『コーヒーにミルクを入れるような愛』くどうれいん ¥1705/講談社

俳句、短歌、小説、絵本と多ジャンルで活躍中の作家・くどうれいんさん。1994年生まれで盛岡在住。会社勤めと執筆を両立したのち、現在は作家業に専念。最新作は、彼女自身の身のまわりの出来事について綴ったエッセイ集だ。

お話は、実家へ帰った際に、父親からの「お前の部屋の玉、どっか飛んでったぞ」という、謎めいたひと言からスタート。その“玉”の正体を確認したところでくどうさんの心の中に浮かび上がってきたのが、学生時代に親しくしていた男友達・蒲田との記憶だ。惚れっぽく、世の中を“恋か恋じゃないかでしか考えられない”タイプのくどうさんが、恋愛でも友情でもなく、いてくれるだけで大切、と思わせてくれた蒲田。お互いの関係を回想するくだりは、読んでいるこちら側も、学生時代に戻ったかのような、ピュアな気持ちにさせてくれる。

そして同棲していた恋人・ミドリくんとの入籍までを描いた「コーヒーと結婚」は、収録作の中でも最上級に胸がキュンとするエピソード。二人で一緒に早起きをし、朝のコーヒーの時間を楽しむ。さらに冗談めかして「こんな私でいいんでしょうか」と言いながら、ミドリくんと役所へ出かけていく。時間がたてば、忘れてしまいそうな小さな“瞬間”を、くどうさんは逃さず切り取り、言葉へと変えていく。こうした日常の描写に、「当たり前の毎日の中に、こんなに楽しいことがたくさんちりばめられていたなんて」と、気づかされる。 

また表現者としての彼女の内面の描き方も興味深い。10代の頃から執筆を始めたというくどうさん。書くことに関しては昔から負けず嫌いで、過去の悔しかった経験の記録も。そして承認欲求が強い側面も惜しみなくさらけ出してくれる。きれいごとだけではない、ダークな感情も受け入れたうえで、日常と表現を融合させる力強さに感動! 雑事に追われ、「何かに感動する心や、自分を見つめるパワーが低下してるな~」と感じたときは、ぜひページを開いてみて。

『無人島には水と漫画とアイスクリーム』
最果タヒ ¥1760/リトルモア

『無人島には水と漫画とアイスクリーム』最果タヒ ¥1760/リトルモア

詩人で小説家の著者による、漫画についてのエッセイ。『ゴールデンカムイ』『違国日記』など近年の人気作から、『ちびまる子ちゃん』『火の鳥』『ポーの一族』といった古典的な作品まで25の物語について考える。愛情、優しさ、正しさ、孤独について――。最果さんらしい哲学的な考察に触れていくうちに、取り上げられた漫画への興味もわいてくる一冊。



『ズボラさんの 買わない、捨てない ちょこっとガーデニング&レシピ』
大橋明子 ¥1980/集英社インターナショナル

『ズボラさんの 買わない、捨てない ちょこっとガーデニング&レシピ』大橋明子 ¥1980/集英社インターナショナル

料理中に残った野菜の切れ端や、近所で見つけられる野草を使った、簡単なガーデニングのテクニックを紹介。捨ててしまいがちなキャベツの芯やチンゲン菜の根元を水につけて、再生させるなど、普段の暮らしの中から挑戦しやすいものがたくさん。親子で一緒に育て、“自由研究”として楽しむのもおすすめ!

『至福のおうちパスタ』
ファビオ ¥1650/イースト・プレス

『至福のおうちパスタ』ファビオ ¥1650/イースト・プレス

LEEの料理特集でもフライパン一つでできるパスタの作り方を教えてくれた著者が、60種の「ワンパンパスタ」レシピを詰め込んだ書籍を発売。ペペロンチーノ、ナポリタン、カルボナーラから明太子パスタまで、大人も子どもも大好きなレシピが満載。フライパン一つあれば、ソース作りからパスタをゆでるまでを完結させられるので、忙しい日にも重宝すること間違いなし!


Staff Credit

イラストレーション/SAITOE
こちらは2024年LEE6月号(5/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。

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